異空間・元老院――
「そろそろ茶番劇、終わりにしないか?退屈なんだけど。ネオメギドもこうさ、撃破されちゃあな〜」

そう切り出したのは禹螢(うけい)。元老院の長・鳶旺(えんおう)は察していたのかという反応。


「ならば好きにしなさい。紀柳院鼎の能力(ちから)、そろそろ奪える段階まで来たようだな」
「今までのが全て茶番だなんてあっちは気づかないだろうねぇ?計画遂行のためなら非情な手を使うまで」

禹螢は十分、非情かと…。鳶旺も大概だが。



禹螢は何の前触れもなく、本部を襲撃。禹螢はヘラヘラしながら鼎を探す。

「出てこいよ、紀柳院鼎」


本部では禹螢に銃撃などするが、全然効いてない。宇崎から全隊員に通信が。


「相手は上級メギド並みかそれ以上の怪人だ。いいか、無理して攻撃しなくてもいい。逃げるのも手だ」
「鼎が狙われてんだぞ!?逃げろって…」

御堂が聞き返す。宇崎はこう答えた。
「鼎は既に本部を出ている。晴斗・御堂・彩音は鼎を探しつつ、彼女を守れ」
「了解。…って、いいのかよ」



鼎は霧人のバイクに乗せられ、本部を脱出。

「霧人、ありがとな」
「感謝するのはまだ早いぞ。敵が追ってくるかもしれんだろ」
「…そうだな」


バイクはある場所に到着。そこはゼルフェノア直属施設だった。見た目は全然わからない。
そこはかつて鼎が匿われた場所。

「ここは…」
「室長からここにいればひとまず安心だと聞いたんだ。鼎は久しぶりになるんだっけ」
「あぁ…久しぶりだよ」


ここ…彩音と出会った場所だ。心を閉ざした私に話しかけてくれた――


鼎はその施設の扉を叩く。すると連絡を受けたゼノク隊員が出てきた。

「紀柳院さんですね。話は聞いてます。一時しのぎになればいいんですが…」
「すまない」



鼎は施設へと入る。常駐しているのは看護師なのは変わっていないのか。組織の人間はノアからゼノク隊員に変わった以外はほとんど変わってない。

「私たちも紀柳院さんを守りますから」
「…ありがとう」



本部では禹螢との激戦が続いてる。禹螢はあることに気づいた。

紀柳院がいない…?どこにもいない!?逃げられた?


禹螢は攻撃をやめ、ある場所へと向かう。晴斗達は禹螢を追うことに。

「待てーっ!」
「ヤバい、本部に鼎がいないことがバレてる」


禹螢は姿を消した。



組織直属施設。鼎は嫌な予感がした。この感覚…奴が来るのかもしれない。


「この施設には入居者がいるのか?」
「いえ…今は避難させてます。入居者は数えるだけです」
「禹螢が来る…」

鼎はそう呟くと制止を振り切って施設を出た。この場所に被害を出したくない。禹螢が私を狙うならば、正面から戦ってやると。そう、決意したのであった。


鼎はブレードを抜刀。そしてとぼとぼと歩いていく。


彼女は人気のない公園のような場所に着いた。ここならば、被害は最小限で済む。


禹螢は鼎の姿を捉えた。見つけた…!
禹螢は鼎に急接近すると、顔を近づける。


「また会ったな、紀柳院。今までのは茶番だ、本気で行かせてもらう」
禹螢は怪人態へと変貌。一気に攻めていく。

「能力をよこせ」
「断る!」
「だろうなぁ。紀柳院、あんたの素顔また見せて貰おうか」


禹螢怪人態は強引に鼎の仮面に手をかける。禹螢は鼎の仮面を執拗に狙いつつ、肉弾戦で攻撃。
鼎は攻撃を受け、うめき声を上げる。

「いいぞ…もっと苦しめ」
禹螢怪人態は鼎の仮面の呼吸穴を塞いだ。視界もさらに遮られ、思うように動けない。

「やっぱりな。視界が遮断されてしまえばいくら能力持ちでも無理なんだな。仮面姿が災いしたな、お前」

「離せ!その手を離せ!!」


鼎は必死に抵抗する。禹螢は器用に攻撃していた。片手で鼎の仮面を塞ぎつつ、もう片手で殴りつけたり蹴りつけたり。鼎は知らない間に壁へと攻められていた。逃げ場がない。

禹螢はいたぶり、苦しむ鼎を見て楽しんでいる。快楽を味わっているようだ。


「どうした?反撃しないのか?」
鼎はそれどころじゃない。禹螢に攻撃を受けたせいでじわじわボディーブローが効いていた。

こいつに反撃したいが、視界が遮断されたのと一方的に攻撃を受けたのでは…。禹螢の攻撃はさらにエスカレート。


「いいもん持ってるな〜、お前」
禹螢は鼎が持ってるブレードを見た。そして、無理やりブレードを強奪。

「鷹稜(たかかど)を返せ!」

鼎はなんとか鷹稜を取り返そうとするも、禹螢は反撃の隙を一切与えず鼎のブレードで彼女を切りつけた。


「うっ!」
「どうだ?自分の刀で斬られた気分は」

鼎は違和感があった。どこを斬られたのかわからないが、流血していた。恐らく腹部を斬られたのか?



晴斗達は鼎を探すも、鼎が攻撃を一方的に受けている状態なため通信も遮断されている。
宇崎は鼎に呼び掛けた。

「鼎、鼎!聞こえるか!?どこにいる!?」


呼び掛けも虚しく返事はない。宇崎はメインモニターを切り替える。
GPSで場所の特定を急ぐ。場所が出てこない。どういうことだ?


これは禹螢が妨害していた。禹螢は怪人態になるとジャミングなど、電子機器に介入可能になる。
禹螢は鼎の端末に妨害をかけていた。つまり…助けが来ない。



禹螢は一旦、鼎の仮面から手を離した。鼎はかなり息を切らしていた。
ダメージを受けたことにより、消耗が激しくなっていた。


「まだまだ行くぞ」

禹螢は鼎のブレードで鼎をさらに攻撃。なんとか避けるも、体力の消耗が激しいせいか力が出ない。ブレードも奪われている。

鼎は必死に肉弾戦と銃で応戦するも、圧倒的に不利。だんだん消耗していく体力。奪われた鷹稜、鼎は禹螢に追いつめられた。


「今までのは全て茶番だったんだよ。あんたの能力を奪うための仕上げにね」


仕上げ…だと…。


鼎は絶望。禹螢は容赦ない攻撃をし、鼎はついに倒れる。

「悪いな、元老院の計画遂行のためなんだ。あんたの能力…頂くよ」
鼎は声すらも出ない。流血しているせいもあるが。

禹螢は人間態に戻り、そっと鼎の鎖骨付近に手を触れる。何やら淡い光の球体が禹螢の手の中に。


「頂いたぜ、あんたの『攻撃無効化』の能力(ちから)。あとはお前に用はない、用済みだ」

そう言うと禹螢は立ち去って行った。



残された鼎は痛みに悶えながらもなんとか立ち上がる。端末はジャミングされてて使えない。
晴斗達に居場所を伝えなければ…。とにかくこの公園を出るしかないが、歩けるだろうか。

しかも、ブレードまでもが奪われていた。どうすれば。



鼎はよろよろと歩き始めた。斬られた傷口を押さえながら、ゆっくりと。血はポタポタと落ちているのがわかる。

ダメージの影響で時々咳こんでいた。



晴斗達は鼎を捜索中。

「鼎さーん、どこなの?鼎さん!?」


御堂と彩音も躍起になる。

「あいつ、うまく逃げれたのか!?連絡全然つかねぇんだよ…」
「ずっとノイズが入ってる…。これ、敵にジャミングされたんじゃ…」


妨害された!?じゃあGPSでも探せないのか。
直接鼎を探すしかないのか…。





第43話(下)へ続く。