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猫送り

確かそれは、僕がその人のことを、"ママ"から"お母さん"と呼び始めた頃のことで
それは僕にとって、少なくともその頃の僕にとっては一大事だったから
彼女がそれに気付かなかったことが
多分僕をそうさせた。
彼女は潔癖症でヒステリックだった。
だから当然「駄目よ」、そう言われることも分かっていた。
だけどその野良猫は、確かに僕を呼んでいたから。
"お母さん"が朝食に目玉焼きを皿に移して持ってくる。
子供はいい身分だと思う。
僕の足下に擦り寄ってくるこの猫には、何も与えられないのだから。
母はそれを見て、癇癪を起こした。
触るのも嫌だと言って、猫を蹴って払った。
だから僕はその日の夕刻、路地裏の猫の溜まり場で
無防備に僕に着いてくるその猫の、細い首を掴んで、
僕はついにその猫を、
僕だけのものにした。
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羽根

もしもわたしが明日空へと旅立ったなら
あなたはどうかそれをすくって空へ埋めて下さい。
そしてあなたも追いかけてきたくなったら
ぜひいつでもいらして下さい。
丁重に送り返しましょう。
あなたの瞳が一つ、潰れる度に
わたしに羽根が生えていくわ。
いつか13枚目が生えたら最後の一つを奪って逃げるわ
わたしは自由になるの
14枚の羽根を貰ったわたしと、それを失ったあなたで
いつか見た夢は先に行ってしまったわ。
きっとそこでは春が来るより桜が散る方が早くて
途方もなくあなたは泣くしかないのよ。
だから、ね、わたし独りでいくの。
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