第5部隊隊長を勤める理恵。俺にとっては本命中の本命だ。去年のバレンタイン。チョコの山を抱えて更衣室を出た俺に理恵は眉をしかめて言った。
「他の女と同列に笑太の体脂肪率を上げるなんて不本意だわ。」
その手にあった綺麗なラッピングは結局俺の手には渡されなかった。
満を持した今年。本命一本に絞るつもりがロッカーにはチョコの山。しかし俺も学習している。
一番欲しい愛情を俺によこせ
と一週間も前から理恵にメールを送り続けていた。
その成果か更衣室を出た俺を待っていた理恵の手には綺麗なラッピング。
「私の愛情を欲しがったんだから。覚悟してよ。」
「やった。理恵に貰えたら満足!これでホワイトデーの楽しみができた。」
「他の女と同列にはならないように。工夫をしたわ。」
「サンキュー!」
「じゃ、私はまだ任務があるから。」
「気を付けろよ。」
「ありがと。行ってくるわ。」
理恵を見送って取り敢えず清寿と羽沙希に自慢しながら部屋に戻った。疲れた体には甘い物。さっそく綺麗なラッピングを開くと中には可愛らしいハートのチョコが並んでいる。調理師免許を持っている理恵。膨らむ期待に胸を踊らせて左上の一粒を口の中へ。
一時舐めていると口の中に広がった濃厚な・・・
オイスターソース!?
いや。俺の味覚が可笑しいのか?
でもどう考えてもこれはオイスターソース。
取り敢えず口の中の物をどうにかしたくてデスクの上の珈琲を一気飲みする。この際熱いのなんて無視だ。
「どうしたの、笑太君?」
口の中が惨事で返事ができない。
「何か、顔色悪いよ?」
当たり前だ。たった今チョコとオイスターソースを一緒に食べたのだから。これが理恵の愛情か?俺の純情はどこへいった?
これは真意を確かめなくては。時間を見計らって理恵のところに行った。
「おい、理恵。」
5部隊の部屋で理恵はデスクワークをしている。
「何よ、笑太?」
「何よじゃないだろ。何でチョコの中からオイスターソースが出てくんだ?」
「他のも味は違うわよ。勇気があるなら召し上がれ。」
「何が入ってんだ?」
「ケチャップ。生姜。味噌。唐辛子。羊羹。マヨネーズ。」
「お前な・・・。」
「私の愛情が欲しかったんでしょ?」
全く悪怯れない理恵にこちらも反応に困る。
「他と同列なんてごめんだわ。記憶に刻み込まれれば良い。」
「頼むからまともなチョコをくれ。」
「でも一生忘れられないチョコだったでしょ?」
「あの衝撃は一生忘れない。」
忘れられるはずもない。チョコの中からオイスターソースが出てくるなんて。
「頑張って作った甲斐があったわ。」
理恵は楽しそうに笑っている。こっちはまだ口の中にオイスターソースの味が残っていると言うのに。
「俺は理恵に貰えるのを楽しみにしてたのに・・・。」
「上げたじゃない。記憶に残るチョコレート。」
確かにこれは一生忘れない。
いや忘れられないバレンタインになる。
これは理恵の思惑通りと言う事なのか?普通のチョコは貰えないのか?
「一生憶えていてね。私の愛はお安くないの。覚悟が必要よ。」
立ち上がった理恵が歩み寄ってきて胸元を引き寄せられる。
「覚悟は?」
妖艶に微笑まれて思わず頷く。そのまま可愛らしい笑顔が近付いてきて軽くキスを与えられた。
一生忘れないバレンタイン。でもできるならチョコは普通のチョコが良い。
「来年もこんな感じ?」
「まさか。もっと考えるわよ。」
チョコに甘さを求める俺が間違えているらしい。
だったら家に帰ってから忘れられない事しても良いんだよな?
「理恵にとっても忘れられなくしてやるよ。」
抱き締めながら囁くと耳が赤く染まっていた。
一生忘れないバレンタイン。ベッドに押し倒す前に全て食べさせられて意欲が半減されたのは言うまでもない。
カレーのルーにココアを塗すと言うのも考えたんですが・・・。匂いでばれそうなのでこのような形に。
楽しんで頂けましたら幸いです。
グダグダな文章ですけど。