「………ふぅ、これで片付いた………。」

物吉蒼氷は先日亡くなった祖母の遺品整理をしていた。

物心ついた頃に両親や双子の兄と生き別れた蒼氷は祖母に引き取られ、
以降は2人でずっと暮らしていた。

死因は老衰。
病気や事故に遭うこともなく、蒼氷の祖母はその人生を全うした。

「…………大体は遺言書の通りにしたけど……。
後はこれだけなのよね………。」

アンティーク調の鞄を前にして蒼氷はため息をついた。
西洋人形を主に収集していた祖母が生前大事にしていたもので
これだけは何があっても売り払うな、手元に遺せと遺言していたのだ。
「…………まあ、それだけ大事にしていたってことよね。」
そういうと蒼氷は鞄の蓋を開けた。
「………よいしょ………と。………人形?」
服装もシルクハットに袖口の長い白いブラウス、
青いケープとニッカーボッカー風の半ズボンを着用した人形が大事に保管されていた。
髪は赤毛に近い焦げ茶色で、前下がりのボブをベースにしたショートカットで、
蒼氷は王子様系だな、と思った。

「………よくできている人形ね。まるで生きているみたい。………と、螺子?」
鞄の中には人形の他に螺子が入っていた。
「………もしかしてこれ、差すの?」
人形を大事に取り出すと、蒼氷は差込口に螺子を入れた。

「………どういうからくりなのかしら………。螺子を回したら動く人形なんて聞いたことがないわ。」

そう言いつつも、蒼氷は螺子を回した。

「う………う……ん………。」


「…………え?」

人形の口が開き、蒼氷は思わずそれを落としそうになった。

パチリと目が開き、人形はカタカタと動き出した。

「………おはようございます。」
「お、おはよう………?正確には午前11時半だけど……まあ、おはよう………なのよね……。」

「僕はローゼンメイデン第4ドール、蒼星石。貴女が僕のマスターですか?」



続く。