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夢で過ごすあなたとの時間はとても幸福なもので困ってしまいます。


 友達と会った日は、とても疲れる。
 たのしいうれしいの後にやってくるのは死にたいという感情で、参ってしまう。電車の中でずっと、線路に散らばるばらばらのわたしを見ていた。なんて迷惑なはなしだろうと思った。
 だれかに、話を聞いてもらいたかった。ありきたりな悩みだ。だれも進んで聞きたいとは思わないような事柄をわざわざ少ない時間の中で聞かせる必要はない。口をつぐんで、この子は何々の友達、と分け分けしている。何も残らないと思った。わたしは、わたしが死ぬ時に手紙を出せるような人もいないのかと思った。わたしもきっと、そんな手紙を受け取るようなことはない。

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 保護の後に来るのは支配。あなたを支えると誓った人は足枷がカチリとはまってしまったことに気づかないまま消えてしまう。

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 夢でたまに見てしまう面影に、わたしはベッドの上で起き上がれないまま苦笑してしまう。くすぐりのような、やわい幸福に満ちた夢。そんなこと一度もなかったのに。苦しかった思い出しかないのに。こないだ駅で、すれ違ったのかもしれなかった。姿見が似ていただけだったのかもしれないけど、ひどく動揺した。今も好き、ということはなくて。ちりちりした視線を思い出しては、ぜんぶ忘れてくれたらどんなに楽だろうと思う。

赤い傘、黄色いレインコート、ピンクの長靴、白い線の向こう側に置いてけぼりということ


 付き合ったり結婚するということをただの独占欲の表れとしか見られなくなってしまったわたしですが、昔はフィクションにあるようなしあわせな家庭をつくることを夢見ていたこともありまして。正義感の強い、やさしい人と一緒になりたいと願っていたこともあったのでした。
 学生の頃、みんなしあわせそうな頭の中身をもって家での出来事を話すのだなあと思っていた一方で、でもほんとうは家庭不和で、つらすぎるのを隠すための作り話なのかなあ、そういうのをおくびにも出さないですごいなあとも思ったりしていた。ドラマやアニメに出てくる平和な家庭ばかりだと思っていた一方で、そんなのは全然ないんだよむしろその反対ばかりだよとも思っていた。みんなお前よりもよっぽどひどい場所にいるのに、しあわせそうな顔をつくれるんだよ。お前は不幸を気取ってるだけだよ。そんな声は今もしている。ほんとうはどうかなんて他人のわたしには一生わからない。他人にとってつまらないことほど本人にとっては一大事なことだったりもするのだし。しっているからかなしいこと、しらないからしあわせとかふこうとか、そんなのもわからないよ。

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 人生相談の回答に、みんな死にたいと思いながら生きているみたいなことばがあって、でもそれよりも前に読んだ新聞のコラムでは日常で死について考えることはないから云々と書いてあって、だから何だと言うこともなく多分どちらもほんとうのことなんでしょうねと思っただけ、ただそれだけです。

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 なにか大切なものがこぼれ落ちてっているような気がしている。その一方で最初から持っていなかったような気もしている。ひとを思いやるこころ。人と関わらなすぎて、人とつながる世界がどんなものか、もう分からなくなってきている。人と触れ合うことで起こる摩擦なんかも分からなくなってきている。わたしはどこにいるのだろう。人と触れ合わない時間は限りなく透明に近くて、わたしは過去の出来事を反芻するばかりで、今を生きていないような気さえしてくる。

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 わたしの通っていた高校は頭のよい私立大学の附属で、だから同級生のほとんどはその有名な、名前を言えば人から羨まれる大学生で、わたしは、薄く、笑っている。中一の頃からこの大学には進まないって思ってたのに高校で外に出なかったのが間違いだったのだって今さら気づく。じぶんの怠惰加減にも今さら気づくの。勉強していてわかったことは、どうしようもない飽き性に恵まれているということだった。
 去年予備校に本科で通わなかったのは、経済的な理由も、門限の理由もあったけれど、一番は、通わなくても合格できる人がいたから。夏と冬、同じ志望校を目指す人たちと一緒に授業を受けて、天才ばかりがいると思っていたのに案外そうでもなくて軽くショックを受けた。そんなわたしは一次試験で失敗して、終わらない月のものと吐き気に、いやになるくらい人間然とした醜さを知って、笑うしかなかった。第一志望の試験、最後の日本史で、あたまがまっしろになるということが現実にあるのだと知って、手が震えて、すこし泣いた。どうにもならないことだった。勉強机の上には参考書も赤本も並べたままで、何だかまだ大学に執着しているみたいで、一生そう言うくだらないことを引きずるのかもしれないと思って、そうだね、ばかだね。
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