蒼星石を目覚めさせた蒼氷は自分の頬を抓った。

「………うん、夢じゃないわね。これは現実なのね。」


「………えっと、すみません。驚かせて。」

「あ、いいのよ。いいのよ。おばあちゃんがこれだけは売るなって言っていたの、
今やっとわかったわ。
こんな喋る人形がいたら、世間は大騒ぎになるわ。
そうよね、大事にしたくなるわね。うん。」

1人納得した蒼氷はよし、と呟くとコホン、と咳払いをした。


「初めまして、蒼星石。私の名前は物吉蒼氷。こう書いて、あおひって呼ぶの。」


身近にあった紙に自分の名前を書くと、蒼氷は蒼星石に見せた。

「何だか名前も似ているし、親近感が沸くわ。
………えっと、ローゼンメイデン?の第4ドール?
シリーズものなの?」

「え?あ、はい。お父様は僕を含めた7体のドールズを作りました。
でもどこに行ったのかわからなくて………。」


「………そう。父親を探しているのね。」
「お父様はアリスにしか興味がないから……。」
「………アリス?」


「互いの魂ともいえるローザミスティカをかけて、戦うアリスゲームです。
ゲームを制したドールズはお父様に逢うことができる。ただそれだけのために
長い戦いをしてきました。」

「………そう。7体作っておいて、会えるのはたった1体だけだなんて
過酷だけど娘思いって言えばいいのやら。
私とは偉い違いね。」

「………そうなの?」

「私、両親に捨てられたから。
でも、おばあちゃんが引き取ってくれたから、
こうして色々と引き継いだし。
蒼星石に会うこともできた。
まあ、それはおいおい話しておくことにしましょうか。
1度にたくさんのことを話したら、疲れるもの。
………で、私には契約者になってほしいの?」

「そうです。僕の指輪に誓いのキスを。」

「はいはい。」

蒼氷は蒼星石の指につけられている指輪に軽くキスを落とした。
すると指に痛みが走ったので、手を見ると薔薇をあしらった指輪がはめられていた。

「………これでいいの?」
「はい。これで契約完了です。よろしくお願いします、マスター。」

「…………ええ、こちらこそ。退屈しないで済みそう。」

続く。