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転びながら それでもいい調子



遅くなりましたが前の続き!




ふたりでごはんを作って一緒に食べて、そのあと。


「僕まだ眠いよー」

ってゆうちゃんはベッドにごろん。
「私も寝るーっ」て言って、転がるゆうちゃんの後ろから抱きついて寝転んだ。
ゆうちゃんのジャージを着たまま。
窓の外から涼しい風。
夏に向けて準備をしてるような黒い夜空だった。


「ねーまきちゃん」

「んー?」

「今日はさ、いっぱい疲れたけどね、なんかさぁ、悪いものが全部出てったような感じ」

「ほんとう?」


嬉しくなって上半身だけ起き上がってゆうちゃんの顔を見る。
ゆうちゃんがいつも疲れたなって言うたび、無理させてるんじゃないかなって不安になっていたから。

ゆうちゃんは寝転んだまま目を閉じて微笑んでいた。
ほんとだよって優しい声で言いながら。
ゆうちゃんの腕が伸びてくる。
今度は真正面からゆうちゃんに抱きついた。


そのまま抱き合って眠った。

 

起きると、ゆうちゃんはまだ寝ている。
時々うなされるので擦ってみる。
そうするとまたゆっくり眠れるようでほっとした。


そんな風に過ごしていると、そろそろ帰らなきゃいけない時間。
ゆうちゃんから借りていたジャージから私服に着替えようと身体を動かすと、寝ぼけながら抱きついてくる。


「まきちゃんどこいくの?いかないで…」

子どもみたいな寝起きの声でそんなことを言われると、どうしようもなくなってしまう。

「うん、もうしばらくこうしてようね」


そう言いながらゆっくりゆっくり頭を撫でていると、

「きょうかえったりしないで…」

って言いながらまた眠ってしまった。



でも、明日の朝からまた1週間が始まる。
私は何一つ準備をしてきていない。
帰らなくちゃ、いけない。


この年になって恥ずかしいことかもしれないけど、親が厳しいのもある。
うちの親は「婚前交渉絶対禁止!」「彼氏の家に行くなんてとんでもない!」っていうタイプなので。
時々は親に嘘をついて泊まるんだけど、今日はそれも無理そうな感じ。


隙を見てゆうちゃんの腕を抜けて服を着替えた。


 

「ゆうちゃん、」

ベッドで眠るゆうちゃんを擦って声をかける。ゆうちゃんの身体がすごい勢いでビクビクって痙攣した。

「わっ!大丈夫?」

思わずベッドに上がって抱きしめた。
しばらくして痙攣が止まると、抱き締め返してくれた。


「まきちゃんかえらないで…おねがい」

「ごめん、今日は帰るよ」

「なんで?なんでかえるの?」

ゆうちゃんは混乱してるみたい。

「やだ…ひとりは嫌だ…嫌だ…」


目を瞑ってうわ言のように繰り返す。
一度起き上がって服を直して、もういちどゆうちゃんの胸に頬を寄せた。


このまま「仕方ないなー」って笑って一緒に眠ったら、ゆうちゃんはきっと笑ってくれるんだろうな。

もし、私が何物からも自由なら。

もう昼って言ってもいいくらいの時間に起きて、寝起きにセックスしたりして、ふたりで歯を磨いて、「今日も気持ちいい天気だねー」とか言いながら冷蔵庫を覗いて、ぎゃー!何もない!とか笑いながらふたりでお買い物に行って、大騒ぎしながら昼ごはんを作って、場合によっては些細なことで喧嘩したりして。



あぁ、そんな風に明日を過ごしたい。
そしてそれは、しようと思えば不可能って訳でもない。
親に電話をかけて嘘を重ねて言い訳をして、明日は休んでしまう。
親はきっとものすごい勢いで怒るだろう。私に失望もするだろう。
でもきっと、いつかは許してくれる。
そんな甘さもある家族。

逆に、そんな簡単な幸せを手放してまで営む人並みの生活ってなんだろう、とまで思えた。


それでもそうすれば、そんなことを繰り返していれば、人生の膠着状態から来るある種の焦燥感はずっと私の中に張り付いて離れなくなるんだろう。もう何年もずっとずっとそれは私と共にあった。やっとそれが薄れてきたところなんだ。

今はまだ、動かすために必死にならなければならない。人よりずっと遅いんだから。



「ゆうちゃん、あのさ、」

ゆうちゃんの胸の上で口を開く。

「………なに?」

泣いてるみたいな声でゆうちゃんが言うから、思わず頭を上げてゆうちゃんを見た。
泣いてはいない、けど、眉間にはものすごく深いシワが寄っていた。泣いてないのに、泣いてるみたいな顔。

 

「ゆうちゃん、あの、あの…」

何から言えばいいか分からなくて、意味のない言葉を口にのせていた。
ゆうちゃんの眉間のシワが、より一層深くなっていく。


「まきちゃん、なに?怖いよ…。
嫌な話、聞きたくない、怖いよ…」


その言葉で踏ん切りがついた。
ゆうちゃんを怖がらせているのは、私だ。

「ね、ゆうちゃん、お金がたまったら、嬉しいと思わない?」


口をついてでたのは自分でも意外な一言だった。自分でもこのタイミングでなんでこんなことを言ったのか分からなくなる。

でも、これに続いていく言葉はわかっている気がした。
私が伝えたいこと。


「う、うん…。嬉しいよ」

目を閉じたまま、ゆうちゃんが困惑気味に返事をする。そりゃ困惑もするだろう。
でも、あれほど深かった眉間のシワが消えている。


「お金がたまってさ、私が親にお金返してさ、」


私は親に借金がある。
大学の学費。
だからいま家を出るわけにはいかない。


「そんで自由になったら、その…い、一緒にく、暮らし…」


行ってて恥ずかしくなってきて、だんだん声が小さくなる。涙まで出てきた。

「…暮らしたり、しようね」


涙でぼやけてるけど、ゆうちゃんが目を開けてこちらを見ているのが分かる。
びっくりしたのかワンテンポ遅れてえへへーって笑って、ぎゅーって抱きしめてくれた。


「まきちゃんさ、なんか怖いこと言うんだと思ったよー。あんまり会えなくなるとかさ!お腹がきゅーってなっちゃったよ!」

そんな風に笑ってくれるから、涙が止まらない。

「私だって帰りたくないよー」

ってなぜか的はずれなことを言って泣いていた。



「まきちゃんも帰りたくないんだねー。
いいこいいこ」

そう言って頭を撫でながら私の耳に口を寄せてないしょ話みたいに、

「じゃあ帰らなきゃいいよ!」

ってまた言ってて、思わず私も笑った。



そのあとは駅まで送ってくれた。

薄着で帰ろうとする私に、パーカーを貸してくれる。

「大丈夫かな?私服と合ってる?」

って聞くと、


「今からは帰るだけなんだから!風邪引かないほうが大事なの!」

ってお母さんみたいなこと言ってて笑えた。優しいひと。



帰り道は手を繋いだ。
大雨だったお昼とはうってかわって夜空がきれい。
涼しい風が吹いていく。


ふたりで笑いながら歩いた。
私はこうして生きていこう、ってそのとき強く思った。


一緒に暮らそう


そう言っただけだけど、私にとってはプロポーズくらいの気持ちだった。

考えてみれば、ものすごく独りよがりな言葉でもある。
ゆうちゃんの状況なんか完全無視で、お金がたまったら一緒に暮らそう、だなんて。

でもいいんだ。
私の気持ちはこうだよ、って伝えられてよかったし、私ももう大人だ。
大人になったんだから、一番好きなひとの手をとって、ふたりで一緒に暮らしたい。
大人になったんだから、それくらいのわがままを言ったっていい。


そのためには、今頑張らなきゃいけないのかって少し気が重くなったんだけど、それくらいの重さが逆に心地よかった。
少し位の重みがなきゃ、すぐに私はふらふらサボっちゃうから。


思い込まず、
思い詰めず、
明るく、軽やかに。


自分にはそう言い聞かせてゆうちゃんには押し付けないように。


そうやって暮らしていきたいなぁって、帰り道、ゆうちゃんと他愛ないことを喋りながら考えていた。



ハネモノ
作詞作曲/草野正宗

水の都の八重桜



こんばんは!
日曜に会ったときのこと!
シモ表現あります、注意です。


話題:ずっと一緒にいたい



この日はふたりで前から行こうねって言ってた造幣局の通り抜けへ!
大阪ではかなり有名な桜の名所なんだけど、ゆうちゃんも私も初めて。


「散ってたらどうする?」
「どうしよー!わー!ここが造幣局よー」
「ぎゃー!全然咲いてない!」


とかハイテンションではしゃぎながら歩き続ける。
その日は生憎の雨降りで、ふざけて水溜まりを走り抜けた私の足に泥がはねまくって、

「ぷっ、まきちゃんワンパクな足ー」

ってゆうちゃんに笑われてしまった。




造幣局の中はかなりの人手だった。
傘と傘がぶつかり合う。
写真をとるのにもみんな一苦労していた。

でも 雨の中で見る桜もやっぱり綺麗だったし、風で桜が散るのも思わず立ち止まってしまいそうなほど。


「まきちゃん、傘閉じてこっちおいで」

そうゆうちゃんが言ってくれたので、相合い傘で桜を見たりもした。



造幣局の周りでは 屋台が所狭しと並んでいた。
たくさんの人の声。
美味しそうな匂いが 雨の匂いに混じっている。


「ねーゆうちゃん、金魚すくいだよー」

「ほんとだね、やりたい?」

「うーん、多分金魚飼えないからなー」

「そっかそっか、あっ、亀すくいだって」

「あぁあー!すくいたいー!」



屋台と屋台の間の狭い道、傘や人の間を縫ってゆっくりゆっくり歩いていく。
傘の内側でおしゃべりをしながら。


土手焼きを買って屋台のお店の椅子に座ったときには、ふたりとも少し疲れぎみだった。


ゆ「このあとどうするー?」

私「うーん、通天閣に行ってみるか、ゆうちゃんちに帰るか…」

ゆ「うー、今日は帰ろっか」

私「うん、そうしよー」



ということでそのまま駅へ向かったんだけど、とにかく雨風がすごかった。
ふたりとも傘を斜め前につきだしながら歩かなきゃいけないくらい。


「ゆうちゃん、帰ったらお風呂入ろう」

「そうしよ!このままじゃ風邪引くよね」

「ねー」

 

そのまま電車に乗って、帰り道。


「もうだめ、ご飯作る気力もないー」

ってふたりで口々に言い合って、出来合いのものを買い込んで、ふらふらになりながら帰った。


帰ると、ゆうちゃんがお風呂を沸かしてくれた。
その間私はベッドでごろごろ。

「お風呂わいたよー」

ってゆうちゃんが私のもとに来て、ごろごろし続ける私の頬をなでる。
薄暗い部屋。
お風呂から漏れる明かりがぼんやりとそこらへんを照らしていた。


「座って、ばんざいしてー」


ゆうちゃんの言葉に子どもみたいに従うと、優しく優しく服をぬがせてくれる。
ストッキングと下着まで脱がせ終わると、それを丁寧にたたみながら


「先お風呂入ってて!」


ってゆうちゃんが言う。
そのままお風呂場へ向かった。


浴槽を跨ぐとき、まだゆうちゃんは来ていないのになんだかすごく恥ずかしい気がした。
お湯の中に座ると、疲れが足の裏から溶け出していくみたいにジーンとする。


じきにゆうちゃんも入ってきた。
たくさんのお湯がざばーって溢れる。
肩から鎖骨のラインがごつごつしててすきだなぁって見てた。


ふざけて手で水鉄砲を作ってゆうちゃんにかける振りをすると、

「反撃していいのー?」

ってゆうちゃんがニヤリ。
水鉄砲の手の形を作って、そのままそれをそっと持ち上げる。


「あかん!反撃したらあかん!」

「冗談冗談、もうこんな上まで持ち上げたんだから水入ってないよー」


にこって笑うゆうちゃんに安心して、

「あ、そうなんやー」

って言うと、そのまま顔にビシャってお湯がかかった。
ゆうちゃんからの水鉄砲攻撃!


「まきちゃん油断してたやろー?
僕さ、手の中に水溜めとけんねん!」


ゆうちゃん、ものすごく得意げ。


「ぎぎぎ、私もしたい!」

「そう?あのね、こうして手をギューって引っ付けてねー」


そのあとゆうちゃんに水の溜めかたを教えてもらったけど、なかなかうまくできなかった。


ひとしきりはしゃいだあとキスをした。


お風呂の中でするキスが好き。
熱くて、いつもより舌がもったりしてる感じがする。

そのまま、嫌らしい感じ…。
身体を洗うとき、ぬるぬるしてお互いの身体が滑って気持ち良かった!




「のぼせたー…」

「ね、私もー」


そんな風に言い合いながらベッドへ。
そのまま押し倒されて、セックスをした。

抜いて中断して眠ってまた入れて…って何度も繰り返した。
だいぶいやらしいセックスだった。


セックスの途中で、口移しで炭酸のオレンジジュースを飲ませてくれる。
少しずつ入ってくる甘いシュワシュワ。
喉の奥で少しずつ少しずつ弾けていった。


そのままふたりで抱き合って眠った。



起きると、ゆうちゃんはまだ寝ている。
お腹すいたなーって思って、ゆうちゃんのジャージを借りて晩御飯の準備。

とはいっても出来合いのものばかり買ったから、私がしたのは餃子を焼いたことだけ。


「ゆうちゃん、餃子焼けたよー」


と言うと、ゆうちゃんものっそりと起き上がってきた。


「…ぼく焼売やく…」


だいぶしんどそうだったけど「大丈夫!」とのことなので焼いてもらうことにした。


ふたりでご飯を食べ始める頃には、ゆうちゃんも元気を取り戻していた。


「まきちゃん、今日泊まってくよねー?」

なんて言って笑ったりして。


「いや、今日は無理そうなんだよね」


って言うと、悲しそうにしてたけど。




すみません!
字数の関係で今日はここまで。
続きはたぶんあした辺りに書きます。


 

日々、あなた想い



こんにちは!
今日は午後からゆうちゃんと会う予定。
その前にこの間のことを更新!


話題:あーもー、好きだー


明るい陽のさしこむ日。
ふたりでベッドでごろごろ。
私は手首をがじがじ噛んでいた。
これがなかなかおもしろい。
力をいれてぐーっと長い間噛んでみると、深く歯形が残った。


「ゆうちゃん、見て見て!歯形!」

「えっ、なにー?うわ、なにそれ!」

「えへへ、歯形ー。ひゃっ、なぁに?」


ゆうちゃんが私の手首をそっと掴む。


「なにしてんの、まきちゃん!」

「いや、そんな…」

「痛かったでしょ?こんな跡つけて」

「あんまり痛くないよー」

「痛いよ、こんなの!」

「…………」

「ね、噛むなら僕の手首にして。
まきちゃんの手首は噛まないで」



あはは、なにそのセリフーって笑おうとしたけど、ゆうちゃんがあまりに悲しそうな顔をしてたから何も言えなかった。
「ごめん」って言おうとしたけど、なんとなくそれも言えないままで。


 

ぎゅうって抱きしめて頭撫でてくれた。優しく優しく。

恥ずかしくなって

「ほら、痛そうやろー」

って手首に残った歯形を見せると、

「ひゃー!見せないでー!」

って笑ってた。



その後はかわりばんこでごはんを作って半分こして一緒に食べた。
ふたりとも、笑って。



ご飯が終わった後はだらだら。
ゆうちゃんは窓際に座ってパソコン。
私はゆうちゃんの膝枕で寝ころんで本を読んでいた。

開いたカーテンがひらひら揺れる。
下から見るゆうちゃんの腕、顎の線、窓から見える晴れた空。

時々ゆうちゃんが頭を撫でてくれる。
私も手を伸ばして、ゆうちゃんの背中を撫でたりしてた。



そんな風にすごしていると、風に乗ってなんだか懐かしい匂い。
ゆうちゃんの鼻もすんすんいってて、ゆうちゃんも匂いに気付いてるのがわかった。

「ねーゆうちゃん、いい匂いだねー」

「そう?なんか変な匂い」

「嗅いだことあるんよな、絶対」

「そうそう!なにかなぁ、これ」

「んー、あ、わかった!」

「えー、まきちゃんずるいなー」

「なんか燃やす匂いや!これ!」

「あー、あー!ほんまや!」

「ふふ、いい匂い」

「いい匂いかなあ、これ...」




そのまままたふたりで黙って別々のことをしていた。

ゆうちゃんが脚を動かそうとする度に私は頭を浮かせてたんだけど、その度にゆうちゃんは私の頭をそっと押さえてくれてた。
動かなくていいよー、みたいな感じで。


それが嬉しくて楽しくて、私はわざと頭を動かす。
しまいにはゆうちゃんも気づいて、

「まきちゃんなんなんー?」

って笑って私の頭をくしゃくしゃーってしてくれた。
ふたりでふざけあってると、


「いっ………た!」


頭を動かしすぎてテーブルで頭を打ってしまった。

「わぁぁぁあ、まきちゃん!」

その瞬間、身体を折り曲げて私の頭を大きな手で包んで撫でてくれる。

「大丈夫?大丈夫?痛かったねー」


大げさに心配してくれるのが嬉しくて、私も大げさに、

「痛いよー痛いよー」

って言ってみた。
そのあと、「うそー、もう痛くないんよ、えへへへ」ってふざけると、

「もう!しょうがない子やなー
じっとしときなさい!」

って優しく頭ぽんぽんして笑ってくれて、私はまた嬉しくなった。


 
しばらくして本に飽きて、辺りを見回してみる。
床にサインペンが落ちてるのを見つけた。
手にとっても色んな方向から眺めてみる。

普通のサインペン。
小中学校なんかでは、「名前ペン」って呼ばれてるようなやつ。
上と下両方にキャップがついてる。

そんな普通のペンなのに、ゆうちゃんはこれ使ってるんだなーって思うとなんか特別な物に思えて楽しくなってきた。


キャップを開けて匂いを嗅いでみる。
頭がくらりとするような匂い。
この匂いもだいすき。
しばらくその匂いを楽しんでいると…、


「わっ」


ゆうちゃんが脚を動かした瞬間、私の鼻先をサインペンが掠めていった。
サインペンが鼻についた感触。



「まきちゃんどうしたん?」

「ゆうちゃん見て見て!鼻に黒いのついてる?」

「わっ、ほんまや、ふふ、着いてるー」

「サインペンが…」

「ほんまや!それ油性やで!」

「どんな顔なってるー?」


ゆうちゃんの渡してくれた手鏡で顔を見てみると、確かに鼻にちょんと黒い跡。

「ぷぷ、おもしろ」

「えー、油性やのに、大丈夫かな…」

「大丈夫!ほらゆうちゃん、見て!爪でごしごししたらとれたよー」

「ほんまやね、良かったー!
……でもちょっと残念。面白かったのに」

「なんやそれ!ゆうちゃんにもつけてあげよかー?」


そう言ってふざけてサインペンをゆうちゃんに向けると、「やだやだ!僕に書いても僕は見えないからおもしろくないもん!」ってゆうちゃんが笑った。




「でもまきちゃん、なんでサインペンなんか触ってたん?しかも鼻に…」

「いや、匂い嗅いでて」

「なんやそれ!」


夕闇に 薫る髪 春の風




話題:SEX



セックスのあと抱きしめてくれた恋人の髪がしっとりと濡れていて、「あぁ、暑い季節がもうすぐ来るんだなぁ」って改めて実感した。

春が来たこと、その次に夏が来ること、それを知ってはいたんだけど。




最初から下ネタですみません!


最近はなかなか忙しくて、会えない日が続いてました。
そんな中会った日のこと!


ふたりで動物園へ行ってはしゃいで、帰り道には川辺を歩いて 風の中を降りてくる桜の花びらを立ち止まってじっと眺めたりして。


家に帰って性急にセックスをしたあとふたりで眠った。
最初は抱きしめてくれていたんだけど、起きてみるとゆうちゃんがこちらに背中を向けていた。


その背中に抱きついてみる。

ぎゅうって抱きついてそのままぼんやり過ごしていると、ゆうちゃんが起きたのか、「背中気持ちいい…」って寝起きの声で言った。




そのままふたりとも黙っていた。
お昼動物園にいた頃には暑いくらいだったけれど、夕方になればやはりまだ冷たい風が吹いている。
窓の外には、春の宵らしく暗い蒼から黒のグラデーションみたいな空。


裸の脚と脚をぴったりとくっつける。
窓から入る冷たい空気が脚にあたって気持ちいい。


車やバイクの音、人の話し声なんかが近づいては離れていく。
窓の外の蒼が部屋のなか全体に広がっていく。



しばらくの間黙ってそうしていたら、なんだか急に現実感がなくなっていった。
うまく言えないけど、すべてがあやふやになっていく感覚。
どんどん小さくなって、なにかに吸い込まれていくような。


怖くなってゆうちゃんにさらに強くしがみついてみる。



「ゆうちゃん、」

呼んでみると、

「なぁに?」

ってゆうちゃんが笑った気配がした。




その瞬間に、全てを取り戻した気がした。

恋人の髪の甘い匂いに混じった汗の匂い、恋人の肘のこつこつした骨の感触、恐竜みたいな背骨、通っていく電車の音。


嬉しくなって、

「なんもない!」

って言ったあと ゆうちゃんの乳首に手を伸ばして弄ってみると、


「もう、まきちゃんのエッチ!」


ってゆうちゃんが言った。
私の大好きな声で。

酔っぱらいふたりぐみ


こんにちは!
前回の続き!
酔っぱらい注意です!
今は反省してますので…←
しかし、もう一週間前の話ですね。

話題:恋人×お酒


桜を見ながら熱燗…。
そんなシチュエーションで、いつしかお酒を飲みすぎていました。



↓以下、私の酔っぱらいぶり↓



・「ゆーうちゃん!カラオケ行こ!」ってからむ


・広い道路の真ん中を指さして、「わたしこっち通りたいよー」って騒ぐ


・空き地を見つけて

私「なんだ、この無駄なスペースは!
無駄じゃんかー!いらないよね?」

ゆ「空き地だねー、まきちゃんおもしろ、プププ」

私「無駄無駄無駄無駄ァ!」

ゆ「うん、そうねー」

私「まぁまぁ、無駄なスペースがあってもいいじゃない、ゆうちゃんもそんなに怒んないで、ね?」

ゆ「えっ?なんか役割交代してる?
ま、いっか。こんなスペース無駄じゃんかー!いーらーなーい!」

私「プププ」



・カラオケでジョジョ立ちしながら歌う

・謎の踊りを踊りながら歌う




・同じくカラオケで

ゆ「君を愛してる人がいる〜♪」

私「はい!はい!私立候補!
ゆうちゃんを愛してる人に立候補する!」

ゆ「もー、なにそれー^^」


・さらにカラオケで、土足でゆうちゃんの太ももに足をのせて休憩する。


・カラオケ後のコンビニで、

私「テーイクオーンミー♪
テーイクミーオーン♪
トュルットュルル、トュー♪」

ゆ「熱唱か!」

私「あたしゃね、ここでは歌うことにしてんだよ!」

ゆ「なんやそれ!」


・同じくコンビニで

私「ア○ーバピグ♪
リピートアフターミー!
ア○ーバピグ♪」

ゆ「ピグ!」

私「なんでピグ!しか言ってくれないんじゃ!全部してよー;;」





…とまぁ、ざっとこんな感じ。
ものすごい絡み酒ですね。
反省、反省。



コンビニでふたりでひとつの温かいお茶を買って、ふたりでお金を出しあって。
それでふたりともきっちり小銭がなくなって、それだけのことで爆笑した。


お茶を飲みながら歩く。
アスファルトを踏みしめる感じが妙にリアルな気がして心地いい。



私「ゆうちゃーん」

ゆ「んー?」

私「今日さ、楽しかったねー」

ゆ「うん、すっごい楽しかった!」

私「あのね、わたしね、今日のこと、絶対一生忘れないよ!一生ね」

ゆ「なにそれ、まきちゃん」
(なんか悲しそう)

私「それくらい楽しかったってことよ」

ゆ「ほんと?それならいいんだけど…
ふふふ、一生レベルってことね」

私「ええ、三本の指には入りますね」

ゆ「ええ、一生のですね、」

私「そう、一生の」



ふたりでしょうもない話をしながら進んでいく。それこそ、一生しょうもない話をし続けられそうな気分だった。


私「酔ってる時ってさぁ、まっすぐ帰りたくなくならない?どっか寄り道したくなる感じするー」

うう、寒ーって肩を震わせてから、そうだね、寄り道しよ!ってゆうちゃんが笑う。
 
寄り道に選んだのは、私の家の近所の公園。ここには大きな大きな桜の木が三本ほどあって、ベンチに座ると目の前一面が桜の花で埋め尽くされるほど。

山の中の公園で、夜ということもあってか、全く人の気配はない。
ただただ、甘いような、それでいてどこかすっぱりような匂いが広がっている。
暗闇のなかで桜が光りながら浮かび上がっているように見えた。


酔っぱらった私はゆうちゃんの太ももに頬をのせて倒れこんでいた。
熱い頬っぺたにゆうちゃんのジーンズの冷たさが気持ちいい。



私「きれいだねー」

ゆ「ね、桜ってなんか知らんけどいいよね」


ゆうちゃんが髪を撫でてくれる。
そのあとはまたしょうもないことをぽつぽつしゃべっていた。


そろそろ行こうかってふたりで言って、私が起き上がった瞬間にキスをした。

だんだん深くなりそうなキス。
とろりと入ってきた舌に私が身を固くしていると、

ゆ「ぶぶっ…ふふふふ」

なぜかゆうちゃんが身体を離して吹き出した。


私「えっ?なに?なんで笑ってるの?」

ゆ「だってまきちゃんの口のなか、めっちゃお酒の匂いするんやもん!
カラオケでアセロラジュースも飲んだし、そのあとお茶も飲んだのにさ、ぷぷ、変なのー」


もー、しょうがないじゃん!って言いながらわたしも笑った。



公園のなか通って帰ろ!ってゆうちゃんが私の手をとって立ち上がる。


私「えー、この公園山の中だしすごい暗くて怖いよ?ゆうちゃん大丈夫?」

ゆ「大丈夫だよ!
これまで僕がなんか怖がったことある?」

私「なんやそれ!いっつもなんでも“こわーい”って言ってるのに?」

ゆ「聞こえない!全部聞こえないよー」



案の定公園の中は怖かったらしく ゆうちゃんの手は震えていたし、ほとんど「怖いよー」しか言ってなかった。
そして公園を出てもそれは続いた。


私「ほら、公園出たよ!」

ゆ「公園じゃないとこも怖いよー;;」

私「あっちの道から帰る?」

ゆ「やだ、あっちの道怖いもん;;」

私「あっ、ほら桜だよ」

ゆ「桜こわーい;;」

私「桜こわくないでしょ、きれいでしょ、ほら、いっぱいあってきれいだねー」

ゆ「いっぱいあるから怖いんやんか!;;」

私「なんでやねん!あっほら、月出てるよ!おぼろ月だね、きれいだねー」

ゆ「おぼろ月も怖いよ;;」

私「はいはい、あっ!ほら、いつも通る知ってる道に出たねぇ、これで怖くないね」

ゆ「知ってる道…こわー;;」

私「結局なんでもこわいんやん!」



えへへってゆうちゃんが笑って、そろそろうちの家の前。
もじもじしてるゆうちゃんがかわいくって、抱きついて背伸びしてキスした。
また、ゆうちゃんが笑った気配。


ゆ「ね、まきちゃん、ぼく今日楽しかったよ。一生忘れないよ」

さっき私が言ったのと同じ言葉。
言われてみるとなんだか怖い。
ゆうちゃんがいなくなっちゃうみたいな感じがして。

私「なにそれ、こわー;;」

ゆ「でしょ?なんか寂しくなるよね;;
だからもうこれは言うのやめとこ?」



ゆうちゃんの言葉に頷くと、ゆうちゃんが優しく頭を撫でてくれた。


ゆ「帰り道怖いから、家入ったら電話して!おしゃべりしててね;;」


って言いながらゆうちゃんが坂を下りていく。その姿をずっと見ていた。



このあと電話したお話はまた次に!

 
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