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ACT-1(2)



ーーーー私立聖ミカエル女学院。
明治初期に設立されたミッションスクールで、幼稚園から大学まである
エスカレーター式の一貫教育校だ。
7割が繰り越しで残りの3割は外部からの入学となっている。
「ねぇねぇ、クラスの発表見た?」
「見た見た。姫宮さんの名前、あったよね!」
「A組の人達が羨ましい!」
「あの姫宮さんと一緒のクラスだなんて良いなぁ……。」
外部入学組の歓声に繰り越し組は何事かと様子を見る。
しかし彼女達が騒ぐのも無理はなかった。
姫宮萬月という人間は音楽作家兼デザイナーとして活躍している女優だ。
美しい紅い髪に浅葱色の瞳。色白の肌。
160cmの小柄な体からは想像がつかないほど透き通るアルトの声が出る。
見目麗しい容姿を持つ彼女はその類まれな才能でブランドを立ち上げただけでなく、
女優としてもデビューした。
そのため、私立聖ミカエル女学院でその名を知らぬ者はいない。
……なので。外部入学組は和気藹々と浮かれているのだ。
「……賑やかだなぁ……。」
「お嬢様、有名人ですからね。」
「女子校となると、どうしても刺激になるからね。
……じゃあ、俺は保護者受付に行ってくるから。」
「はい、芳樹さん。」
芳樹は満月よりも12歳離れた幼馴染で婚約者でもある。
曾祖母の代から付き合いがあり、彼もまた俳優兼モデルとして活躍している。
黒髪に藍色の瞳、小麦色の肌。引き締まった筋肉質の体。
そんな彼の実家は世界有数の巨大複合企業グループだ。
日本有数の大企業グループでもある姫宮家にとって芳樹は、
優良物件以外の何物でもなかった。満月は生まれる前から男性の贈呈用として決まっていた。
だが、2人は周囲の意図に関係なくお互い愛し合っていた。
芳樹と別れた満月と物吉はA組に向かった。すると黄色い歓声があがる。
「本物の姫宮さんだ!」
「可愛い!」
「去年のミュージカル刀剣乱舞、トライアル公演観に行ったよ!」
「あ、私も!」
A組の教室に入るなり、満月は手厚い歓迎を受けた。
「皆さん、お嬢様が困っています。
はしゃぐ気持ちはわかりますが、落ち着いてください。」
「あ、ごめんなさい……。」
「ありがとう、物吉。助かったよ。」
「これぐらいお安い御用です。」
満月がお礼を言うと物吉はニコリ、と笑った。
そこへシスターがやってきて一通りの説明をした後、
満月達は体育館に向かった。


式は滞りなく行われ、無事に終わった。
「終わったぁ…。」
「終わりましたねぇ……。」
式が終わった後、満月達は翌日の流れについての説明を受け
終礼した。

「物吉、芳樹さんから入学祝と誕生日祝いを貰った後の予定は?」
「旦那様達と食事会です。」
「お父様とお母様も奮発するんだろうな…。」
「そうでしょうね。お兄様方達も豪華なものを出すと思いますよ?」
「お兄様達、極度のシスコンだからなぁ……。」
「たった1人の妹ですからね。」
そんな会話をしながら、満月と物吉は廊下を歩き芳樹と合流した。


続く。

ACT-1(1)


ピピピピ、と目覚まし時計のアラームが部屋に鳴り響く。
綿貫芳樹は目を覚ますとアラームをOFFにし、ベッドから起き上がった。
着替えを済ませ、部屋を出ると廊下にはメイドが立っていた。
「おはようございます、若旦那様。」
「うん、おはよう。ー――満月ちゃんは?」
「お嬢様なら、物吉様が起こしに行っております。」
「そうか。……なら、俺が起こしに行く必要はないね。」
そういうと芳樹は長い廊下を歩いて食堂に向かった。

ーーーー同時刻。
「……ん……もう、朝……?」
ピンクを基調とした部屋で、姫宮満月はベッドの中でもぞもぞと動いていた。
「まだ寝ていたい……。」
アラームをOFFにし、満月は再び夢の世界に旅立とうとする。
その時、コンコンというノック音がした。
「お嬢様、おはようございます!朝ですよ!!」
ガチャリ、という音がして部屋に守り刀である物吉貞宗が入ってきた。
「ほら、お嬢様。今日は良い天気ですよ。」
物吉がカーテンを開けると太陽の光が部屋に差し込む。
「ま、眩しい……。」
「はい、起きましょうね。」
そういうと物吉は布団をめくって、満月をベッドから降ろした。
結局、満月は物吉の手を借りて寝間着から学校の制服に着替えた。

「……朝がしんどい……。」
「お嬢様、朝に弱いですからね。」
「毎朝早く起きてしんどくない?」
「いいえ、1度もしんどいと思ったことはないですよ!」
「……あ、そう……。」
長い廊下を歩き、食堂につくと香ばしい匂いが漂ってきた。
「おはよう、満月ちゃん。」
「芳樹さん、おはようございます。」
芳樹に促され、満月は席に座った。
ほどなくして2人分の朝食が運ばれてきた。
いただきます、と一礼して2人は食事を摂り始めた。
「満月ちゃん、今日は入学式だけだったよね?」
「はい、半日で終わりますが。」
「式が終わったら、街へ買い物に行こう。
入学祝いと誕生日祝いを兼ねて。」
「そんな……お祝いだなんて……。」
「祝いさせてくれよ、
満月ちゃんも今年から高校生になったんだし。」
「……ありがとうございます、芳樹さん。」
1時間ほどかけて食事を済ませると、満月と同じ制服を着た物吉が待っていた。
「物吉、似合っているじゃないか。」
「ありがとうございます、若旦那様。」
「俺は満月ちゃんと一緒に学校へ通えないからね。
満月ちゃんのこと、しっかり守ってね。」
「はい、それが守り刀の役割ですから。」

守り刀は綿貫家と姫宮家に仕える者達の総称である。
刀の名を襲名しているので本名は別にある。
「じゃあ、行こうか。満月ちゃん。」
「はい、芳樹さん!!」
続く。

プロローグ


日本、桜庭市。
四方を桜の木に囲まれている様子がまるで、
庭のようだと評されたことからその名がつけられた経歴を持つ都市である。
風水的には四神相応の地だともされているとも言われているが、
正直言って今の時代―――それを気にしている人などあまりいない。

――ただ1つ、この都市には変わっていることがあった。
それは「闇呪」と呼ばれる異形のものが存在していて、
その異形のものは桜庭市の平和を日夜脅かしているとのことだった。

それが何なのかはいまだにわかっていない。
ただ、わかっているのは相互理解が不可能であることと、
視界に自分達以外の種族の生物が入るとひたすら襲いかかるということだけ。

そして、それに対抗する手段なのか、
闇呪を倒すことのできる力を発現させた者達が出現するようになった。
ただ、その特異性から彼らは周囲からこう呼ばれている。――庭師、と。

姫宮満月



2000年4月12日生まれ
牡羊座のAB型

日本有数の大企業グループの令嬢。
音楽作家兼デザイナー。

名門私立聖ミカエル女学院高等部に通う女子高生。
自身が立ち上げたブランドを持っている。

綿貫芳樹とは幼馴染兼婚約者。
音楽作家兼デザイナーとして彼をサポートしている。

綿貫芳樹



1988年12月4日生まれ
射手座のAB型

世界有数の巨大複合企業グループの御曹司。
俳優兼モデル。

舞台やミュージカルを中心に活躍しており
近年はテレビドラマや映画などにも活躍の幅を広げている。

姫宮満月とは幼馴染兼婚約者。
彼女を過保護かつ溺愛しており、他の異性には興味がない。
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