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地上150cm

 
明けきらない夜の空、なんとなく眺めて、溜め息ひとつ。
寝転がって、ロフトベッドの柵に頭のっけて見る外は、ぼんやり明るい。
カーテンのはしっこ掴んですこし開けて、もし外からここが見えたら不気味なんだろうなあなんて考えて、わらって。
そんなことで気を紛らわす時間はきらいじゃないけれど、どことなく、空虚だ。
横の道をはしっていく車の、まっすぐ照らしていくベッドライト。
あかるくて、なんだか安心してしまった。
ばかだなあ。薬でもホットミルクでも、なんでもいいから頼って寝てしまえば楽なのに。
ばかだなあ、あたしは。
ひとりになると寝られないなんて、そんなことで世界の終わりみたいにおちこんで。
勝手に回復していく自分に怯えてみたりして。
ああ、わらえる。

(兎も人も、寂しくて死ぬならそれは強さの問題だ。)

スタート、夜明け前、500(朝焼けイグナイト冬ver)

 

はしりだせ。


[スタート、夜明け前、500]


左足で地面を蹴って、走り出す瞬間が好き。
ひさしぶりに吸い込むつめたい朝の空気だとか、明けきってない、ぼやけた夜明け前の空だとか、あたしをうれしくさせるものは、わりと多い。
強めに靴紐を結んで、すこしだけ白く浮かぶ雲をひとにらみしたら。
風も泣いた昨日もきりさく速さで、走る。
昨日雪が降った道は走りにくくて、もつれたり滑ったり、すこしあたしの生き方ににている。
まっさらな雪に、足跡が道をつける。
あたしが初めて道をつくったみたいな、傲慢な気分を片隅に追いやって、空き地までの500メートルを、全力ではしる。
息切れも、靡いて邪魔なパーカーも、なんだか好き。
いつだか理由をさがしてみたけれど、思い当たらなくてめんどくさいから考えるのはやめた。
角を曲がって空き地が見えたら、加速。
勢いをつけて、やわらかい雪の上におもいきりダイブした。
地面に当たって、ちょっと痛くて、苦笑。
じぶんのかたちをつけてよろこぶなんてこどもみたい、とぼんやり考える。
おかしくてちいさい幸せを実感する今日を、いとおしく思うように。
つめたいのと可笑しいのとで、ちいさくちいさく、笑った。

(人生ってやつは、雪の道みたいだ。)

朝焼けイグナイト(秋ver)


唐突に朝焼けが見たくなった。
それだけ。

秋のはじめにする、独特のさめた空気の匂いだとか
夜があける前の、うすくぼやけた街灯のあかりだとか、
そんなものをぼんやりと受け止めて

スタート。

めのまえの、まだ人も車もいない横断歩道をはしりぬけたら
憂鬱な昨日もいっしょに連れて。

走る、はしる、走る。

いきぎれのここちよい感覚をまとって、加速。
まとめないままの長めの髪を風が通り抜ける。

アスファルトを安物のスニーカーが蹴る音をBGMに、
見慣れた景色が行き過ぎるのを横目に。

いまこの空間にあたししかいない事実を、やきつける。

走り終えるころには、見たかったはずの朝焼けすら追い越してしまっていたけれど。

(動機なんてものは、火付け役でしかない。)

Last Night, Good Night.


ずっと、見てた。
安らかに寝息をたてる、きっと夢を見てる君の横顔。
眠れないまま、考え込んだままのわたしの頬を、自分でも気づかないうちに涙が伝う。
どうしてかな。悲しくなんて、ないはずなのに。
夢中になったのは、最初は君で。
惹かれていくうちに立場は逆転して、君しか見えなくなっていったのはわたしの方だった。
自分で、決めたこと。
これが最後の夜だ、って。
このままだと、わたしは君に依存しすぎてしまうから。
刹那だったはずのときめき。自分で抑えてきた感情。
もう止まらなくて、どうしていいか解らなくなって。
ずっと、隠してた。
平気なフリをしていた。
だけど、それも限界。気付いてしまったから。
もう隠してはおけないことに。
だからせめて、最後だけは。
この時だけは、許してくれるかな。
起こさないようにそっと、君の手を握って目を閉じる。
伝わってくる体温。離したくなくて、泣きそうになる。
だけど。これ以上君に迷惑はかけられないから。
もう一度、安らかで素敵なな朝を君と迎えたかった。
だけどそれは、叶わない希望。
自ら離した、想うだけの小さな奇跡。
本当は、なにも伝えずにさよならをするつもりだった。
でも、言えなかった。
これは、わたしの弱さ。
だからこうして隣で眠るのは、わたしの我が儘。
せめてもの、わたしへの慰め。
伝えたい言葉はたくさんある。
好きだよ、ずっと好きだよ、って。
だけど、きっと声が枯れてもわたしは言えない。
だから代わりの言葉を、明日わたしは言う。
いつかは来る、逃れ得ぬ最後を思って。
克明に描く、近い最後を思う。
ちゃんと言えるかな。少しだけ、決意が揺らぐ。
カーテンから覗く夜空に願う。
最後は。せめて最後だけは、笑顔でいられますように。
君の幸せを、願えますように。
これからなわたしを夜空の中に描きながら、ゆっくりと眠りに落ちる。
もうひとつ願いを叶えてくれるなら、どうか。
最後の夜には、安らかな夢を。

(おやすみ。)


[Last Night, Good Night.]

Love it !!


踊りだしたい気持ちのまま、軽くステップ。
こころが上向いて嬉しくなったら、くるんってターンして振り向くの。
今のわたし、可愛く見えてるかな?
ちょっと緊張する。
何度もして、もう慣れたはずのデートなのにな。
頭の上、ふたつ結んだ黄色い花の髪飾りは、君が可愛いって言ってくれた大切なひとつ。
鏡の前で角度直して、頷いた。
うん、今のわたしにできる、飾りすぎない最高のお洒落。
雑誌の中でキラキラしてる女の子みたいに、眩しい光はないけど。
こうやってちょっとずつ変わってく、素直なわたしをわたしは好きだから。
自分を好きになるぶんだけ可愛くなるんだって、呪文みたいに繰り返す。
ハートの瓶にいっぱい詰まった透明な香水、おまじないを真似て目を閉じてひと噴きした。
鞄の中、すみっこに入ってるプレゼントはお揃いのストラップ。
君が恥ずかしくないようにシンプルなの選んだんだ。気に入ってくれるといいな。
ちいさい秘密がいっぱい詰まった部屋に鍵かけて。
空を見上げたら、気持ちのいい青空だった。
ちょっと強い日差しの下を、一歩ずつゆっくり歩く。
ホントはスキップしちゃいたいぐらい浮かれてる。
走り出したいぐらい、早く早くって急いでる。
だけど、せっかく綺麗に結った髪が崩れちゃうのも、新しいスカートのプリーツが乱れるのも嫌だもん。
時間は、いっぱいある。急がなくても大丈夫。
あったかい風が吹き抜けた。
こういう日は、目的地を決めないで歩くのがいいな。
一緒に歩いてるだけで幸せ。君も同じかな。
心の中で、誰より大好きなひとの名前を呼んでみた。
ダメ、わたしきっと今笑ってる。
こんな時、普段はなんとも思わない道端の花までかわいく思えるから不思議。
一歩踏み出すたびにシャンって音たてる、ミュールのチャーム。
ひとつ聞くごとに、嬉しさが増していく。
君といつも待ち合わせする場所まで、もうすこし。
他の人にわかんないくらい小さく、一度だけスキップしてみたら、君がくれたチョーカーが日差しを反射してキラって光った。

(今日も、素敵な一日になりますように!)
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