人生とは、何とすばらしい冒険の数々で、その連鎖で成り立っているのだろう!




しかし、結局、生きることそれ自体が、途方もなく素敵な大冒険に他ならない。

そうではないだろうか。

それは興奮や歓喜、悲観や希望、退屈や忍耐、安堵や落胆、驚愕や恍惚(こうこつ)、幸運や不運とともに、

終わりが見えないまま書き継がれていき、また読み継がれてゆく、

大きな大きな、手に汗握る、痛快無比の物語そのものなのではないのだろうか。

迂回だの、寄り道だの、道草だの、出会いだの、別れだの、

複雑に絡み合った大小無数のエピソードから成る、

てんやわんやの、ごったまぜの、てんでばらばらの、しどろもどろの、やけのやんぱちの、

しっちゃかめっちゃかの物語 ― その途切れることのない滔々(とうとう)たる流れのただなかを、

わたしたちは皆、泳ぎながら、溺れながら、為すすべなく押し流されてゆく。

何が何やらわけがわからないまま、泣いたり笑ったりしつづけ、沢山の愚かなことを仕出かし、

ほんのちょっぴりは賢いこともやってのけ、そのうちいつしか日々が過ぎ、歳月が経ってゆく。

人生とはそういうものではないだろうか。

それはどんどん先を読みたくて、でも読み終わってしまうのがもったいない、

そんな素敵な物語のことなのではないだろうか。



松浦寿輝さん「川の光2」より。

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