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さようなら、だいすきなひと( オリジナル※注意)

注意
オリジナル薔薇SS\^^/

・薔薇にキョーミがない人
・薔薇ってなーに?な人(ぐぐって大丈夫だったら構いません)
・オリジナル小説ダメーな人

バックプリーズ!


大丈夫って方だけ続きをどうぞ☆↓↓















煙草は嫌いだった。


煙たいしくさいし、
煙は目に染みるし
健康に悪いし
いいことなんて何もない。

だけど
俺の周りの友達は
そんなデメリットなんかお構いなしに
煙草をガンガン吸っていた。


マルボロ、マイセン、セブンスター
クールにラッキーストライク


煙草の名前はたくさん知ってるけれど
吸ってみようとも思わない。
何回か、友達から勧められたこともあるけれど、

「煙草は吸わない」

そう言って、いつも断ってきた。



煙草は、嫌いだ。




「よぉ」

「あ、先輩」


廊下でサークルの先輩に話し掛けられる。

彼は俺の直属の先輩で
結構、と言うか
かなり仲良しな部類に入る。

先輩とは
ちょいちょい飯を食いに行ったり
映画を観に行ったりする仲だった。


「お前、今日暇?」

「暇っすよ、どっか飯でも行きます?」

「こないだ話してた、串揚げの店に行かねえ?」

「あ、いいっすね!」

「んじゃ、5講終わりにいつもの場所で」

「了解っす」


こんなやり取りも、
もう何回しただろう。
軽く手を振り、先輩と別れる。

すれ違った際に
先輩の服から
少し苦い、
でも嗅ぎ慣れた
煙草のにおいがした。



先輩は喫煙者だった。
しかも、ヘビースモーカーの部類に入る。

けれど先輩は
俺と一緒にいる時、
絶対に煙草を吸わなかった。


「お前、煙草嫌いなんだろ?
じゃあお前の前じゃ吸わねえよ」


いつだったか、
先輩にそんなことを言われたことがある。

俺が煙草が嫌いだから
気を遣ってくれるのは嬉しかったけど
無理をさせているみたいで、
なんだか心苦しかった。


だったら
先輩がすきな煙草を
俺もすき、に
なってみようと、考えた。

理由は単純だったけど
それで先輩の傍にいられるなら
今まで嫌いだった煙草だって、
頑張ったら
すきになれると思ったんだ。



そんなんで先輩が
俺の方に、振り向いてくれるとは思わなかったけど。




「なあ」


薄暗い個室
頼りなさげに灯っている間接証明
洋楽が静かにかかっている。

軽いつまみを食べ
どっかの国のよく分かんないビールを飲みながら
俺達は向かい合って、話をしていた。


「何すか?」

「いや…」


先輩は酔っているのか、言葉の歯切れが悪い。
でもそれはいつものことで、
別段気にすることでもないことを、俺は分かっていた。

目の前のグラスが空いているのに気付き、
呼び鈴を押して店員を呼ぶ。

ビールを二つ頼む。


「悪ぃ、気付かなかった」

「何言ってんすか、こーいうのは後輩に任せて下さいよ」


ほどなくして、ビールが置かれる。
先輩はそれをちびりと飲むと、
ゆっくり口を開いた。


「…つーかさ」

「はい」

「もうすぐクリスマスじゃんか」

「そうっすね」

「…」

「…」

「……何あげたらいいか、お前、分かるか?」




瞬間、息が、つまった。





分かってた。

先輩には、彼女がいることも
この気持ちが、ずっと、届かないことも
俺は男で、先輩も男で、


分かってたんだ。


だけど、それでも
俺は、先輩の傍にいたかったんだ。


少しでも先輩の好みに近付けるように
嫌いだった煙草だって、すきになろうって努力して、

それから、   。


空白の未来。


でも、もし
先輩が俺の方を見てくれたとして
一体、
俺達の間には、何が生まれて
俺は一体、何を失うんだろう。
その答えはどこにもなくて
きっと何処にも逃げ場はなくて

どうして俺は
先輩と一緒の存在なんだろう。


何度そうやって、
自分の生きてきた道を否定してきたんだろう。



舌先まで出かかった言葉を、
ビールで押し込む。
勢いよくのけぞって、
嫌味っぽく、ため息をついた。


「そんなの、俺に分かる訳ないじゃないっすか!」


つーかそれは先輩が一番知ってるはずっすよ、
手をひらひらと振りながら言う。

先輩は、ちょっとだけ
はにかみながら、俺に言った。


「…彼女って、難しいよなあ」





いつもならバスを使って帰る道のり
今日は、ふらりと
歩き慣れてない夜道を歩くことにした。

理由なんてない。
ただ、なんとなく、俺は歩いている。

歩きながら、無理して光っている蛍光灯の下を
幽霊のようにくぐり抜けた。


道中、コンビニがあった。
なんとなく立ち寄り、
生まれて初めて煙草とライターを買った。


「(大人だから一度くらいいいよな)」


そんな言い訳を心の中で呟いて、
月明かり、ライターの灯。

だいすきな先輩の姿を思い浮かべながら、
見様見真似で火をつけ、息を吸い込んだ。


勿論、
先輩のように吸える訳もなく
思い切り咳込んだ。
咳込んだついでに涙も出た。
煙草の煙が目に染みて、辺りが黒に滲んで、


ああ俺はいつだって貴方だけだったのに。




さようなら、だいすきなひと




 お前、煙草嫌いなんだろ?
 じゃあお前の前じゃ吸わねえよ。


「…っ、」


地面に落ちた、火がついている煙草を
乱暴に踏んで、掻き消した。

煙草は嫌いだ。
きっと、ずっと。



【song by:チャットモンチー“染まるよ”
薔薇シリーズ先輩×後輩その2
自己満足\^^/←】
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