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ACT1-(3)


「実はここのMAHO堂を開店することにしていたのですが、
ここのオーナーを任された魔女が老衰で亡くなったのです。」

「………それはご愁傷様です………。ちなみに何のお店を開店しようと?」

「花屋です。」
「………ああ、なるほど。美月町、花屋さんの数が少ないですからね。」

女王様から話を聞いたあさぎは、あ、と呟いた。

「あの、女王様。もしよければ、私がここを引き継いでもいいですか?
ちょうど、店を持ちたいと思っていたところなんです。」

「店を持ちたい、と?」

「はい。おばあちゃんから薬剤関係の魔法を教わったんですけど、
なかなか使う機会がなくて困っていたんですよ。
花屋兼薬局として、開店できたら素敵だと思いません?
ただ、薬剤師の資格がないんで、薬局として開店できるのはもっとずっと先のことに
なると思うんで、当面は花屋だけになっちゃうんですけど。」

「それは素晴らしいアイデアですね。
では、ここのオーナーは貴女に任せても良いですか?」

「………はい!ありがとうございます!」

あさぎはそういうとトートバッグから、水晶玉の入った袋を取り出した。


「あ、それでしたら女王様。この水晶玉はどうしましょうか?
死んだおばあちゃんの持っていたものなんですけど。」


「では、それを貸していただけますか?」

「はい。」


あさぎから水晶玉を受け取った女王様はそれを宙に掲げた。


「MAHO堂よ、代われ!」

水晶玉から優しい光が溢れ、何もなかったMAHO堂には植物が溢れた。

「おぉ………凄い……。」


「近いうちに貴女をサポートする魔女をここに派遣します。
貴女に会えて、本当に良かった。」


「…………私もです、女王様。」




続く。

ACT1-(2)

トートバッグを片手に持ち、あさぎは家を出た。
先日最終回を迎えたドラマの主題歌を鼻歌で歌っていると、
あさぎはある建物に気づいた。
「………MAHO堂?」
看板にはでかでかとMAHO堂という文字が書かれていた。
「MAHO………魔法堂?」
つい、口から魔法という言葉が出た。
「……………のぞいてみようかな。」
魔女の血が流れているせいか、あさぎは好奇心が抑えきれなくなり、
MAHO堂に入ることにした。
扉を押すとチリリン、というベルが鳴った。
………だが、店内は薄暗く、不気味さが漂っている。
「すみませーん、誰かいませんかー?」
声を出してみるが、何の反応もない。
「……………うーん、弱ったなぁ………開店休業状態?」
今のあさぎにできることと言えば、薬関係の魔法しか使うことができない。
相手を攻撃したり、することは教わっていない。
その必要がないから、と祖母に言われたからだ。
平和な時代に、攻撃的な魔法を使えばそれこそ第二次世界大戦よりも悲惨なことになる、と祖母が
言っていたのを覚えている。
「………すみませーん、誰かいますかー?」
もう1度、声をかけてみる。すると、シャランシャラン、と何かが降りてくる音が聞こえた。
「…………え?」
建物の奥には中庭に通じる通路があった。
音はそこから聞こえてくる。
見つかったら素直に謝ろうと思い、あさぎは店内を進んだ。
中庭に入ると、馬車があった。
そしてそこには、ベールを被ったドレス姿の女性がいた。



「………こんにちは。」
「こんにちは。今日は良い天気ですね。」
「はい。…………あの、ひょっとして魔女界の女王様ですか?」

あさぎの問いに女性………魔女界の女王様はええ、と頷いた。

「あ、すみません。私のおばあちゃん、魔女界出身なもので。
次期女王でもないのに強い魔力を持っていたから、追放されたって言っていたけど
幸せな人生を送ることができたって言っていましたから。」

「………まあ、貴女のおばあ様も魔女だったのですか?」
「ええ、去年老衰で亡くなりましたけど。
マジョリリィ、という名前でした。」
「マジョリリィ………確かそういう名前の魔女がいたことは聞いています。
ええ、そういえば私が女王になる前、強すぎる魔力のために魔女界を追放されたそうですが、
そうでしたか。」

「………はい。」

「貴女にはすべてを打ち明けていたのですね。」
「ええ、小さい頃はおばあちゃんに育てられましたから。
その関係で色々と。
…………それで、女王様はどうしてこのようなところに?
私は散歩をしていたら、ここの看板が目に入ったので、中に入りましたけど。」


続く。

ACT1-(1)


美空市美空町………の隣にある市、美月市美月町。


「………えぇっと、そしたらこれで全部ですかね?」
「はい。ありがとうございます。お疲れ様でした。」

鹿目あさぎは宅配業者から荷物を受け取ると、ふぅとため息をついた。

「…………お、今年は豊作かな。」

米10sを軽々と担ぎ、あさぎは台所に持って行った。

高校進学をするにつれて、両親にわがままを言って1人暮らしをすることになったあさぎは、
冷蔵庫に貼ってある写真を見た。

「…………魔女かぁ。おばあちゃん、最期まで女王様に会えなかったことを悔やんでいたからねぇ。」

幼少期から多忙だった両親に代わり、自分の面倒を見てくれていた祖母が死んだのは中学卒業の頃。
自分が魔女だと言っていた祖母は、いつか魔女界に行って女王様に謝りたいといつも言っていた。
両親の前では魔法を使わなかったため、2人とも信じてはいなかったが
あさぎだけは祖母が嘘を言っているとは思えなかった。
魔法を使わない理由は、「1人になってしまうことが怖いから」とのことで、
寂しい思いをしていたあさぎの前でだけ、祖母は魔法を使っていた。

祖母は薬剤師の資格を持ち、魔法を使って薬を生成していた。

あさぎも将来は医学関係の仕事に就きたいと思っていたため、祖母から漢方を始めとする薬学について
教わった。

米櫃に米を入れた後、あさぎは身支度を済ませると玄関の扉を開けた。

「さーて、今日はどのあたりを散歩しようかな。」
続く。

プロローグ

「………おばあちゃんはねぇ、昔魔女だったんだよ。」

「………魔女?どうしたの、急に?」


「おばあちゃんは魔女をやめたからねえ………。
それにもう、魔女界に行くこともできない。
魔女界から追放されたから。」

「………魔女界?」

「次期女王でもないのに、強い魔力を持って生まれたからねえ………。
あさぎ、もしも魔女界に行くことがあったら女王様にこう伝えておくれ。
………私は幸せな人生を送ることができた、って。」

「………うん、わかった。」

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