おっさんずラブをゲーム脳で見ると分かりやすい、と先日書きまして、それがどういうことなのか説明しようにもなかなか苦戦しております。例えば非オタクに対して『萌えとは何か』を言葉で説明しようにもとても難しいと思いますが、共通認識の無い人に何かを説明するのは難しい…。
その前にまず、このドラマ、前にも書いたけど多分、右脳と左脳で見え方違うんじゃない?という所から始まるんですよ。何も考えないで映像+BGMの雰囲気だけで見てれば何もおかしな所は感じないかもしれないんですけど、脚本(セリフ)重視で理解しようとすると理解不能になる。
『言葉をストレートに理解しようとすると話や設定が矛盾する』
『複数の解釈ができてしまい、どれが正解か分からない』
とかの部分が複数あるから、人によっては下手な脚本に感じたり雑な作りに見えたりしてると思います。個人的には矛盾や違和感という意味で非常にストレスが強い状態なのですが、世間的にこれだけ評価が高いということは、そのストレスさえ分からない方々も多かったりするのでしょうか?
「方向音痴」
→お婆さんにすらすら道案内できるくらい方向感覚強い
「好き嫌い多い」
→プロフィールに書かれている嫌いな食べ物はピーマンのみ
「結婚ってさ、何?」
→この答えが出ていないのにプロポーズ
「俺はお前とずっと一緒にいたい」
→武川さんは牧君と生活のすれ違いが原因で別れたと言っているので、それを避けるなら上海行きを辞退して東京に残るべきなのに何故そうしないのか。
などなど。要するに『矛盾している』と感じるなら『映像とセリフは全て固定(肯定)した状態で』辻褄が合う方法を探してみればいい。かなり違う話になりますが、矛盾が無くなる分、とてもすっきりします。1つ分かると他のシーンにも次々繋がったりする部分もあるので、その見方でOKなはず。それがもう1つのおっさんずラブの世界。『あっち側』と『こっち側』ですからね。公式はそんなこと言ってないから信用できないって?ゲームだって「ここに隠し要素がありますよ」なんて製作チームは普通言わないから。『普通に見ていて矛盾する部分が複数ある』って、何の意図も無ければただの下手な脚本と雑な作りです。仮でいいから『推理物である』としてみると、これがすごい緻密な作りに化ける。
突然ですが問題です。
次の式の答えを求めなさい。
1□1=
となっているだけだと、どのように答えますか?足し算するのが1番ポピュラーな計算でポジティブな感じもしますし、2と答える方が多そうでしょうか?
1+1=
とあれば答えは2ですが、何の指示も手掛かりも無ければ、+−×÷の4つのいずれかとしただけでも答えは分かれますね(私のスマホだと×と÷が全角表示無くて、他機種からどう表示されるのか、見づらかったらすみません)。手掛かりが無ければそのうちの何が『出題者の意図する正解』か分からずお手上げになります。実際あるらしいですね、小学校のテストとかでも複数の解釈ができてしまうのに『出題者の意図する正解』とは違うと不正解にされてしまうケースって…。問題の出し方が悪いと思って私は理不尽に思いますけどね。「ご想像にお任せします」「答えはあなた次第」など明確に示されていればそれでもいいのですが、むしろ作中で春田さんが「勝手に決めんな」という意思を明確に示しているから困るんです。
おっさんずラブの場合は計算式の+−×÷の部分を隠されている状態により『複数の解釈ができすぎてしまう』ことが問題です。プロポーズから上海出発までの1ヶ月を丸々すっ飛ばされるため、そこでどういう話があったかが重要なのに無いんですよね。
『武川さんと牧君が都内同士の生活のすれ違いで別れたという前例があるのに、何故その時の状況を悪化させて上海へ行くのか。同じことを繰り返したら同じことになるに決まっている』というのが私の解釈で、劇場版では春田さんが営業所に帰ってきた時には牧君が本社に戻っていて、武川さんが言う「あいつは本社勤務で俺は営業所勤務」と同じ状況が作られる。
『武川さんの話を理解していない』か『理解した上でお互い納得できる話し合いをしている』か、これがどちらなのかによって引き算になるか足し算になるか決まるのに、肝心のそこの部分がすっ飛ばされるため分からないのです。これが後者の方でいいなら、ハッピーエンドと喜んでいる多くのファンに比べて私のように引き算解釈に嵌まるファンは損しているだけですから、どうして分かるように作ってくれなかったのかっていうのが理不尽ですよね。
「俺、もう我慢しないって決めたんで」
個人的にはこのセリフが1番厄介です。『何を』ということを言っていないですからね。行かないでくれって我が儘言うか、休職して一緒に上海行くかすればいいのに、行かない時点で我慢してますからね。関係が拗れてる夫婦なら、旦那が家にいなくて1人の方がストレス無くて幸せって話もよくありますけど。家だけ残して本人がいなくなる状況で、遠距離って何でも我慢しなきゃいけないだろうけど、一体何を我慢しないって言っているのか。
それが何で視聴者の目にはハッピーエンドに見えるって、それは牧君の基本的な思考が『自分の幸せより相手の幸せ』ですからね…。
別の観点から見ると、牧君が出ていこうとすると泣いたり喚いたりして引き留めようとしたり、武川さんの所に行こうとするとキレたり、春→牧の最も強い感情って束縛・独占欲であるような気がする。「俺はお前とずっと一緒にいたい」が最も強い感情なら、上海行きを辞退して東京に残るはずでしょうから。武川さんの前例で考えて、牧君と一緒にいられない生活になってしまうと武川さんと同じことになりますからね。それが嫌なら避けようとするはずなんだけど、「これ欲しい!」って思う物があって、買って手に入れたらそれで満足しちゃうあの感覚に似てんのかな…?
奥さんに留守番頼んで旦那が単身赴任に行くって、客観的に見て珍しい話じゃないですからね。でも交際長いカップルならまだしも、家預かるって重いと思うの。「俺はお前とずっと一緒にいたい」って言った当の本人が無人の家預けて日本からいなくなるって、何でこの話が多くのファンから喜ばれてるのか意味分からないです。春牧の関係って一緒に暮らすっていう『形』から始まってるのに、その『形』が無くなってしまうという引き算が発生しますからね。結局、牧君が武川さんより春田さんを選んだのって、武川さんは潔癖症により他人と暮らすことを嫌がっているし、春田さんは片想いだったけど一緒に暮らすっていう『形』があった。その差が今まで打ち明けてなかったお父さんにも紹介するっていう所まで繋がったんだろうと思うけど(ちなみに武川さんが牧家に行っているという確証はそもそも無い)、その強みだったはずの『形』を捨ててどうする。
「どうして“好き”だけじゃ、ダメなんだろう」
牧君は『好き』と『形』の両方が欲しいんだと思うので…。武川さんは「あんな過ち」として気付いてるんだけど、春田さんはまだ気付いてないんだろうな…って気がする。
『牧凌太にとって』ハッピーエンドとはとても思えない辺りが、私がファンでありながら否定的な意見を持っている理由なので、そこは理解してもらえるとありがたい。厄介なのは牧君の自己犠牲の精神なんですよね。貴島Pも言ってたけど、牧君は『我慢して嘘をつく』人だって。Hanakoで遣都君も言ったね、「心がキレイで自己犠牲に生きる牧の魅力は変わりません」って、『自分の幸せより相手の幸せ』な精神、治ってないんか…。観察してると、牧君って共通の状況で共通の行動を取る法則性があって、この『相手』が彼氏だけとは限らない辺りが…。だから牧君と一緒にいたいなら目を離してはいけないと…!このドラマ法則性強いから、法則そのものを割り出してしまえば、あとは当てはめていけばすごく分かりやすくなる。話は矛盾するわ複数の解釈ができてしまうのに正解の特定はできないわ、『普通に物語を読む方法で理解不能に陥る』から、分析・考察を繰り返すことで補っている。普通に見ていて理解できるように作られているなら、そんな面倒くさいことはしない。
武川さんと同じこと繰り返すとかバカじゃないのって思うんだけど、ヤンデレ解釈で見れば間違ってないんだよね。家を預けて留守番頼んだら、家から出ていくことはできないし、帰らなきゃいけないから他の男の所に行くこともできなくなる。檻だなって思います。実際、あの人の良さそうな春田さんが牧君が武川さんの所に行こうとした時だけは豹変したし、その時の印象強いから春牧の二次はヤンデレもありますからね。寂しい思いさせて我慢させてから帰れば、ヤンデレ解釈で見ればある意味究極のハッピーエンドな気がする。日本のではあまり見たこと無い気がするけど、海外の動画だと飼い主が仕事や兵役とかで1年ぶりとかで帰ってきたら犬が大喜びしてるのあったりしますよね。牧君は態度には出さないだろうけど、それ的な?自己犠牲の精神に対して我慢させてから帰るって、効果絶大な気がする。だから究極のハッピーエンドにもなるんですよ。自覚あってやってると怖いので、無自覚でお願いします…。
視点を変えるとバッドエンドにも究極のハッピーエンドにもなるし、そういうのが気持ち悪いし、私はこんな怖いもの初めて見た。多くのファンがあの終わり方に『多幸感』って言うけど、私は恐怖感が1番強いです。複数の解釈ができてしまうのは、恋愛シミュレーションゲームのようなマルチエンディングっぽい感じがします。『重要ポイントで選択肢を間違えた状態』に感じるのもあって、ゲーマーにとっては恐ろしいものよ…。
問題が発生するのは、私がよく言ってる、武川さんがあんなにキレてたのと同性愛者で未婚のはずの牧君が「夫婦の問題ですから」なんてさらっと口にするのは、別居してただけで結婚してたからでしょっていう。日本では同性で結婚は認められていないから、気分だけの。「まあそいつもかーっと盛り上がってキスしたものの、冷静になって考えると順番間違えたなって今頃後悔してるんじゃないか?」が武牧の過去の話だってくらいは想像付きますよね。武川さんとしては「俺の過去にもそんなことあったな」くらいで答えてるんだろうけど、「男同士なんですよ」で完全に「牧だな」って見抜いてる感じしますね。男からキスされたって話をよりによってその旦那に相談しちゃってる辺りがおかしすぎる(笑)まあ、牧君って一目惚れ体質っぽい所ある上に好きだと思ったらすぐキスしちゃう所あるみたいで。展覧会で飾られてたボツ原稿には春田さんが浮気を疑って「この尻軽男が!」とか言うセリフがありましたが、否定はできないと思う。ちずちゃんに彼女のふりしてもらったり、キスしたことを冗談ですよって言ったり、好きな人ができたことを蝶子さんに10年隠していたり、嘘や隠し事っていうのは元々描かれてるものですから、そういう綺麗なばかりじゃない所が人間らしいと思って好感持ってるので。美化して見るつもりは無い。
彼氏に対して我が儘言わないでいろいろ我慢してる分、彼氏が一緒にいてくれないと浮気してしまう、そういう所あるっぽい感じするんだけど、そういうちょっと困った所も好きです。多分、武川さんと春田さんは精神的に結ばれてればそれで安心して本人とはずっと一緒にいなくても大丈夫なタイプで、牧君は一緒にいてくれる人かどうかが大事な気がする。全体的にすごく違和感があったのって、多分そういうズレが原因の気がしてもどかしい感じが…。
本格的にゲーム脳的な話はなかなか大変なので、ぼちぼち後日に…。
26日に2件、29日に1件拍手ありがとうございました!