日本を発ち、7時間ほどのフライトをして、
ギリシャの空港に到着した双葉はくたぁと体を伸ばした。
「はぁ………ホントに久しぶりだなぁ、ギリシャに来るのは。」
ロビーで入国手続きを済ませると、背中に箱を背負った男が待ち構えていた。
「……いよぅ。」
「…………………お前、蟹座の黄金聖闘士か。」
「初対面の人間に向かって、そう威圧すんなって。俺達ゃ、仲間なんだからよ。
俺は蟹座のダニエルだ。…………ホントに先代の魚座の生まれ変わりなのかい。」
「………ああ。私は蒼乃双葉。前世名はアルバフィカだ。
ただ、混同するなよ。
前世と私は全くの別人だ。アルバフィカ本人が生き返ったわけじゃない。」
「それはそうだろうな。
ま、長い時を超えりゃ世界の何処かに転生していてもおかしくはないさ。
………にしても、いいケツしてんな。スリーサイズ幾つだ?」
「………誰が言うか!」
ダニエルの言葉に双葉は眉間にしわを寄せた。
「ま、何はともあれ、聖域に案内するぜ。ついてきな。」
ダニエルの案内で双葉は聖域に向かった。
古き良き時代のコロッセオに到着すると双葉は懐かしさのあまり、涙を流しそうになった。
生まれてきてからずっと、帰りたがっていた聖域にやっと到着したのだ。
「………前世の記憶を持っているんだったら、勝手はわかるな?」
「ああ。………大がかりな改装とかしていないのならな。
243年前と全く変わっていない。」
「…………お、ダニエル!帰ってきたんだな、単独任務お疲れ様!」
コロッセオを通り、聖域に到着すると白羊宮から1人の少年が飛び出してきた。
「………ダニエル、彼女でもできたのか?」
「違わい。ほれ、教皇が言っていただろう。先代魚座の生まれ変わりだ。」
「へぇ、アンタが!?」
少年は純粋な眼で双葉をじろじろと見た。
「俺、獅子座のシャルルって言うんだ。よろしくな。……なぁなぁ、あんた何歳?」
「今月で18歳を迎えたばかりだ。……そういうお前は私よりも年下か?」
「うん、なるほど!じゃあ、俺の方が年下だな!俺、15歳だもん!」
にこにこと笑うシャルルに双葉はため息をついた。
「………さて、と。お前、前聖戦のどのタイミングで死んだ?」
「………聖戦が終結したのは知らない。多分、最初の方だと思う。」
「なるほどな……じゃあ、牡羊座と天秤座が生き残ったのは知らないか。」
「…………シオンと童虎が生き残ったのか!?」
「ああ、そうだ。童虎さんに関しては今、中国の五老峰にいるぜ。」
「……それで、シオンは………?」
「ああ、黄金聖闘士から教皇に大出世したぜ。
ったく、女神の加護だか何だか知らねぇが、無駄に長生きしているんだ。」
「………そうか、シオンと童虎が生き残ったのか………。」
懐かしい名前を聞いて双葉は目頭が熱くなったのを感じた。
続く。