ピピピピ、と目覚まし時計のアラームが部屋に鳴り響く。
綿貫芳樹は目を覚ますとアラームをOFFにし、ベッドから起き上がった。
着替えを済ませ、部屋を出ると廊下にはメイドが立っていた。
「おはようございます、若旦那様。」
「うん、おはよう。ー――満月ちゃんは?」
「お嬢様なら、物吉様が起こしに行っております。」
「そうか。……なら、俺が起こしに行く必要はないね。」
そういうと芳樹は長い廊下を歩いて食堂に向かった。

ーーーー同時刻。
「……ん……もう、朝……?」
ピンクを基調とした部屋で、姫宮満月はベッドの中でもぞもぞと動いていた。
「まだ寝ていたい……。」
アラームをOFFにし、満月は再び夢の世界に旅立とうとする。
その時、コンコンというノック音がした。
「お嬢様、おはようございます!朝ですよ!!」
ガチャリ、という音がして部屋に守り刀である物吉貞宗が入ってきた。
「ほら、お嬢様。今日は良い天気ですよ。」
物吉がカーテンを開けると太陽の光が部屋に差し込む。
「ま、眩しい……。」
「はい、起きましょうね。」
そういうと物吉は布団をめくって、満月をベッドから降ろした。
結局、満月は物吉の手を借りて寝間着から学校の制服に着替えた。

「……朝がしんどい……。」
「お嬢様、朝に弱いですからね。」
「毎朝早く起きてしんどくない?」
「いいえ、1度もしんどいと思ったことはないですよ!」
「……あ、そう……。」
長い廊下を歩き、食堂につくと香ばしい匂いが漂ってきた。
「おはよう、満月ちゃん。」
「芳樹さん、おはようございます。」
芳樹に促され、満月は席に座った。
ほどなくして2人分の朝食が運ばれてきた。
いただきます、と一礼して2人は食事を摂り始めた。
「満月ちゃん、今日は入学式だけだったよね?」
「はい、半日で終わりますが。」
「式が終わったら、街へ買い物に行こう。
入学祝いと誕生日祝いを兼ねて。」
「そんな……お祝いだなんて……。」
「祝いさせてくれよ、
満月ちゃんも今年から高校生になったんだし。」
「……ありがとうございます、芳樹さん。」
1時間ほどかけて食事を済ませると、満月と同じ制服を着た物吉が待っていた。
「物吉、似合っているじゃないか。」
「ありがとうございます、若旦那様。」
「俺は満月ちゃんと一緒に学校へ通えないからね。
満月ちゃんのこと、しっかり守ってね。」
「はい、それが守り刀の役割ですから。」

守り刀は綿貫家と姫宮家に仕える者達の総称である。
刀の名を襲名しているので本名は別にある。
「じゃあ、行こうか。満月ちゃん。」
「はい、芳樹さん!!」
続く。