スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

つなむくのようななにか

幸せにしたい。彼はそう言って僕の手を取ったから、さっきから僕の手のひらはあたたかい。
あたたかいのだ、彼は。いつも陽だまりのような髪を揺らして、蜂蜜のように笑うから、僕にはなかなか消化できない。
「エゴですね」
僕は手のひらをあたためられながら言う。
それはエゴである。僕は幸せなんて知らなくていい。
僕は陰で生きていくから、君が勝手に幸せになりなさい。
「知ってる」
頷くけど、彼は手を握ったまま放してくれない。
いつまで経っても甘い蜂蜜は僕の舌には合わないままで、とうとう僕がその手を握り返すことはなかった。

嶺二夢だと言い張る

君に歌ってあげたかった曲。車の中で聴いた曲。君がふと口ずさんだ曲。君が好きだった僕の歌。僕にくれた君の歌。
全部ね、全部まだ聴けないんだ。思い出してしまうから。
嬉しそうな君の顔。泣いた時のぐしゃぐしゃの顔。辛いのに頑張ってる時の顔。まだ諦めたくないって強い顔。
傍にいたいって、泣いた顔。
何も悪くなかった。僕も君も。
ただ小さな小さな綻びが、どんどんどんどん大きくなってしまっただけ。
ちゃんと好きだったし、ちゃんと好きでいてくれてた。
だからまだ忘れられないんだ。
すぐに思い出してしまうよ。
初めて手を繋いだ公園。立ち止まって見上げたツバメの巣。寄り添いながら帰った冬の道。車で送った君の家。
何度も何度も、確かめるようにキスをしたこの部屋だって。
苦しいと思うのは君を愛した証拠で、なのに僕はいつまでも立ち止まって足踏みをするの。
さよならって言ったのは僕なのに。
君の涙を忘れられないんだ。
離れたいと願ったのは僕なのに。
動けないよ。愛してるよ。

でぃのむく


 痛みには慣れていた。どんなことでも我慢できた。だけど快楽にはなかなか慣れることがなくて、慣れた頃にはもう都合がつかなくなっていた。
 ボンゴレの兄貴分だかなんだか、所詮はマフィアでしか無いのだからと思っていたけれどマフィアである前にただの男なんだと今になって思う。彼はいつだって情欲をもってしか僕に触れてこなかった。

「恋人じゃなくていいよ」

 彼はそう言ったけど、僕自身別にそれでも良かったのは嘘じゃない。そうじゃなくてもいいのだけど。ひと月ぶりに連絡が取れてもそっけない返事で後ろには女の気配。

「待てなんてできないんですけど」
「んー」
「あなたがバカな猫にしたんですから少しは責任とってくださいよ」
「悪かった」
「また違うお姫様たちとダンスですか?」
「わがまま言うなって」

 なんと、僕はわがままらしい。今までそんなこと思いもしなかったけれど、彼がそう言うのだからそうなのだろう。愛してるって言ったくせに。やっぱりマフィアなんて、大人なんて嘘ばっかり。自分の都合ばっかり。
 あなたなんて嫌いですよ。自分勝手に飼い慣らしたくせに。せめてくずかごに捨ててくれれば諦めもつくのに。
 少しだけ幸せというものに憧れていたのに。






完全にSPELL MAGIC(
でぃのむく初めて書いたけどディーノさんはこんなひどい男じゃないと思う。

タイトルなし


 雨が降る。
 さっきまで日の差していた空には灰色の雲がどこまでも重く垂れ込んでいる。隣りを歩く彼女もどことなく憂鬱そうに空を見上げていた。

「寒いのに、ね」

 僕は取り繕うように言葉を紡ぐけど、彼女は依然として無言なままだ。何を怒っているのかな、なんて、考えなくても分かるのだけど。

「これからもっと寒くなるね」

 彼女はずっと前を向いている。俯くことはけして無い。

「ちゃんとあったかくするんだよ」

 僕も前を見て、信号の赤色を捉えて立ち止まる。

「寂しいなんて言っちゃダメだからね」

 赤い色が青に変わって僕は歩き出す。彼女は止まったままで、二人の距離はどんどん開く。
 これでいい、このままでいい。僕は振り返らないし、一歩ずつ彼女を忘れてく。
 春も夏も秋も冬も、泣いたり笑ったりした僕らの思い出がどんどんどんどん薄れてく。
 それは君も、きっと同じで、

「ばっかじゃないの」

 控えめに、だけどしっかりと服を掴んだ彼女の声が、泣いているように聞こえた。

「寂しいって思ってんのはどっちなの。そんな顔してバイバイなんてどの口が言うの」

 だって、

「だって寂しいもん」
「泣くなバカ!ちょっと引っ越すだけじゃん!」
「でもお隣に住んでたのに」
「あんったほんとばかだよね!」
「寂しいよぉ」
「はいはい、大好きだよ」
「うんっうん!」



っていう。
たぶん幼馴染み同士付き合っておうち隣だったのに男の子の方が都会の学校受験して引っ越してくんだと思う

道日!

 がたん、ごとん。規則正しい振動が眠気を誘う午前0:30。終電に乗れて良かった。と道明寺は軽く息を吐いた。
 潜入捜査だなんていいように言われて出向いた先はホームセンターでのアルバイト。連日の力仕事に道明寺は心底参っていた。それなのに忘年会がどうとかでこんな時間までつきあわされて……

「あんなとこにストレインなんていねぇよ……」

 もう一度大きく息を吐いた直後、最寄駅に停車した。降りる人の波に乗って外に出ると息が真っ白に濁った。
 寒い。外はすっかりクリスマスモードでキラキラしたイルミネーションがそこら中をかがやかせる。通り過ぎるカップルがはしゃいで、追い越して行った子供は父親にキラキラで綺麗だと、その輝く目を向けていた。

「ただの電球じゃん」

 ただの電球。電球がいろんな色に光ってるだけ。確かに綺麗かもしれないけど別に、さして興味もない。
 ふぅ、とまたひとつ息を吐く。疲れが溜まってしまって溜息ばかりだ。思いながら改札を出た。
 ちくしょう。雪だ。傘なんて持ってないのに。
 仕方なく雪が舞い落ちる中へ足を踏み出すと、

「道明寺さん!」

 知っている声に呼ばれた。

「日高!?お前何やって」
「おかえりなさい、道明寺さん。あんた寒いのになんでコートだけなんすか。鼻真っ赤だし」

 くく、と笑って自分のしているマフラーを巻きつけられる。その手はとても冷えていた。

「なんでいんの」
「迎えに来たんすよ」
「なんで?」

 言ってから気づいた。残念ながらもう日付は変わってしまったけれど、どうやら彼は怒ってはいないみたいだ。

「ごめん、忘れてた……」
「いーっすよ。道明寺さんここんとこずっと忙しかったし」
「うん、」

 帰ろうかと傘を掲げた右手を掴む。やっぱりとても冷えていた。

「おめでと。好きだよ」
「はい。ありがとう道明寺さん」

 少しだけ、イルミネーションが綺麗だと思った。




日高おたおめ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
遅くなってごめんね!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
前の記事へ 次の記事へ