「今日はクリスマスイブということで、俺の試練もスペシャルになるよ。
挑戦者達は運がいいね。」
「………だからって何で俺まで?」
「何だよ、イブはぼっちで過ごす予定なんだろ?
それに俺に勝負を仕掛けに来るじゃないか、どうせ。」
「とか何とか言って、実際は暖を取らせる係でもやるつもりだろ?」
「あはは、御名答。ラナキラマウンテンは寒いからね。
キュレムも過ごしやすいみたいだし。」
「…………ん?ちょっと待て?キュレムだと?
あのイッシュ地方にいる、レシラムとゼクロムと同じドラゴンポケモンの………。」
「……そだよ?」
「何でお前ゲットしているんだ?」
「いやぁ、ちょっと色々あって密輸されていたところを助けたら懐かれちゃって。
でも冷気が強いから放し飼いにしているんだけど。」
「そりゃそうだろうな!キュレムは冷気をコントロールできないって言うしな!
あー、ちくしょう!後でお礼としてキュレムと戦うチャンスくれよな!?」
「いいよ。キュレムもバトルするの嫌いじゃないし。」
そんなわけで、タクマはヒロキと共にキュレムが放し飼いにされているラナキラマウンテンに向かった。
「………うわ、寒………。お前の言う通り、防寒具用意して良かったよ………。」
「………なおかつ特性ほのおのからだ持ちのランプラーを抱きしめておいて、それを言うか?」
「うるせぇ。寒いもんは寒いんだ。逆に何でお前、平気なんだよ。」
「鍛錬の賜物だよ。」
「だからお前、氷帝って言われているんだよ。」
「そういうお前は馬鹿って言われているの、知っているのか?」
「誰だ、そんなことを言うのは!!」
「え?カプの村に住んでいる連中だけど?」
「あいつらは放っておけ。陰口をたたいてばっかでまともに鍛錬をしていないような奴らのことなんか、
気にするな。」
「へー、お前もそんなことを気にするのか。意外。」
「意外とか言うな!!」
タクマの叫びにヒロキはあはは、と笑った。
続く。
「………おい、ヒロキ!今日は俺と勝負しろ!!」
「今日も、だろ?毎日毎日懲りないなぁ………タクマ。
俺の試練は他の試練を大体クリアした挑戦者じゃないと、受け付けないんだけど。」
「五月蠅い!お前の試練を第1にクリアしたいと思っているから、こうして足を運んでいるんだ!!」
「…………とか何とか言って、毎度毎度俺にボコボコにされているのどこの誰だっけ?」
「やかましいわ!」
とある日の午後。カプの村に住んでいるトレーナー、タクマがヒロキに挑戦を挑んできた。
「ルカリオ、<はどうだん>!」
「グレイシア、<めざめるパワー>。」
<はどうだん>を繰り出したルカリオであったが、グレイシアに
あっさりとかわされたうえ、<めざめるパワー>を受けて地面に倒れた。
「………くそ、何で勝てないんだ!?」
「今日も勝てなかったね、タクマ。」
「お前が強いからか!?」
「いや、お前の思考がワンパターン化なんだよ。読みやすいんだよ。
猪突猛進って四字熟語、知っているか?」
「知るか!」
「…………あ、そう。それにしてもくそ熱いなぁ。………お前のことだよ?」
「ええぃ、わかっているわ、そんなもん!
大体、何でこおりタイプが良いんだ!?
普通、ほのおタイプを選ばないか!?」
「………いやいやいや。それお前の押し付けだろ。
俺はこおりタイプが好きなの。
大体、トレーナーの数だけ、好きなタイプ嫌いなタイプいるんだからさ。」
「やかましいわ!」
「………じゃあ、何でお前、かくとうタイプのルカリオ持ってんの?」
「いわタイプ対策だ!!」
「…………さいですか。」
「あらあら、タクマ君。いらっしゃい。今日もヒロキにボコボコにされに来たの?」
「………あ、どうもお邪魔してます。」
「母さんを前に態度変えんなよ、怖いな。」
「あのなあ、女の人には優しくしろってきつく言われているんだよ、俺の親父に!!」
「……………お前のお父さん、レディーファーストだもんな。」
続く。
「俺の試練はパズルを解くこと。
1問間違えるだけでも、俺とは対戦できないから気を付けてね。」
ヒロキの出したパズルに、挑戦者達は頭を抱えた。
「………頑張っているみたいだね、ヒロキ。」
「そうですねぇ、ラナキラマウンテンの地形を活かしたパズルが功を奏しているみたいですし。」
阿鼻叫喚の悲鳴が響き渡るラナキラマウンテンを眺めながら、
2人はアフタヌーンティーを楽しんでいた。
「…………はぁ、疲れた!」
グレイシアを抱きかかえて、ヒロキがラナキラマウンテンから戻ってきた。
「お疲れ様、ヒロキ。」
「今日はどうだった?」
「今日の挑戦者、1人だけ正解者がいたけどコテンパンにしたよ。
もう1度リベンジしに来ますって捨て台詞を残して、帰って行った。」
「ヒロキのラプラスとユキメノコ、グレイシアはレベルが高いからね。
苦手なタイプであっても、技術の差でカバーしているし。」
「でも慢心はしていないよ、俺。驕ったりしたら、ズタボロになるの目に見えているし。」
「偉い偉い。さすがは私達の息子ね。」
「いつかはフリーザーも、試練に出せれたらいいんだけど。」
「それは当分無理な話ね。」
「フリーザーの人間嫌いを治さない限りはね。」
「………やっぱり?」
「色違いだからっていう理由だけで、色んな人間に狙われ続けたもの。
ヒロキが根気よく向き合ったから、ゲットできたのよ?」
「だって、ホントに綺麗だもん。色違いのフリーザー。皆が狙う理由はよくわかるよ。
………だけど、そのせいでたくさん傷ついたから。」
「………そうね。ヒロキ以外の人間には気性が激しいままだもの。」
「……………ま、長い目で見ていくしかないさ。」
「うん。そうだね。」
続く。
メレメレ島で、しまキングであるハラにキャプテンを任命する儀式を行ってもらい、
ヨシキ、ミツキ、ヒロキの3人はウラウラ島に向かった。
「ここがカプの村かぁ。凄い見晴らしがいいなー。」
「…………かつて、カプの怒りを買い、破壊されたと言われる荒地ですか。」
「うん。でも俺の場合はポケモンリーグに最も近い場所だからここを選んだだけなんだけどね。」
「ラナキラマウンテンも、修行にはもってこいだから日々鍛錬を怠らないようにするよ、
父さん、母さん。」
「そうね。」
「それは当たり前のことだからな、ヒロキ。」
「はぁい。」
「…………で、試練の内容をどうするか決めたのか?
いつ挑戦者が来るかわからないから、なるべく早く決めてくれってハラさんも言っていたし。」
「あー、うん。そうだね…………どうしようかなあ。」
頭をポリポリと掻くヒロキの服の裾をクイクイ、とグレイシアが引っ張る。
「え?何だって?パズルでもすればいいって?」
ヒロキの疑問にグレイシアは、パァと明るい表情を見せた。
「ああ、それはいいかもしれないな。」
「知識と技術をフル活用するにはもってこいだものね。」
「方向性も決まったことだし、後は中身を固めるだけだね。グレイシア、ありがと。」
ヒロキに頭を撫でられて、グレイシアは頬ずりをした。
続く。
「………やぁ、長旅お疲れ様!!」
メレメレ島にやってきた3人を、ククイ博士が出迎えた。
「お久しぶりです、ククイ博士。」
「お元気そうで何よりです。………相変わらず、ポケモン達の技を受けているようで。」
「あはは、それが僕の研究テーマだからね!」
「…………………。」
「ああ、博士。紹介します。私達の息子のヒロキです。
ヒロキ、自己紹介なさい。」
ミツキに背中を押されて、ヒロキは被っていた帽子を取った。
「は、初めまして、ヒロキです!ククイ博士の話はいつも両親から聞いています。
………何でもロイヤルマスクとか何とか言っているとか言っていないとか………。」
「はっはっは、ロイヤルマスクは僕のことじゃないからね!
2人とも、悪い冗談を吹き込まないでくれるかな?」
「………………で、博士。私達をウラウラ島じゃなく、メレメレ島に呼び出した理由というのは?」
「うん、実はね。……ヒロキにキャプテンになってもらいたくて。」
「………キャプテン?」
「ジムリーダーみたいなものさ。…」
「そう!ここのところ、挑戦者がすごく多くてね。
ポケモンリーグを前に、最後の試練としてヒロキに壁になってもらいたいんだ。」
「それは畏れ多い話なんですけど………俺なんかより、父さんと母さんにしてもらった方が………。
一応、元チャンピオンと元四天王だし。」
「…………いやぁ、年齢制限っていうものがあるんだ。」
「………あ、なるほど。」
ククイの説明にヒロキは納得した。
「元とはいえ、チャンピオンと四天王の子供なら実力も折り紙付きだし、何より大丈夫!
ヨシキとミツキから、君がこおりタイプの使い手であることは聞いているから、
引き受けてくれるかな?」
「…………まぁ、俺でよければ喜んで。」
「ありがとう、ヒロキ!君ならベストな返事をしてくれると思ったぜ!!」
続く。