「………ふぅ、こんなものか。」

剣を地面に突き刺して、芳樹は後ろを振り返った。

クエストで倒したモンスターの情報は物吉が収集していく。

「なるほど、このモンスターはアイテムを回収する特性を持っているんですね。」

「………何ていうか、すげぇ……。」
「しょ、初心者にしては戦い慣れているっていうか………。」

「いやいや、2人のアドバイスのおかげだよ。」

「そうそう。2人のアドバイスのおかげ。」

「はい、そうですね。」

「(まさか、闇呪のことを話すわけにはいかないしな………。)」
「(桜庭市にしか生息していないモンスターがいるってことは、何が何でも黙っておかなくては……。)」

「レベルもそれなりにアップしたし、ひとまずはこれで大丈夫かな?」
「あ、はい。そうですね。対戦の申し込みさえなければこれぐらいのレベルでも
大丈夫だと思います。」

「………PMWって対戦もできるの?」
「そりゃもちろん。」

「…………へぇ。」
「ちなみに対戦で勝つと賞金だけじゃなくてアイテムも貰えるの。
………レベルの高い人ほど、レアなアイテムも貰えるっていうか。」
「俺達は地道にクエストを消化していっているんだけどなー……。
対戦の方が効率良いっていう人もいるし、どっちもどっちなんだよ。」
「そうか。2人は地道にクエストを消化しているんだね?」
「そうなんです。」

「…………さて、と。いい加減、情報収集しないとな。」
「そうですね。……何から調べます?」


「まずは製作者についてだね。」

「確かラヴクラフトって苗字だったよな。外人がどうのこうのって社長が言ってた。」
「うん。」
「………ラヴクラフト?」

「………クトゥルフ神話の製作者の名前ですね。」

「………クトゥルフ神話?」
「何だそりゃ?」

「1つの世界観を複数の作家達が描いた神話群の総称だよ。
個人、またはその弟子が創作した神話だってハッキリしているしギリシャ神話とかに比べると
結構マイナーだよ。」


「………?」
「………えっと、もっとわかりやすく言うと……?」


「何だかよくわからないけど、とりあえず怖いモノ。
ジャパニーズホラーと一緒だよ。
誰かがそばにいる恐怖、後味の悪さが残る結末、身近に起こるかもしれない恐怖、
長い沈黙。」

「………な、なるほど……。真相がわからない恐怖ってところなんだな……。」

「ああ、上手いね。そういう風に納得してくれると助かるよ。」

「………でもそのラヴクラフトがどうかしたの?」

「確か行方不明になったとか言っていなかったか?」
「え?意識不明の重体になって病院に搬送されたんじゃなかったっけ?」

幸太と律はお互いの顔を見合わせて首を傾げた。



「…………行方不明か、病院に搬送されたかのどっちか……か。
まあそれについては智久が調べてくれるだろうから、
俺達はここでできることをしよう。」

「………そうですね。」


続く。