九州某所・ゼルフェノア宇宙局――

「宇崎、話は聞いたぞ。本部がてんやわんやだって?サンタ見習いが落ちてきたって本当か?」
宇宙局の司令・鴻(おおとり)がフランクに聞いてる。

「派手に落ちてきましたよ。うちのグラウンドにクレーター、出来ましたからねぇ。でっかいの」


グラウンドにクレーター!?


「クレーターの証拠写真、転送しましたよ。あと、偵察衛星でもそっちは確認してるんじゃないの?」
「あぁ…見たよ、確認済みだ。確かにあれは『サンタクロース』にしか見えない」

「あの…鴻司令」
「何?」
「今急ピッチでそりを直しているんですが、飛ばす手段がないので協力して貰えますか?激突した時にトナカイが逃げたって、彼女も言っててかなり困っていますし…。」

「そこはうちらに任せなさい。打ち上げるに限るでしょう」


宇宙局も協力するという。これは頼もしい。
「打ち上げる」ってどういうこと!?



お昼頃。晴斗達は和気あいあいとクリスマスパーティーしながら昼食を食べていた。


「室長、来ないね」
晴斗はチキンにがぶりつきながら御堂に言ってる。

「そりの修理、急ピッチでやってるってよ。メカニック班召集していたし。未知のもんを直すから、人手が足りてねーんだろうな」


「それにしても暁くん、よく食べるね〜」
時任は褒めてるのか、皮肉なのかいちいち言ってる。

「晴斗は食べ盛りだから食わせておけ」
御堂はぶっきらぼうだが、御堂本人も肉にがぶりついていた。


鼎と彩音も食べているが、晴斗と御堂が目立っているせいか影が薄い。
男性隊員の中でも、晴斗と御堂が際立っているせいかと…。この2人は肉の争奪戦をしていた。


「不毛な争いするなよ…」


鼎が呆れてる。彩音は気にしてない。
「晴斗がいるから争奪戦になってるんだよ」
「仕方がないのか…」



本部・格納庫。メカニック班達は悪戦苦闘しながらも、なんとかそりを修理させる。


「室長、ソニアさんのそり修理しました!なんとかやりましたよー!」
「よっし、あとはこれを宇宙局へ運搬するぞ」

「室長、宇宙局に運ぶんですか?これ」
メカニック班の1人、長岡が呟いた。

「宇宙局の司令、鴻が快諾したぞ。宇宙分野なら宇宙局に任せとけだってさ」
「あれ…ソニアさんは?」
「今ご飯食べてるはずだよ。晴斗達が交流してるから休憩所、行ってみい。
お前らも飯まだだろ?今日はクリスマスパーティーだから好きなの食え」
「ありがとうございます!」

長岡は礼儀正しい。深く礼をした。宇崎は「そこまでせんでも」…というリアクション。

「長岡、肩肘張らなくてもいいんだよ?今日は無礼講だし、メカニック班はお堅いからな…」
「そんなに俺達堅いんですか?」
「解析班の方が馴染んでる。朝倉と矢神のおかげだろうな」



本部・休憩所。解析班とメカニック班も加わり、さらにカオスに。
ソニアはちょっとだけ晴斗達と打ち解けた。

「皆さん、楽しそう…」
「ソニアさん、遠慮しないで食べて食べて!」

朝倉がぐいぐい行ってる。ソニアは食べてみた。美味しい。


「美味しいでしょ?ちょっと騒がしいけど、うちの組織の隊員はみんな優しいよ」
「そうなんだ…」


ソニアはこんなことをポツポツと話始めた。

「サンタ見習いは100人いるんです」
「100人いるの!?」
「私ほどのおっちょこちょいはあまりいないんですけどね…。師匠によく心配されます」


文字通りの「あわてんぼうのサンタクロース」じゃないか…。


「師匠って、サンタなんだよね?連絡した?」
朝倉が聞いてきた。
「れ…連絡?」
「スペースデブリに衝突したのって、事故よ!?生存報告しといたら?」
「そ、そうですね…」


ソニアは遠慮がちに部屋を出た。そして見慣れない端末で連絡。師匠が出た。


「ソニア、どうしたんじゃ!?」
「スペースデブリに衝突しましてですね…事故りました」
「今どこにおる?」
「日本です。ゼルフェノアという組織に保護されました。そりを直して貰ってます」

「行けるのか?」
「たぶん…大丈夫」



少しして、宇崎がやってきた。

「そり、直ったよ!」
「本当!?」

ソニアはぱああっと笑顔になる。でもどうやって飛ばすのか。


「ゼルフェノア宇宙局に連絡したから段取りは取れてるよ。あとは運ぶだけ!」
「…で、どこに運ぶんですか?」

「九州だよ。宇宙局は九州にあるんだ」


宇崎は隊員達に聞いた。
「宇宙局は滅多に行けないぞ。行きたいやつ、挙手っ!!」

休憩所が沸き立った。結果的に宇宙局行きのメンバーは晴斗達いつもの4人+時任・朝倉・矢神・長岡と宇崎とソニア。
宇宙局へは輸送機で行くことになった。



ゼルフェノア飛行場。ここは本部近くにある。本部航空部隊の拠点がここだ。
今回は物と人を輸送するため、輸送機。


「全員乗ったかー?これから九州の宇宙局へ行く!ソニアとそりを宇宙局へ送り届けるぞ〜」
「了解でーす」

ノリが遠足みたいになってきた。


移動中、宇崎はさらっとこんなことをいう。

「鴻司令が宇宙局、見学してもいいんだとよ。これはレアだぞ。喜べ」
「謎だらけの宇宙局、よく見学許可したよな〜」

「御堂、素直に喜びなさいよ」
「宇宙局って、そんなにも謎だらけなんですか!?」


晴斗は目をキラキラさせながら聞いてる。

「本部・支部・ゼノクの上層部でさえもなかなか中を見せてくれない施設なの。長官くらいじゃないの?許可なしで入れるのは。俺も入るの初めてなんだよ」


どんな施設なんだ、ゼルフェノア宇宙局…。
種子島宇宙センター的な感じなのか?



しばらくすると輸送機は九州某所に到着。そこは異様な雰囲気の施設があった。


ゼルフェノアの施設…なんだよな?なんか雰囲気全然違う。
…てか、あのデカイの…ロケット!?

晴斗達は施設を見渡す。とにかく広い。ゼノクよりも規模が大きい。
ロケットがあるくらいだから当然なんだろうけど。


宇宙局の要の施設で宇崎は鴻と初顔合わせ。


「その任務、賜ったよ」
「鴻司令、お願いします」

「任せなさいって〜」


鴻司令、気さくすぎないか?しかも若い。



こうしてソニアとそりは宇宙局に託された。





番外編(下)へ続く。