スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

手を伸ばせば届きそうな距離なのに遠くて(銀魂3Z:土方)

そう言えば今日は所謂“クリスマス”と言うやつで年に一度の大イベントで、特に「クリスマス近いから恋人でも作っとくか」そんな雰囲気で出来ちゃったカップル達が浮かれる時期でもあって、あ、いや、別に悔しいとかそんなんじゃなくて独り身のあたしとしては隣にいるのが我が家の猫だけででちょっと寂しい、みたいな(断じて悔しい訳じゃない!)
うーんコタツの中はあったかくても心はロンリーハートですよって駅前で叫んでやろうか!クリスマスだしちょっとくらいはしゃいだって良いよね、ねぇ良いよね?って台所に立つ母さんに言ったら「何馬鹿なこと言ってんのあんた、男と一緒にいたいならトシ君のところに行けばいいじゃない」ってあっさり言われたから、ああそっかトシがいたんだと思う反面トシはクリスマスを誰と過ごすんだろうと思った。あれ、トシって彼女いたっけ?

考えてみればそんな話をしたことがなくて幼稚園の時にあじさいぐみのひろこちゃんが好きだったのは覚えてる、けど。
でもまああの容姿だ、女には困らないだろうな。だってこないだも他校生の子がトシに告ってんの見ちゃったし(偶然ね!)学年問わず差し入れ貰ってんのも毎日のように見るしトシのファンクラブもあるとかないとか。うん、じゃあ今頃彼女とイチャラブやってんだろうな。なんだそっか、ふーん。


そこまで思考を巡らせてイライラ、幼馴染みにぽつりと置いてけぼりにされたみたいでちょっぴり悲しくなった。






だから、ホールケーキを持って普通に我が家を訪ねてきたトシを見てあたしの目はそりゃもう珍獣を見るかのようにまんまるになったのでありました。


『ちょ…え、あ、はぁ!?な、何で?何があったの?』


ん、とトシが差し出してきたケーキの箱を受け取ることも忘れてあたしはただ考えていた。何でこいつこんな所にいるのおかしくね!?今頃どっかの女の子とラブラブデートしてんじゃないの!?ばっちばちのイルミネーションの下で愛を囁きあいながらとか、


「何があったのって、今日何の日だよ」


無理矢理ケーキの箱をあたしに押し付けるとトシは靴を脱いであたしの家に上がり始めた。


「あらぁトシ君、メリークリスマス!」

「おばさんお久し振りです。あ、クリスマスケーキ買ってきました」

「あれま!何だか悪いわねぇ…って、あんた何ボーッと突っ立ってんの?こっち来てケーキ切ってあげなさい」


母さんはトシを笑顔で招き入れたけどこの場の状況が理解出来てないのはあたしだけだろうか。あれ?何でこうなってんの?
トシから渡されたケーキの箱がやけに冷たくてあたしの体温を生温くしていって、だけどあたしの考えはぴたりと安定する気配がなくて結局迷宮入りになってしまった。





『何でここにいるんですかー』


さっきまでぬくぬくしてたコタツの中に一人入った時の違和感を覚えてる暇もなく、向かいに座ってるトシに話しかける。
トシはで持ってきたケーキに自分のマヨネーズを一生懸命かけながらちらりとあたしの方を見て、ここに来たらいけねーのかよ そう言った。


『そんなこと言ってないじゃねーですかィ』

「何で総悟の真似してんだよ」

『…別に意味はないけど』


ふん、と鼻を鳴らしながらあたしは真っ白なケーキにフォークをぶっ刺して食べる。うん、こないだ食ったチーズケーキより美味しいぞ。
ケーキに十分なマヨネーズをかけ終わったのか、トシはようやくフォークを手に取りマヨケーキを食べ始める。もはや本来の味がないんじゃないの、それ。まあいいけどさ。


『…あんたも暇だね、折角のクリスマスなのに幼馴染みと一緒に過ごすなんて』

「その台詞、そっくりそのまま返してやるよ」

『じゃあそれを綺麗にラッピングして返してあげる』

「いらねーよ、アホ」


トシはそう言うとむしゃむしゃと美味しそうにケーキを食べる。いるか?なんて聞かれたけど遠慮しときます、そんなの食ったら胃がおかしくなりそうだ。
今でも胃の辺りと言うか胸全体がムカムカしてるのに、


「お前こそクリスマスなのに家でゴロゴロしてんじゃねーよ」

『だって出かける理由がないし』

「そうなのよトシ君、この子ってばパン屋のバイト辞めさせられちゃってねぇ!」


いきなり会話に乱入してきた母さんにあたしは叫んで抗議する。違う!辞めさせられたんじゃない自分で辞めるって言ったのっ!!
全く、何回言ったら分かってくれるんだ母よ。ボケが始まってるんだろうかまだ60歳前なのにいい加減にして欲しいなホント、


「へえ。パン屋辞めさせられたの、お前」

『ちが、トシには前話したじゃん!』

「あ?そうだったか?」


口元に笑みを浮かべてあたしを見つめるトシをぎろりと睨む。何回言ったら分かるんですかコノヤロー


『……バカトシ』

「何か言ったか?」

『別にー』


あたしはトシの方を見ないでケーキを頬張った。何だよ訳分かんねーヤツ、なんて言いながらトシもケーキを食べる。あれ、なんだこの図おかしくない?
目の前にいるのはあたしの幼馴染みでそれもふたりの間は中途半端な関係で結ばれていて。

こうしてトシのことを考えるだけでイライラするのはなんでだろう、思い当たる節が全くなくて出口が見つからなくてまたイライラ、曖昧だからこそハッキリさせたくて微妙な距離をどうにかしたくて


「…オイ、」


不意にトシがあたしの名前を呼んでびっくり、視線をトシに移すとフォークを突き出してきて訊ねてきた。


「険しい顔してっけど、腹でも痛ぇのか?」

『あ……ううん、そういう訳じゃ』

「…つーかよ、」

『何?』

「…お前、真面目な顔似合わねーな」


はぁ!?
何を言い出すかと思えばいきなり人の表情をダメ出しですか、失礼にも程があるじゃん!
そうあたしが反抗したらトシは


「馬鹿みてーに笑ってた方がお前らしいぞ」




そう、あたしがすきな笑顔を浮かべて言った。


そしてその時気付いた重要な事実、認めてしまえば意外とあっさりしていてだけどもう戻れない感覚 そうか、最初から分かってたんだあたしはトシの笑顔がすきですきで、だから知らない女に嫉妬なんかしたりトシに対してイライラして


今まで悲しいと思ってたのは女の子からモテてるトシに置いてけぼりにされたから、なんかじゃない。




要するにはじまりからずっと、



あたしはトシのことがすき、だった。



【…あれ。
これで終わりだったはずなのに…続きそうorz

いちおクリスマス記念夢。二日遅れのメリクリですません!】

偶然とか必然とかよく分かんない、けれど(銀魂:高杉)

そこに助けたい人がいるからあたしは走るんです、といつの日だったかアイツは満面の笑みでそう言った。

正体不明の薬やらクソ長い包帯やら綿棒やらガーゼやら何やらを持った箱を軽々と背負って(一度持たせてもらったがあんなの持てる女がいるのがすげェ)あちこちを走り回って怪我してる子どもや血塗れの攘夷浪士、産気付いてる女や死にそうなジジイやババアの所に行って無料で治療してやるんだ。
それが人間だろうが動物だろうが天人だろうがアイツにとっては大差ないらしく誰彼構わず道端で必死になって手当する。そうしてお礼を聞く暇もなく走り出して次の病人の所へ行く。


ホント、人騒がせな娘だよなァ。






かく言う俺もアイツに助けてもらった一人だった。


あん時の記憶はぶっ壊れたレコードみてェに途切れ途切れで良く覚えてねェが、確かに覚えてるのは泣きそうになりながら俺を見下ろしていたアイツの顔。何を言ってたのかすらそれすらも曖昧だが「しっかりして下さい!」とか「大丈夫ですか!?」とかそんなことを言ってた気がする。
背負っていた箱から塗り薬や包帯を取り出しテキパキと俺の切傷を包み、傷口が深い所は少しだけ縫ったりして(もう何が痛ェのか分かんねェくらいに俺の感覚神経は麻痺していたらしい)出血多量で死と生の間をふらふらしてた俺を助けてくれた

どーにか助かって仰ぎ見た空は相変わらず青くて、その時俺は改めて生きていることを実感したんだった。


地面に出しっぱなしにしていた薬を綺麗に箱の中にしまっている知らねェ女に俺は躊躇いもなく話しかけた。


『…オイ、』

「何ですか?あ、無理に身体を動かさない方が『──俺が、誰だか知ってんのか?』


幕府に指名手配されてる男だぞ俺は。顔ぐれェ知ってるだろォが、そう思ったのが間違いだった。慈愛のこもった笑顔を漏らしながら女は「ええと、誰でしょうか?あたしの知り合いにこんなカッコいい人はいなかったはずですけど」と、言った。



俺は、俺のことを知らない人間にこの時初めて出逢った、んだ。
だからその衝撃が未だに俺の脳ミソにこびりついているのかもしれない。


「…あ。もしかして有名人ですか?すいません、あたし瓦版とかテレビとか見ないんですよね」


ああ、確かに有名人かもしれねェなァ  と思いながら俺は片目で女の顔を見据えながら自分の名前を口にした。


『…過激派攘夷浪士、高杉晋助…って名前、聞いたことねェか?』


流石にこの名前を聞いたら普通の人間なら恐怖で震えるだろうと思ってたのに、女はやっぱり分かりませんと少し恥ずかしそうにしながら言ったから呆然。ホントに俺のこと知らねェのかこいつ、


「攘夷浪士、ってあれですよね?国を変えようとテロとか幕吏や一般人を平気で殺したりする人達ですっけ」

『…まァ、その知識は間違っちゃいねェ』

「で、高杉さんもその一人なんですか」


その質問には答えず俺は女に質問した。


『お前、俺が怖くねェのか?』


女は一瞬面食らったような表情になったが、少しの沈黙を破って口を開いた。


「怖いとかそんなこと考えてたら貴方を手当出来ないでしょう」

『は、』

「子どもだろうがご老人だろうが攘夷浪士だろうが天人だろうが、死にそうになっている人を見過ごす訳にはいかない性質なんですよ、あたし」


そうキッパリと言い、すたと立ち上がった。よいしょ、と箱をリュックのように背負って応急処置なので早目に医者に診てもらって下さいね、じゃあお大事にと言い残して走り去ってしまった。俺は小さくなっていく後ろ姿を、ただ見送ることしか出来なくて。


名前も聞き忘れ、礼も言いそびれたっつーのに何故か後悔はしていなかった
また、逢えると思ったから。





そしてその後、予想通り俺は街中で江戸を走り回り怪我人を手当しているアイツの姿を見掛けた。二回目に逢った時最初に喋ったのは俺かアイツかどっちだっただろうか、そんなの随分昔のことで思い出せねェがいつしかお互い偶然逢ったら甘味屋で団子を食いながら他愛もねェ世間話をするのが習慣になっていて俺も江戸に向かう回数が増えて。
だけどすれ違いなのか一ヶ月近く逢えない日が続いて、それでもこうして江戸の街に足を運んでしまうのは何故だろう、何故だろう。


「高杉さん」


不意に後ろから聞こえた声、身体全体で振り向くといつもの箱を背負いながら見慣れた女が人波の中で笑っていた。



一ヶ月近くまでどこに行ってたんだと茶をすすりながら訊ねたら薬になる薬草を採りに武州まで行ってました、と返ってきた。


「ここら辺の店の薬草はあたしの所持金じゃ高くて買えなくて」


そう自嘲しながら語る女の横顔を見るのも久し振りだった。団子をぱくりと頬張り美味しい、と呟く。


『薬草の一つや二つ、俺が買ってやるのによォ』

「そんな訳にはいきませんよ、それなら自分の部下に美味しい物を食べさせてあげて下さい」


栄養失調に効く薬はなかなかないんですから、その言葉に俺は確かになと頷いた。
ひゅう、とそよ風が吹く。

なんとなくこの空間が居心地良くて、もしかしたら俺はこいつに特別な感情を抱いてるのかもしれない ふと、そう考えた。
それが愛情だとか憧れだとか良く分かんねェけど愛情なんて一時の気の迷いが生んだ痛みだろォが、なんて思い続けてたんだけどなァ、

ほわほわした想いを持て余しながらぼんやりと地面を見つめていた、その時だった。


「あっ!」


小さなガキの悲鳴が聞こえ反射的に顔を上げる。丁度目の前でガキが地面に突っ伏して転んでいた。それを見た俺が横を向いて何かを言う前に女は箱を持ってガキの方に走っていたから驚き、怪我人に敏感なのはいつでも変わんねェなァ。
例の箱から傷薬やらばんそうこうやらを取り出して目を見張るスピードでガキの手当を進めていく。泣きそうに歪んでいる顔を覗き込みながらガキに笑いかけているのを遠目に見て、思わず俺の口元にも笑みが浮かんだ。


「…あ、痛くない!ありがとう、おねえちゃん!」

「いえいえ、転ばないように気を付けるんだよ〜」


あらかたの処置が終わったのか、ガキはアイツに手を振りながら人混みの中に消えていった。
箱を背負い、すたすたと歩いてきた女は懐から金を出し、「これあたしの分です、」と言い、そろそろ行きますね そう続けた。


『もう行っちまうのか、もう少しゆっくりしてけばいいだろ』

「あたしもそうしたいんですけど最近忙しくて」


ふう、とついたため息はどこか明るかった。俺は鼻をふん、と鳴らしてキセルの煙を吐く。


『…なァ』

「?」

『……、頑張れよ』


はい、と軽やかに返事した薬売りの女の笑顔は誰よりも何よりも眩しかった。



遠くまで走り続ける君を、



ここで、ずっと見守ってるから。



【song:“走り抜ける君へ、Hurry Up!”

ごちゃごちゃ長くなってしまったorz】

世間はクリスマス一色に染まりつつあって、(銀魂3Z:土方)

憂鬱だ。

何が憂鬱かって後一週間ちょいでやって来る一日が憂鬱だ。生憎その日は仕組まれたかのようにぽっかり空白でカレンダーに赤丸とかハートマークとか書かれている訳じゃなくて、だからって言ってバイトが丁度いい時間帯に入ってる訳でもなくてそう言えばパン屋のバイトは店長と喧嘩して二週間前に辞めちゃったんだった、ああ昔のあたしはなんて馬鹿だったんだ!
クリスマスなんて独り身の人間には地獄のようなイベント、一人で過ごすより仕事に専念する方がまだマシだったんじゃないのかなぁと思いながら身体の中に溜まった憂鬱を白い息と一緒に吐き出した。

すぐ横を男女のカップルが仲良さそうに通り過ぎる。その繋がれてる手をひっぺがして蹴り入れて吊るしてやろうか!…と思ったけど大人気ないのでやめておこう。うん。
運が良かったなカップル達よ、何かよく分からない正体不明の笑みを隠すためにマフラーに顔を埋めながら歩いた。






「何やってんだよ」


学校の近くにあるコンビニでチーズケーキかショートケーキかどっちを食べようかで迷っていたら不意に横から話しかけられてびっくり、横を向くと幼馴染みのトシがいつもの目であたしを見下ろしていた。


『……え…トシ、部活は?』

「今日は休みだ、つかお前は何分もケーキの前に陣取って何してんだっつーの」


そんなに長い時間ケーキにメンチ切ってないんですけど、てか何分前からアンタはあたしを監視してたんですか気持ち悪いなぁ、この世のストーカーは勲ちゃんだけでいいっての(でも、あそこまで粘着質なストーカーも珍しいから逆に尊敬)
あたしは冷蔵庫で冷やされ中のケーキ達に向き直って口を開いた。


『チーズケーキとショートケーキ、どっち食べようか迷ってて』

「それならマヨネーズに合うチーズケーキがいいんじゃねーか?」


間髪いれずに戻ってくる返事、いやどのケーキにもマヨネーズは合わないだろ!と心の中でツッコんだけどチーズケーキの方がちょっぴり安かったのでそっちを選ぶことにした。うん、バイトも辞めちゃったし節約しなきゃね、節約。

二個入りのチーズケーキを持ちレジに向かう。その後ろをちょこちょことトシが付いてきてあたしが会計してる姿をじっと見てる。何がしたいんだろう、まさかそのチーズケーキ一つくれ、なんて言うんじゃないだろうか。そう言われたら断ろう、だってあたしの金で買うんだしケーキをあげる理由もない。
しかしトシがケーキを食べてる姿なんて想像出来ないなぁ、正直。彼は洋菓子より和菓子が似合う男だもん、見た目がね。剣道やってるし、


「何してんだ、行くぞ」


いつの間にかケーキの会計が終わっていてトシは出入口にいた。あたしは慌ててケーキの入った袋を受け取りトシと外に出る。
空は雪とは無縁の快晴だったけど、この寒さじゃいつ雪が降ってもおかしくないくらいに空気が冷えきっていてあたしはさむ、と小さく呟いた。


こうして幼馴染みと歩くのは何年ぶりだろうか、昔は良く一緒に帰っていたんだけどトシが剣道に熱中してから帰宅する時間がずれてクラスも変わってなかなか喋る機会もなくなって、でもトシの親とあたしの親が仲良しだからお互いに顔を合わせることは度々あってなんと言うか、トシはあたしにとってよく分かんない存在だった。友達でも恋人でもない、幼馴染みと呼べるのかも分からなくてうやむやで曖昧で。

あたしの友達は“土方君の幼馴染み”と言う肩書きがよっぽど羨ましいらしくしきりにトシのことを聞いてくるけどそこまでトシのことを知ってる訳ではなくて、ええと、やっぱり中途半端な関係としか言いようがない。

そんなことをぼんやり考えてると、それを遮るようにトシが喋りかけてきた。


「お前さ、」

『ん?』

「パン屋のバイト、辞めさせられたんだって?」


一瞬、聞き間違えたと思った。驚きの表情でトシを見ればトシもあたしを驚きの表情で見返す。ん?ちょっと待てよ、あたしは自分の意思でバイトを辞めた訳で決して辞めさせられた訳じゃない、けど。


『…誰から聞いたの?』

「誰から、ってお前のおふくろさんに決まってるだろ」


あのババア、ちゃんと説明したじゃん自分から辞めるって言ったんだって。何聞いてたんだっつーの(家に帰ったら修正しとかなきゃ)
あたしは違う違う、と首を振りトシの言葉を否定して続けた。


『店長と喧嘩して辞めた』

「は…。喧嘩したとか馬鹿だろ、お前」


はあ、と上からため息が聞こえてくる。ちょっとトシ、失礼じゃない?あたしだって好きで辞めたんじゃないんだから!
だってあの店長喋ってることとやってることが全然違うんだもん!そのくせ一日のカルシウム量足りてないんじゃないですかってくらいキレやすいし怒りっぽいし言ってることは意味不明だしハゲてるし!
だからもううんざりして二週間前に辞めますお世話になりましたって言ってやったんだって!せいせいしたっつーの!クリスマスに予約が一杯入ってヒーヒー言って苦しめばいいんだあんな奴!!




…と思い切りまくし立てたらトシがぽかんとしていた。(いや、当たり前か)けれど次の瞬間、何かを思い出したかのように薄く笑った。


「……やっぱお前、馬鹿」





あ。


その顔を見たのは久し振りだった。トシの表情で一番すきな微妙な笑顔、馬鹿みたいな大笑いでもなく笑ってるかどうか分からない微笑でもなくてその中間の笑顔。
昔の笑顔と今の笑顔をさっと脳の中で比較してみる。顔の作りは大きく変わるものの、まとう雰囲気はふたつ一緒でなんだか可笑しかった。


「…何笑ってるんだよ」

『べっつにー、』


あたしは片手に持っていたコンビニの袋を胸元まで持ち上げ、トシに視線を向ける。まあ今回だけは特例ってことで。
そう言えば家にジュースとかあったっけ、誰か家にいるかなぁ、家の中が汚かったら玄関で待たせときゃいいや

でもそんなことは大した問題じゃなくて、


『トシ、』

「あ?」




『ケーキ、一緒に食べる?』


アルバムリアリスト



いいのか?その質問にあたしはこくりと頷いて一人より二人で食べた方が楽しいし、と笑った。(またトシの笑顔が見たいから という事実は内緒にしとこう、)



【クリスマスに向けてプチ短編。

続きます。】

ブルーマンデー症候群にさよなら(銀魂3Z:銀八)

本日晴天、こんなに天気がいい週の始まりはジャンプを読むに限る!ジャンプいいよねジャンプ、女のあたしでさえ熱くなれるしいっそのこと少女ジャンプに改名すればいいんだ、うん。
今熱いのはやっぱギン肉マンだよね、ギンタマンもいいけどさ(って言っても誰もあの良さを分かってくれない…)誰かギン肉バスターかけさせてくれないかなぁなけなしのお小遣いの100円あげるから、これマジで!
いや、ギン肉マンも面白いけどワンパークやベルト、プリーチもすき!それからそれから今ドラゴンボーズも熱いよね!なんてジャンプには魅力的な漫画が揃ってるんでしょうか!そう思いませんか、先生!?






「だからって俺の授業中にジャンプを読んでいいとは言ってねーだろが」


あたしのジャンプ論に返ってきたのは冷たい言葉と頭に走る小さな痛み。はぁ、と国語の教科書をひらひらさせながら目の前にいる国語の教科担任で3Z担任の銀ちゃんはため息をついて言葉を続けた。


「それは俺に対する宣戦布告ですかコノヤロー」

『だって待ちきれなくて!ギン肉マンがあたしを呼ん「はい没収〜返して欲しかったら放課後国語準備室に来い、以上」


そう言って銀ちゃんは国語のワークを立てて隠していたあたしのジャンプをいとも簡単に取り上げた。…って、


『ちょ、ぎ、銀ちゃん待ってあたしの生き甲斐を取らないでェェ!!』


がたん、と席を立ち抗議するあたしの叫びは銀ちゃんには届いてないらしく、「はいじゃあ次のページ開いて〜」なんていつもの間延びした声で授業を再開しやがったあのクソ天パ!よりによっていい所で没収しなくてもいいじゃん、とぶつくさ文句を言いながら銀ちゃんを見つめる

何事もなかったかのように黒板に白いチョークを走らせている後ろ姿を蹴りたくなったけど、その後で何されるか分かんないからやめといた。(総悟には劣るけどSだからな、あの人も)(うあ、仕返しを考えるだけでゾッとしてきた)


あああ、あたしの週に一度の楽しみが…ギン肉マンが…ギン肉マンとウォーズウーマンの死闘はどうなったんだよ気になる気になる!
教卓の上に置かれてるジャンプが遠いぜ畜生…早く放課後にならないかなぁ、と思いながらまだ高い位置にある太陽を睨んだ。




それからの授業はホントに地獄で苦しくてキツかった、精神的に。
我慢出来なくて昼休み決死の交渉を試みに行ったけれど「放課後って言っただろーが、後二時間くらい我慢しろ」って追いやられたし、あの続きが気になるせいで昼ごはんもろくに喉を通らなかった。(ギン肉マン…ウォーズウーマン…)
実は購買で買うことも出来たんだけど一日に460円の出費はバイトをしてない学生には痛くて、じゃあ放課後まで待つしかないかと思いつつ購買部の前に置かれてる今日発売されたばかりのジャンプとにらめっこしてしまうのは仕方ないことだと思う。


だから六限目の終了チャイムが鳴った時嬉しくて嬉しくて思わず奇声を発しそうになった(危ない!)
帰りのSHRは銀ちゃんの面倒臭いからやんねー、と言う理由で我がクラスにはなく、あたしは席を立ち猛ダッシュで階段をかけ上がり国語準備室に向かった。ノックもなしに国語準備室の扉を開ける。


『銀ちゃんジャンプ返して!!…って、あれ?』


けれどそこには銀ちゃんの姿は見えなくてシーンとした空気だけが広がっていた
あれ、なんでいないのあの人!もしかして嘘つかれた?そう思った時、


『…あれ?』


部屋の中から聞こえた呼吸、思わず耳をそばだてる。…うん、やっぱり聞こえる。
あたしは失礼します、と今更の決まり文句を呟き国語準備室の中に入る

辺りをキョロキョロ見回すと目に入った、ソファーに寝転がってる白衣の人間。近付いてみるとジャンプを顔に乗せてすぅすぅと寝息をたてて寝ている銀髪頭の人間…あれ、


『(…これ、もしかしてあたしのジャンプじゃない!?)』


なー!こいつ人のジャンプ勝手に読みやがった!てか何してんのこいつ、教師が生徒の没収した本読むとか有り得ないじゃん!あたしが苦しみのたうち回ってるでる間に自分はのんびりジャンプ読んでたって訳ですかあたしの許可も取らずに!

もう銀ちゃんが寝てようが起きてようが知らないし!約束通り来たんだからジャンプ返してもらうからね!むしろ明日閲覧料取ってやる、なんて考えながら思い切りジャンプを持ち上げた   ら、


『、っ!』






不意に見えた、

銀ちゃんの寝顔。



いつも見ない可愛らしい少年みたいな表情に、心臓がどきりと大きく鳴った。


『(うわわわわ、は、反則!!)』


予想外の不意打ちに驚いて後退り、手に持っていたジャンプを落としそうになるけど何とかこらえる。
え、ちょっと待ってマジで寝てるの?何、あの、その、ええと、とりあえず落ち着け心臓!

深呼吸し、もう一度近付いて銀ちゃんの寝顔を覗き込む。あたしが今ここにいることなんて気付かないくらいに熟睡している、らしい。


『…銀ちゃーん、』


そっと銀ちゃんの名前を呼ぶけれど反応なし。そんな所で寝てると風邪引くよ なんて心配してもそれは一方通行のようで、


『…おーい、』

「…」

『…』

「…ぅ、」

『(お、起こした!?)』

「…」

『(…なんだ、寝言かぁ)』


銀ちゃんは今頃浅い夢の中をさ迷ってるんだろう、半開きの唇が「…ん、チョコレート…」と小さく漏らしたから可愛くて思わずくすりと笑った。
ホント、子供みたい。




最後に笑うのはあたし!



ジャンプ閲覧料、ちょっとだけオマケしてあげようかな。
(なんでかは内緒!)(あたしだけの秘密でいい)



【銀さんの寝顔はアホみたいに可愛いといいさ!】

永遠に埋まることのない君の欠けた穴(庭球:…跡部)

夜が瞬いて

君の温もりが揺らめいて

微笑みひとつ


浅い夢の端っこから零れ落ちた。






未だ腕に残る微かな体温はやがて温くなり冷たくなり、何も言わずに黙って去っていく
伸ばした掌は最後まで君に届かず仕舞い

現実でも夢の中でもすり抜けていく君の細い腕


『…っ、』


言い慣れた名前を唇が歌う、けれどその名前の主はここにはもういないらしい
他人事のように感じるのはまだ君がここに帰ってきてくれる気がして、  でも。


そんなの“有り得ない”って現実的な脳味噌が軋む



幼い想いだけが痛くて切なくて 泣きそうで、ああせめて愛しい貴女を造りあげていた輪郭がこれ以上ぼやけていかないように、と枕元にある小さな箱に手を伸ばした。
横にある錆びたぜんまいをきりきりと 巻く、巻く。


『…』


夢うつつ、聞こえてくるのはポロンポロンと途切れがちの不器用な音楽
曲名も知らないこの音楽は貴女が俺に贈ってくれた過去の思い出

聞き慣れた音の羅列が冷たい空気を震わせて、でもそこに幸せをくれたきみはずっといないんだね




まだ愛してる  のに。
こんなにも、こんなにも。


一方通行の矢印  終着点すら見えなくて、



『…どうして、』

『…俺を置いていったんだ、』

『あんなにもお前に恋焦がれて』

『…なのに  、』






熱を帯びた文章だけがふらふらとさ迷って、粉雪のようにこころの奥に小さな引っ掻き傷だけをつけて、きえた。

繰り返し蘇る笑顔はまぶたの裏に映っては薄れて、なぁ なんでそんなに哀しそうなんだよ



応えて、
せめて


もう、一度だけでいいから。





―――♪――♪……。




永遠か一瞬か、分からない時間が過ぎて

ふたりの愛の詩がぶつりと  途切れ、た。



暗闇にひとりぼっち
最後に抱いたあの体温
満たせない想い

隣にいないのは、きっと君だけで


ああ

僕から
君が離れない、



『…頼む、もう一度だけ』

『俺の…』

『俺の名前を、……。』



膝を抱えて唇を噛み締める。
いつからこんなに弱くなった?

風になって溶けた香りを追いかければ笑って明日を迎えられるのかな、
君がいなくても


幸せだ、と思える日がくるのかな。


『…そんなの、』

『有り得ねぇよ…』

『俺は、お前じゃなきゃ、』




またいつか地球の裏側で君と出逢うことが出来たら、

きっとそのちっぽけな体にしまった愛を俺に届けてくれるんだろう?
だから別れが来たあの時、空白の四文字を残していなくなったんだろう?

それは明日かもしれないし一ヶ月後かもしれないし一年後かもしれないし、
もしかしたら来世になってしまうかもしれないけれど、  。




だから、俺は



君を愛したいのに、



【コラボ夢 by:やまと“調べ”

一応跡部夢…のつもり。本人要素0だけどorz
久々の悲恋で何が何だか分からないまま終わってしまったとかって言う悲劇。見方によっては死噺かもしれん。はふ。

すんませんやまとっさん遅くなりやしたがぁぷ完了いたしましたホントごめんなさいぃぃ…(スライディング土下座)】
前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2007年12月 >>
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31