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強気による狂気 by『サディスト』

(NL/幼なじみ)





グイッ。

彼女の唇に自分の唇を押し当てた。
奪ったようなかたちになったそれをミサちゃんは大層驚いたようで、大きな瞳をさらに見開いた。


「!!」


リップ音をさせてすぐ放したが、唇がスゥスゥとする。彼女のメンソールのリップクリームが移ったらしい。


「…相変わらず色気無いね。
移すなら口紅とかあるでしょ…」

「なななっ!馬鹿!なにするの!」

「唇が寒いよ」

「は、はぁ??」


拗ねたような子供っぽさはとても滑稽に響いた。彼女は怒りを通り越し、呆れにも似た気持ちだろう。自分でも解ってる。
が、彼女の小さい唇に自分のそれが触れたと思うと…。


「責任とってあっためてよ」


そこはふっくらしていたんだ。
柔らかかったんだ。

胸がドキドキする。そして、掴んだ肩は力を入れ過ぎれば折れてしまいそうな程に華奢だ。いつの間にこんなに体格差が出来たんだろう。


「せ、責任って…あのね…ぅむ!んっ」


知ってるさ。
僕は男の子だから、責任を取らなきゃいけないのは僕の方。


「…大丈夫だよ。ミサちゃん」


君が僕を温めて続けてくれるなら、
僕はずっと君の側にいるから。




昔からそう。僕は貴方に付き従う。


メンソールの香りのするお姫様は唯一の君主。





*Fin*

一応、二人は幼なじみな設定(笑)
気弱な男児と勝ち気な女の子。

お題はこちらからお借りしました。
フラッパー少女と僕。

純正サディスト by『サディスト』

(BL/甘)





「なぁ、僕のコト好き?」

そう云った時の俺の恋人は、にんまりと心底楽しそうな表情をしていた。
元々が美しいといっても過言ではない美形な男だ。歪められたその顔だって、艶っぽい。

「す、好きだぞ?」

「?をつけるなよ」

「…すまん」

ドキドキしてしまう心臓になんとかセーブをかける。
謝ると同時に、ごまかす意味も込めて恋人の身体を押し倒した。

「…わっ、と」

(相変わらず細せぇ身体…)

琉依の華奢な身体は簡単に動かせる。

「征一、ヒトを押し倒すのはいいけど、さ…?」

だが琉依の心はなかなか動かせないのだ。

「イイ声で想いを込めてもっかいな。
これは譲らないよ?」

「琉依は意地が悪い…」

「いーから、ほら」

組み敷いたのは俺で、組み敷かれているのは琉依なのに。
彼はそんなことには動じてはおらず、寧ろ更に愉しそうに目を細めた。

「…こほん」

「咳ばらいが必要なくらいイイ声で行ってくれるの?」

「やかましい」

確かに、イイ声をご所望の可愛い恋人の為に意識はしていたが、からかい口調で言われると恥ずかしい。
クスクスと笑う彼に頬を寄せて、バツの悪さを隠した。

「琉依が好き」

「顔が見えなーい」

当たり前だ。隠しているのだから。
しかし更に悔しいのは、思いっきりイイ声で耳に直に吹き込んでやったのに、琉依にはまだ不満を云う余裕があることだ。

「す、好き」

「…むー」

「なんなんだよっ」

「”琉依”が抜けた」

「それくらい多めにみてよ」

唇を尖らせるという子供のような仕種なのに、琉依がするとその唇の先を啄みたくなる。
だが、実際に行動に移そうとしたら、止められてしまった。

「なに、この手は?」

「待て、だよ。セイ」

「……」

俺は犬じゃない。そう云おうにも恋人の可愛い手は俺の唇を塞いでいる。
琉依は少し苦笑を零し、細く白い脚を俺の脚に巻き付けてきた。

「ね、セイ。ちゃんと云ってくれたらキスしていいよ」

−それからね、セイのシて欲しいことみんなしたげる。

甘ったるく内緒話のように囁かれる。
今まで唇の動きを封じていた手が、俺の首に回される。更に引き寄せられ、密着度が増した。

「……る、琉依…」

手という覆いを外された唇は外気に晒され、涼しさを感じる。
琉依の細く白い指が唇をなぞり、もうあと少し顔を寄せれば触れ合えそうな位置まで迫られる。

ゴクリと喉が鳴った。

彼が欲しい。

「ルゥ」

「ん…?
どおしたの、切羽詰まった顔しちゃって」

ルゥ、ともう一度恋人を愛称で呼ぶ。
クスクスと惚けて笑う琉依の唇に早く噛り付きたかった。

「くそっ、…っ、ルゥ…琉依!愛してるっ!」

噛り付いた。感想も応えも聞く間が惜しい。深く深く、貪る。
少し目を開けて琉依の表情を窺う。琉依はさっきまでの余裕は消えて、とても恍惚として身を委ねてくれていた。

「は…っ、んんぅ…はぁ…」

「…は…っ、苦しかった?」

「セイ…」

何分くらいキスをしていたんだろう?酸素不足でクラクラする。
本能のままに貪ってしまったので心配すると、同じく息を切らした恋人は俺の名を吐息に混ぜた。

「ふふ…ヨクデキマシタ」

ニッ、と琉依は笑った。





純正サディスト

「ルゥはサドだ…」

「お褒めにあずかりどーも」





*Fin*


お題はこちらからお借りしました。
フラッパー少女と僕。

5.裏切られて感じるのは絶望、それとも切望 by「首なし人形」

(オリジナル/GL/甘)





とさっ。


「ね、百合。
あたし、貴女が好きなの」


お決まりの文句と共に、サラは百合をベットに押し倒した。
少し驚いた様子の百合はそれでもやっぱり冷静で、サラは少し悔しい。


「…友情の告白?」

「違う。こういう意味で…好き」

「…………」


ちゅ。

唇に口付ける。拙いくらい軽いキス。それでも女同士でするには少し違和感があった。


「ずっと友達のふりしてたけど、あたしは百合が欲しかったよ。恋人として」


百合の華奢な身体をそっと抱きしめた。自分もそれほど体格がいいわけではないが、それでも百合は細く感じる。


「私は、親友だと思ってたんだけど…」

「そっか。裏切られた気分?ん?」


そっと離し、また組み敷いて顔を見つめる。
サラは皮肉を込めてそう云った。百合はいつも冷静で、賢いから、裏切られたと思うより先にサラの気持ちに気付いていたはずだ。


「サラ、あんたってそういう顔もするんだね」

「…どうゆう顔?」

「怯えた目してるよ」


するりと白い百合の手がサラの頬をなぞってきた。
押し倒したままの恰好なので、サラは自分の身体を支えるので両手がいっぱいだ。彼女を潰さないように、大切に。慣れないことはするものじゃない。


「だって怖いもん」


友愛すら失うかもしれない。
今、自分が壊しかけているものはもう元には戻らない。


「ね、百合…もしフるならまた友達でいさせてね」


解っていても云わずにはいられない。
サラには自分がどんな表情をしているかは知れる術はないけれど、百合の表情はよく見える。彼女はどうしようもない子供をあやす様に苦笑していた。


「都合の話だなぁ…」

「ふふ、そだね…。ごめん」


サラも苦笑する。自嘲に近いかもしれない。
フラれることは覚悟していてもやはり辛いものだ。


「サラ」


不意に百合に名前を呼ばれた。聞き違いでなければ、少しからかうような笑いもあった気がする。
そして、ぐいっと下から首を抱き込まれ、百合に引き寄せられる。


「!」


ちゅっ


「…ふふ、意外と私、こっちもイけるかもしれないね?」


にんまりと、艶やかな唇を見つめるしかない。
顔は真っ赤、頭は真っ白。
サラはキスされた事実をしばらく理解できなかった。







裏切られて感じるのは絶望、それとも切望


友情は裏切られたが、
愛情は決して裏切りはしない。





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1,大人になんてなりたくないのに by「首なし人形」

(オリジナル/教師×生徒/悲恋)






どちらが悪かったという訳では無い。
否、どちらにも元凶はあったのだ。


「云うことは本当にそれだけ?」

「あぁ」

「…そう」


捺芽が目を臥せるのを僕はぼんやり見詰めることしかできない。それが僕にできる責任の取り方だ。


「じゃあ、本当にお別れなのね…?」


彼女なりにくれた最後のチャンスを無下にすることをどうか赦して欲しい。


「大好きよ」

「有り難う、なつ」


これが最後の抱擁だ。
初めて、青空の下で堂々とキスしたのに。

俺は彼女の温もりを、身体中に覚え込ませる。
恋人である捺芽はそんな俺を哀れむ様に瞳を揺らした。


「さようなら、センセイ」

「さよなら、、」


セーラー服のスカートを翻し、少女は桜並木の道に背を向ける。
歩調は淡々と、着実に。
それでいい、必死に隠そうとしている涙は見えてないことにしてやるよ。


「慎吾…」


あのピンク色の薄い唇から紡がれた俺の名前。

二人の密事の時だけ、そう呼ぶ事を許してしまった。彼女は学校でも大声で呼べたらいいのに、と笑っていたっけ。

さして大きな音量ではなかったように思う。だが、確実に俺の耳に届いた。

風に乗って、
空気を伝って、
確かに俺へ。


「…ごめんな」


このスーツのネクタイは彼女がくれたバースデープレゼント。
これももうする資格は無いだろうから、と無造作に外した。
卒業式も終わったんだ、かまわない。

彼女はまだ将来を決められる程、大人でも無く。
俺も彼女を束縛出来る程、大人ではなかった。

唯、それだけだ。


「愛していたよ」


唯、それだけなのに。










時の長さと短さを知る恋でした。





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