スイミングスクールで練習をするリオンを見ていた生徒達はヒソヒソと話をした。
「………ホントに回復するなんて信じられない………。」
「………何ていうか、ホント化け物って感じよね…………。」
「こらそこ、何ヒソヒソと話をしているんだ!?」
翠山拓哉に叱責され、生徒達はプールに飛び込んでいった。
「まったく、バケモンだとか言いやがって………奇跡と言えば良いのに。」
「まぁ、自分にはない才能を持っていると、ああも言いたくなるんでしょうな。」
オーナーの言葉に、拓哉はそうですな、と言った。
「しかしだからと言って努力を怠るのはよろしくない。
先日のジュニア水泳大会だって優勝できたのは努力の賜物だと思っています。」
「櫻井さんは水泳しか能がないと言っていましたからなぁ………。」
「………ええ、本当に。」
すっかり日が暮れ、スイミングスクールを後にしたリオンは帰り道を歩いていた。
「はぁ…………父さんも母さんも死んで、私だけが生き残って。
……………何ていうか、まだ実感が沸かないなぁ…………。」
悪質なドライバーが引き起こした交通事故で両親は他界し、自分だけが生き残った現実。
自分にできることと言えば、水泳大会に出場して記録を残すことぐらい。
「…………でも事故が起きた後に発生した光………何だったんだろう。」
黒煙と炎が入り混じる狭い空間の中でリオンは信じられないものを見た。
海に生息しているはずの生物……シャチが自分の中に入ってくるという光景。
「…………でも、あの光景もあったせいで私は回復することができた。
………何だったんだろう?」
素朴な疑問を考えながら、リオンは帰路に着こうとしたその時。
きゃああという悲鳴が聞こえた。
「!?」
路地裏から聞こえたらしく、リオンはそこに向かった。
続く。