鳳凰が里の人間を次々に斬り殺しているとの報を受けた孔雀は、急いでその場へ駆け付けた。
そこは疑う様な光景が…
「止めろ鳳凰!!何をしてる!!」
孔雀は鳳凰が振り下ろそうとした刀を苦無で止めた。
「逃げろ!!」
その言葉に、まだ子供の忍は慌てて走り去って行く。
孔雀は一度、鳳凰から間合いを取った。
「あ?コイツで最後だと思ってたんだけどな、まだいやがったか。」
「鳳凰…?」
明らかに立ち振る舞いや空気が違うのに気付く。
鳳凰は刀の背で肩をトントンと叩きながらゆっくり歩み寄ってくる。
孔雀は相手が左手に持つ刀が『毒刀・鍍』である事に気付いた。
「鳳凰、何でそれを抜いたんだ?」
「コイツが抜いたんじゃねぇよ、抜けちまったんだ。右衛門左衛門と戦ってる時にな。」
鳳凰はそう言い、あと五歩という近距離まで歩むと足を止めた。
「ふーん……。記憶見てても思ったけど、お前本当女みたいな顔してるな。」
「……貴様、誰だ。」
孔雀は苦無を構え直すと鳳凰、いやさ、鳳凰の体の中にいる誰かに問い掛けた。
その何者かは小さく笑った。
「あー、そういや言ってねぇな。俺は四季崎記紀だ。」
「なっ……?!」
四季崎記紀。
『毒刀・鍍』の作製者。
しかし、今でこそ鳳凰の左手になっている川獺の左手と、最も強い毒性の刀の事を掛け合わせると、記紀が鳳凰の身体乗っ取る事は有り得ない事でも無かった。
刀の毒が回り過ぎた鳳凰の体から四季崎記紀を追い出す事は、恐らくは不可能だろう。
最早、殺すしか…ない。
「鳳凰、俺を許せ。」
孔雀は苦無を投げつける。
記紀がそれを叩き落とし孔雀の方を見ると、視界が揺らいでいた。
「なんだ、もう『幻影殺』使ったのか。こんなの、アンタが隠し持ってる香炉壊せばおしまいじゃねぇか。」
「……鳳凰の記憶は、全て貴様の記憶、か。」
孔雀は鳳凰の懐に入り込み、その腹部に拳を叩き込む。
しかし、寸での所で止められた。
「まぁ、そういう事だな。お前らが恋仲なのも、俺は勿論認識してるぜ。」
「……だから何だと言うんだ?」
「お前に俺、いや、コイツを殺せない。」
記紀は力任せに孔雀を投げ飛ばす。
空中で体を捻り、孔雀はぶつかりかけた木を足場にして一直線に突っ込んでいった。
手にはまた苦無が握り締められている。
「殺すさ。鳳凰を返してもらう。」
「健気だねぇ。」
記紀ギリギリの所で躱すと、孔雀の腹部を蹴り上げた。
孔雀はそのまま、崩れ落ちた瓦礫の山に背を打ち付けた。
「ぐっ…がはっ……」
「アンタ、記憶より弱いじゃねぇか。そっか、恋人相手じゃやりにくいのか。」
記紀は体を起こそうとした孔雀の上に跨がり座る。
孔雀はキツク記紀を睨んだ。
「そうだな、取引でもするか?」
「何…?」
「俺を楽しませたら俺が乗っ取ったこの身体、返してやっても良いぜ?」
記紀は孔雀の唇に指を這わせる。
「別に突っ込まれてんのは慣れてんだろ?コイツの下で女みたいに鳴いてさ。」
「煩いっ!!」
孔雀は苦無を振りかざす。
記紀はその手首を掴み孔雀の鳩尾に拳を入れた。
うっと小さく唸り、孔雀は気絶してしまった。
「まっ、ゆっくり考える時間位くれてやるさ。」
記紀は小さく笑っていた。
----------
まさかの鳳凰×孔雀前提
四季崎記紀×孔雀ww
十一巻読んでてふと降臨して突発的に書いちまったよ(笑)
これじゃあ三つ巴所か四つ巴www