「新年あけましておめでとうございます、芳樹さん。」
「うん、あけましておめでとう。満月ちゃん。」
「あけましておめでとうございます。若旦那様、お嬢様。」


新年を迎えた綿貫家の別邸で、満月は物吉と共に芳樹へ新年の挨拶をした。

「満月ちゃん、その振袖似合うね。」
「ありがとうございます!渾身の作品が1つです!」


「お嬢様、去年の秋頃から温めていたんですよね。」
「そうなの〜。芳樹さんに褒められて良かった。」

「さて。祐一のいる神社に行って、お参りをしてこようか。」

本邸へ挨拶をする前に3人は
姫宮家の遠縁にあたる親戚が運営している初瀬神社に行くことにした。



「………うわぁ………混んでいるなぁ………。」
「さすがに元旦ほどじゃないけど、これは油断しているとはぐれてしまいそうだ。」
「そうですねぇ………。」

初瀬神社に向かった3人は想像以上の混雑さに絶句していた。


「満月ちゃん、手を繋ごうか。」
「はい、芳樹さん。」


「………ねぇ、あれって綿貫芳樹さんと姫宮満月ちゃんじゃない?」
「え、嘘、本物!?」

賑わう参拝客をよそに3人は、御神籤を引いた。

「………あ、やった!大吉だ!」
「俺も大吉だ。………物吉は?」
「僕も大吉です。」

「3人して大吉って新年早々、縁起がいいねぇ。」
「はい。ついてましたね。」
「じゃあ、参拝しようか。」
「はい。」

本殿に向かった3人は賽銭に小銭を入れると、二礼二拍手一礼をした。

「やあ、芳樹に満月ちゃん。それに物吉も。」

「あ、祐一さん!」
「祐一。あけおめだ。」
「あけましておめでとうございます、祐一様。」
「あけましておめでとう、3人共。新年早々参拝ありがとう。」

初瀬祐一は姫宮の遠縁にあたる人物で、満月達とは小さい頃からの付き合いだ。
満月の長兄である綾人同様、既婚者でもある。

「石切丸様とにっかり様はお元気ですか?」
「千春と千秋がインフルエンザにかかってしまってね。
私の代わりに付きっ切りで看病しているんだ。」
「新年早々、疫病とはついていないな。」
「まあ、こればかりは仕方がないさ。
私にうつらないように、と気配りされて大変申し訳ない。」

「そういえば綾人もインフルエンザにかかったから、新年の挨拶は延期にしてくれと
言っていたな。」
「そうですね………。」

「おや、そうなのかい。じゃあ、後で疫病退散の加持祈祷をしないとね。」


「お願いします。」
「そういえば、3人共参拝は済ませたんだろう?」
「はい。」

「夕方の祭囃子まで時間はあるし、うちでゆっくりしていかないかい?」
「そういうと思って、お料理をお持ちしてきました!」

風呂敷に包んだお重を見て祐一はにっこりと笑った。

「ありがとう、助かるよ。」


こうして3人は祐一と共に新年をまったりと過ごしたのであった。

終わり。