「そっか……早速注目の的になったかぁ……。」
「そうなんですよ、芳樹さん。
去年の刀ミュを観に行ったって何人か言っていましたし……。」
「満月ちゃんの清光、似合っているしね。」
「芳樹さんこそ、三日月似合っていますよ。」
去年から計画が始まったミュージカル刀剣乱舞。
芳樹と満月はそのキャストとして出演した。
「音楽作家兼デザイナーとして裏方に徹したいのに……。」
正直な話をすると満月はこう話す。
元々、芳樹をサポートするはずが演出家に気に入られてしまい、
女優デビューしてしまったのだ。
「でも仕事の7〜8割は本業ができているから、
それで良いんじゃないかな?」
「100%、裏方に徹したいんです。」
「満月ちゃんは真面目だなぁ……。」
「若旦那様のようにとはいきませんが、もう少し肩の力を抜いた方が良いかと。」
「そうそう、真面目過ぎだから。」
「………はい。」
そんな会話をしているうちに芳樹の車は桜庭市の中心部に到着した。

満月達がやってきたのは桜庭市中心部にある街だった。
幼少期から何度も足を運んでいるが、昔も今も人が多い。

「……ねぇ、あれって綿貫芳樹さんと姫宮満月ちゃんじゃない?」
「……え、嘘、本物?」
「テレビ撮影かな?」
歩道を歩いていると通行人に何度も振り返られた。
「想像以上に人が多いね。はぐれないように手を繋ごうか。」
「は、はい!」
芳樹と満月ははぐれないように手を繋いだ。
「………あ。」
ふいに満月が、そう漏らした。
「ん?どうかしたの?」
満月の視線の先に芳樹が目をやると、桜の形をした髪飾りが
ショーウィンドウに飾られていた。
「………中、入ろうか。」
「は、はい!」


「いらっしゃいませ。」
「ショーウィンドウの髪飾りを見せて欲しいんだけど。」
「かしこまりました。」
ショーケースの上に置かれた髪飾りを手に取ると、
芳樹は満月の髪にあてた。
「うん、とても似合っているよ。」
「ホントですか?」
「あ、これ買うから。」
「……へ?いいんですか?」
「うん、良いよ。入学祝いだし。
お会計、済ませてくるから待ってて。」
レジに向かう芳樹を見送った物吉は満月に視線を向ける。
「どうですか、今の心境は?」
「芳樹さん、かっこいい……。」
「そうですか。それは良かったですねぇ。」
胸を抑える満月に物吉はにこにこと笑った。


続く。