「………ザンザス入るぞぉ」
はやる鼓動を押し隠すようにして、スクアーロは名を呼んで、いらえを聞く前にザンザスの部屋へと入った。軽く叩いたつもりのノックがやけに大きく響いたように感じるのは、彼の気のせいであろう。
押し開いた扉の先、正面に鎮座する椅子に部屋の主であるザンザスは座しており、扉の開くのに合わせ、僅かに頭を擡げるとスクアーロと視線を交わす。機嫌が良いのか、否か、一見では判断が難しい。
いらえも待たずに入室した彼を咎めるでもなく、ただ視線を交わしてくるザンザスの表情は、無感動とは違った色合いをしているが、それを読むことは些か困難である。
汗ばんだ手が、柄にもなく緊張しているのだとスクアーロに伝えてくる。だからといって、引き返すわけにもいかないのだ。
今日という日は、スクアーロにとってなにものにも代え難いもので、彼が目覚めてから初めて訪れた日でもある。ザンザス本人にとっては、そんなこと自体意味を持たないのかもしれないが、それでもスクアーロにとっては、欠かすことの出来ない日なのだ。
深い眠りについたザンザスに、毎年欠かすことなく告げた言葉を、今年は面と向かって告げることが出来るのだ。
そして、告げる言葉は一つきりで、ここにくるまでに何度も何度も復唱をしていた。
ただ、スクアーロにとっては意味のあることであっても、告げられるザンザスがとう感じるかは別物なのだ。そのことだけが、スクアーロに告げさせることを躊躇させていた。
しかし、告げなければ意味はないのだ。唾を飲み、汗ばんだ手に力を込めぎゅっと握りしめ、肺の中を満たすように一つ深く息を吐き、何度も復唱した言を一気に告げる。
「そのぉあれだ……………ザンザス生まれてきてくれてありがとうなぁ」
スクアーロの告げようとした言は、生誕を祝うもの。出自故に自らの生を厭う傾向にあるザンザスがその言をどうとらえるか、それは本人にしか知る由はない。けれど、スクアーロにしてみれば、世辞や同情といった薄っぺらいものではなく、偽りない本心である。
声に出し告げてしまえば、簡単なものであるが、彼にとっては心からの言であり、最も勇気を奮う必要のある言葉であった。……特に、今年は。
永く深い眠りから醒めたザンザスへと告げる一言であったのだから………。
「そ、そんだけだぁ。邪魔したなっ」
狡いという自覚は彼にもあった。良い逃げというやつだ。
どんな表情をザンザスが浮かべているのか、スクアーロには確認する勇気が持てなくて、彼の口か手が行動を開始する前に、ぎゅっと握りしめた手に更に力を込めて、スクアーロは踵を返していた。
ぐるぐると終わることなくループする言葉たちを胸に携えて…………。
『生まれてきてくれてありがとう』
『今この瞬間、生きてくれていてありがとう』
と。
えと、なんかあんまし誕生日を祝ってるような感じじゃないですけど、一応スクザンで、スクに生まれてきてくれてありがとうを言わせたいなぁと思ったらこんな感じになりました
スクがいなくなった部屋でザンザスがちょこっとでも照れてたらいいなぁとか思ったりするんですが、↑だとちょち厳しいですかね
ザンザスがどういう性格か全くわからないです、し(汗
だって一言も台詞がない…途中までザンザスにも台詞あったのに…
むしろザンザスがスクを誘ってるっぽい台詞もあったのに…どこに消えた…
とにかくっ
ザンザス
誕生日おめでとうございます