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ACT17-(5)

人間大のサイズになった闇呪は芳樹に襲い掛かる。
芳樹は庭師の鋏を駆使し、闇呪の腕を斬り裂いた。

「み、満月お姉ちゃん……あれっていったい何なの?」
「理解したらダメ。私達とは相互理解できない生き物なの。
よくわからないけど、とりあえず怖いものなのよ。」
「…………え?どういうこと?」

「クトゥルフ神話って知っている?数ある神話の中で、作者が判明している神話なの。
あれもまた良くわからないけどとりあえず怖いモノが出てくる話が多くて。
とりあえず理解したらダメなのよ。」
「理解しちゃったらどうなるの?」
「精神がおかしくなっちゃうわ。だから、理解したらダメなの。」

満月はそういうと魔法陣を展開させた。
植物が生み出され、闇呪を拘束する。

「満月ちゃん、ナイス!」

そういうと芳樹は地面を勢いよく蹴って闇呪を一撃で斬り捨てた。

「ぎゃぁぁぁああああああああああああああああああ!!」

断末魔を叫びながら、闇呪は塵のように消え去っていく。

「さて、これでもう大丈夫だろう。」
「そうですね。…………お爺様もこれで成仏するといいんですけど。」

「おじいちゃん…………。」

「ばあさんのこと、頼んだぞ。」
「……………うん。」


「体に気を付けてな。お前はよくなるから。ばあさんに会ってこい。」

「…………うん!」

そういうと綾音の祖父は光に包まれ、消えて行った。
「じゃあ、俺達もお暇するね。」
「ごめんね、急に夢の世界にやってきて。」
「………お姉ちゃん達、いったい何者なの?」
「うふふ、それは内緒。じゃあ、また朝になったら話をしましょ。」
「そうだね。」

そういうと芳樹と満月は綾音の夢の世界を後にした。



続く。

ACT17-(4)

「…………闇呪に蝕まれているのか。」
「みたいですね。」
綾音の話を聞いた芳樹と満月の2人は病室に戻ると、ため息をついた。
「夢の世界に入って、現物を見てみないと何とも言えないけどね。」
「そうですねぇ。」
「とにかく、早いうちに手を打った方がいいな。
どうせ、2週間やることもないんだし。」
「はい。」
「満月ちゃん、準備はいいかな?」
「もちろんです、芳樹さん。」


夜になり、消灯時間となった病院で満月は魔法陣を展開した。

「………………さて、それじゃあ出発するとしますか。」
「ボランティア活動はあまり好きじゃないんだけどなぁ、そうも言ってられないね。」
「芳樹さん。奉仕活動はちゃんと参加しないとダメですよ。」
「満月ちゃんがやるなら、俺もやるんだけどねぇ。」

そう言って、2人は綾音の夢の世界へ向かった。


「……………おじいちゃん、大丈夫?」
夢の中で綾音は闇呪に侵食されている祖父を心配していた。

「………ばあさんは息災か?無事にやっていけれているか?」

「それ、この間も聞いたよ。でも私、退院できないからおばあちゃんの様子見に行けないって!」

綾音はそういうが、祖父の体を蝕む闇呪はさらに食い込んでいく。

「…………おじいちゃん!」

「綾音ちゃん、待って!それに触っちゃ駄目!」

苦しそうにうめく祖父に近づこうとした時、綾音を制止する声が聞こえた。


「………満月お姉ちゃん!?それに芳樹お兄ちゃんも!」

芳樹は綾音の祖父に近づくと、庭師の鋏を召喚した。
そして、祖父から闇呪を斬り離した。

「もう大丈夫よ、綾音ちゃん。これでお爺様はもう苦しまないわ。」
「…………どういうこと?」

綾音の祖父から切り離された闇呪は、人間大のサイズに変化した。

「…………さて、ここからが勝負だ。大人しく斬られると良い。」




続く。

ACT17-(3)

「…………綾音ちゃんは先天性心疾患を持っているんです。
治療をすれば治るんですけど、なかなか思うように効果が出なくて。
それで、家に帰りたいと駄々をこねて。」

「そうだったんですか。」

「でも新しい薬とかも出ているんでしょう?」
「ええ。手術も検討しているんですけど、何分まだ幼いですから……………。」

「怖いって言う気持ちが出ているんですね。」

「…………別に余命を告知されているわけではないので、根気よく治療して欲しいんですけど…………。」

芳樹と看護師が話をしているのをよそに満月は綾音と話をしていた。


「そっか。綾音ちゃんにはお兄さんがいるのね。」
「うん。私の病気を治すために医者になるんだって言っているんだよ。」

「いいお兄さんじゃない。…………シスコンなんだね。」
「シスコン?確かに言われてみればそうかも。
でもそれじゃあ私だってブラコンになっちゃうよ。」
「あ、それもそうかもね。
私も5人のお兄様がいるから。」
「満月お姉ちゃん、お兄ちゃんが5人もいるの?」

「そうだよ。1番上が12歳も離れているから。」


「凄いなぁー………………でも芳樹お兄ちゃんと結婚するんでしょ?
芳樹お兄ちゃんのこと、ロリコンだとか言われない?」

「あはは、小さい頃はしょっちゅう言われていたよ。
歳に似合う女性を見つけろだの、何だの言われてね。
でも、お兄様達も芳樹さんも私のこと心配してくれているからね。」

「そうなの?」

「うん。私、虚弱体質だから。小さい頃は入退院とか繰り返していたんだよ。
今はめっきり減ったけど、季節の変わり目でも風邪を引いちゃったりとかして。」

「……………そうなんだ。病弱だったんだね、満月お姉ちゃん。」
「うん。……………ね、綾音ちゃんはどうして家に帰りたいの?」

「…………もうすぐおばあちゃんの誕生日なの。
でも私、ずっと入院しているからなかなか退院許可がおりなくて……………。」

「…………おばあ様、余命僅かだとか言われているの?」
「全然、そんなことないよ!大きな病気もしたことないし!」

「じゃあ、何でそんなに焦っているの?私から見たら焦っているようにしか見えないんだけど。」


「それは…………………。」

「何か言えないことでもあるのかな?」

満月の言葉に綾音はため息をついた。


「…………こんなこと、言っても信じられないかもしれないけれど。
おじいちゃんがね、夢の中に出てくるんだ。」


「…………おじい様が?」
「うん。戦争に行って死んだおじいちゃんが。……………おばあちゃんの顔がはっきりと出てくるから、
多分、おばあちゃんのことを心配しているんだと思うの。
ずっと、おばあちゃんは元気か?とか息災か?とか。
でも私、入院しているからおばあちゃんの様子わからなくて……………。」

「…………そっか。死んだおじい様がおばあ様の安否確認をしたくて綾音ちゃんに
コンタクトを取っているのね。」

「…………うん。でもおじいちゃん、最近苦しそう。」

「………苦しそう?」

「………何だかよくわからないものに体を拘束されているのかな……………。
黒い植物みたいなのに、浸食されている感じがするの。」



続く。

ACT17-(2)

2週間ほどばかり、入院することになった芳樹と満月はリハビリを兼ねて
院内を歩くことにした。

「…………あ、綿貫さんに姫宮さんよ。」
「トラックが突っ込んできたのに、2週間の怪我で済んで良かったわね。」
「2人の愛に勝るものはないって感じね。」

看護師にちやほやされながら、2人は廊下を歩く。

小児科病棟の前まで行くと、1人の少女が満月にぶつかった。

「わっ。」
「きゃっ!」

「満月ちゃん、大丈夫?」

「私は大丈夫ですけど、この子が………。」

「綾音ちゃん、また逃げようとしたでしょ!ダメじゃない!」

「逃げようとしたんじゃないもん、お家に帰りたいだけだもん!」

「だから、ちゃんと治療をしないとお家に帰れないって先生も言っていたでしょ?」

「嘘つき!半年前からそればっかり言っているけど全然治らないじゃん!」

「綾音ちゃん!」



「…………言いたいことはわからんでもないけど、まずは満月ちゃんに謝ろうか。ぶつかったのはそっちなんだし。」


にこにこと笑いながらも、綾音という少女の頭に手を振れた芳樹の目は笑っていなかった。



「………あ、ご、ごめんなさい……………。」






続く。

ACT17-(1)

その日は雨が降る日だった。

自動車がちょうど車検の時期だったこともあり、
芳樹と満月は徒歩で商店街まで移動し、買い物を済ませようとしていた時であった。

店にトラックが突っ込んできた、ということが起きるまでは。




「…………まったく、物吉から知らせを聞いた時は冷や汗をかいたぞ。」
「………すまん。まさかトラックが突っ込んでくるとは思ってもいなくて。」
「……………うぅ、よりにもよって怪我をするなんて…………。」
「2人揃って怪我をしたって聞いた時は心臓が止まるかと思ったよ!」


幸人の言葉に芳樹はあはは、と苦笑いをする。

「安心しろ、トラックの運転手には慰謝料と賠償金をたっぷり請求するからな。」
「………あの、ほどほどにしてくださいね。お兄様。」

桜庭総合病院の個室病室にて、芳樹と満月は仲良くベッドの上に寝ていた。
トラックが店に突っ込み、芳樹は満月を庇ったのだが、満月も多少の怪我を負ってしまい
2人揃って全治2週間と診断された。

「でもまぁ、良かったわ。2人の怪我がたいしたことなくて。」

見舞いに来たジャンヌはホッとした様子で満月の頭を撫でた。


「お仕事も頑張っていたのだから、神様から貰ったお休みだと思ってゆっくり養生しなさいな。」
「…………満月ちゃん、テスト期間だったのに残念だね。」
「あら、免除されるからいいじゃない。勉強からいったん離れなさいな。」
「テスト免除は嬉しいですけど…………。」
「ま、綿貫と姫宮の仕事もないし、ゆっくり休むんだな。」

綾人の言葉に2人ははーい、と頷いた。




続く。
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