MU330

君の、きこえないぐらい微かな泣き声。
今日は悲しいことがあったのかな。
どうしてかな。君が泣いてると僕は寂しくなってしまう。
君の嬉しそうな声がする。
今日は楽しいことがあったのかな。
きっと今は笑顔でいるんだね。
その声を聞いて、笑顔を思い浮かべて、僕は嬉しくなる。
君が嬉しいと、僕まで嬉しくなってくる。
こういうの、共感とかシンクロとかいうのかな。
ナンデモワカル、なんて大層な事は言わないよ。
君と僕の物理的な距離は、歩いてなんて到底行けないくらい遠いけれど、心と気持ちだけは近くに在るよ。
だから悲しい想いを隠さないで。
嬉しい事ならふたりで喜ぼう。ふたりで喜べば、嬉しい思いは膨らむから。
僕は、そばにいるよ。
夜になったら会いに来て。
時には隠れて見えなくなってしまう月のような弱い電波の向こうから、僕はいつも君を想っている。

今日のわたしは泣いていた。
自分の悲しさに耐えきれなくて。
そんな時のあなたは、どことなく寂しそうな気がする。
今日のわたしは笑っていた。
嬉しくて、楽しくて。
電話の向こうのあなたも、楽しそうに思える。
笑顔と喜びをぜんぶ、あなたに届けたいよ。
夜になれば、電波の向こうのあなたに会える。
そんなあなたの気持ちがすきとおったツキアカリになって、わたしは眠って夢に溶ける。
時には繋がらなくて見えなくなってしまうけど、あなたには見えないけど、あなたがいてくれるからわたしは素直に涙を流せるの。
あなたの光でわたしの悲しみは包まれて、星屑へと還る。
どんなに遠くても、あなたはそばにいるんだね。
あなたにとってのわたしも、同じだといいな。

きっとこれは、ふたりの気持ち。

――月は照らす。時間を越えて。
希望、光、全てよ届け。
君を(あなたを)照らす。迷わぬように。
そう。君は。あなたは。
ひとりじゃないよ。
僕は、わたしは、そばにいるよ。――

そばに、いるよ。

遠い君と、しずかに呼吸を合わせてみた。
優しいときの中に、今の僕らはいる。
遮光カーテンの少し入る月の光が、真っ暗だった部屋を微かに照らした。
記憶の中、闇の中で生きようともがく君が、僕の中でしろく咲いた。
どんなふうに伝えたら、今の君に届くだろう？
生きる中で見る風景を、どんなふうに感じているんだろう。
だけど、不思議と。距離が遠くても、似たような風景を僕も感じているような気がする。
ごく自然に、当たり前に、君と話していると本当の心が伝わってくる気がするんだ。
僕にとってできる事が何なのか、真っ正直に言ってしまえば解らない。
模索して、当たったり外れたりしながら探している。
あるいは傍にいるだけでいいのかもしれない。
君とふたりで話した未来を、君といる未来を描いて、探し続けている。
いつだって想いは揺らがない。だから、それで今はいいのかも知れない。
君は僕に、自分の前で泣いてほしいとちいさく願った。
だけどきっと、僕は君の前では泣けない。
できる事をすべて捧げられる、強い僕で在りたいから。
そんな僕だけど、迷い疲れて眠る夜には君の笑顔を想うよ。
君の前で見せない涙は心の中で雫になって、君がくれた笑顔と一緒に闇に白く咲くんだ。
偶然が重なってこんなふうに出会えて、互いを誰ともちがう、きっと普通には解らない愛で愛して。
海をひとつ越える遠い場所にいても、別の場所にいてもきっと本当に想う心は繋がってる。
僕はそう信じてる。
だからいつだっていい。いつの日か、同じ時間をふたりで過ごせたらいいな、なんてね。
何の見返りも求めない、透き通った夢だから叶えたい。
どうかこの願いが君に届きますように。
僕にとってできる事は、君といる未来のために全て捧げるから。
だから君への気持ちを抱きしめて、今日も僕は生きていく。
揺るぎない愛しさに、愛を込めて。

あなたの言葉は、すこしなにかのメロディーに似ていて、
わたしはその小さくちいさく聴こえてくる音に救われて惹かれて、だから何かを返したいと思ったんだ。
わたしにできることはきっと少ないけど、わたしが救われたぐらいの幸せを、あなたにも届けたくて。


[Packaged]


このセカイにある言葉のどれを伝えたら、あなたに届くかな。
このセカイにあるメロディー、どの歌をうたえばあなたに響くかな。
わたしの言葉が、ちゃんとあなたに届いて、響いて。
ちいさくて可愛い箱にぎゅっとつめたわたしの想いが、あなたに喜んでもらいたがってる。
掌や口から言葉や音楽はたくさん零れ落ちて、もう箱じゃ足りないくらいだ。
それを届けたい相手はあなただけ。
ずっと独りで待っていたんだ、わたしの言葉やメロディーにならないそれを、受けとってくれるひとを。
だけどあなたに会ってから、心があなたの言葉とちいさなメロディーで満ちてくの。もう寂しくないよ。悲しくないよ。
だからちゃんと伝わるように、頑張るよ。あなたが寂しくないように、あなたが悲しくならないように。
世界中に溢れているたくさんの言葉から、わたしの言葉はちゃんと届いてる？
ううん、違う。世界なんかじゃなくていい。
わたしとあなたのセカイに笑顔が欲しくてふたりで伝えあう言葉は、わたしに届くように、あなたにも届いているでしょう？
響いて、いるよね？

(言葉にならないときは、歌を歌うよ。楽しい歌、嬉しい歌、優しい歌、想いを歌に変えて。)