「ちょっと東京。」


そう言って手招きをする我らが祖国、菊様。
はっきり言って近寄りたくない。
だってさ。
めちゃくちゃいい笑顔なんだ。
この笑顔……俺の経験上、いいことの前触れだったことは一度もない。そう、たった一度もだ。

だが、俺は東京。
いいえ、と言えない男だ。
あぁ、自覚はある。
だが、どうにもならない。
こーゆー時、大阪さんが少し、少し羨ましくなる。



「なんですか?菊様。」


「最近お忙しいでしょう?ですから……はい、これを。」



そう言って渡される紙袋。
およそA4サイズ。
重さはそれほどない。



「あ……ご配慮痛み入ります。ですが……。」


「遠慮なんかいらないんですよ。東京はいつも頑張ってくれていますからね。」



これは……この言葉の裏には
受け取りますよね?と言うか受け取りなさい。
と、いう思いが隠れている。



「…………ありがとうございます。」




†††††††††††††††††



自宅に帰り菊様から受け取ったそれを開ける。
中から出てきたのは想像通りのものだ。
通称、薄い本。
題名は「関西vs関東」
嗚呼、嫌な予感しかしない。



パラパラとページを捲っていく。
まぁ、概要は、関西と関東で、喧嘩をしてるわけだな。の、はすだが、なぜか俺と大阪さんがあれやこれやなことになっている。



『どうや東京?えぇんやろ?素直に言うてみぃや』


『っ………い、や…です……!』


『強情やなぁ。
なら、もっと激しくせんとなぁ?』


『っ……!?あ、あぁっ……ん……いや、…ぁ……お、、さかぁ……っ!』


『っ………どうや、東京?素直になってみぃや。なぁ?』


『んんっ……ぁ、い、いい……です……っ!』




ぱたり。
静かな部屋にその音だけが大きく響いた。


携帯を取り出す。



「もしもし、菊様?」


『おや、どうしたんですか、東京?』


「上司様が道後温泉で湯治をしてこいだそうです。」



分かりました。菊様……。

もう、しばらく愛媛さんのところで休んで下さい。




††††††††††††††††

菊様はお疲れなんです(笑)