シミュレーション怪人と格闘して小一時間。晴斗はなんとか偽物怪人を倒すことに成功する。
晴斗はゼイゼイ言っている。

「強さ設定おかしくない!?思っていた『中』と違うんだけど!?」


そこに御堂が声を掛けてきた。

「晴斗、これは長官が作ったもんだからしゃーない。偽物怪人は『弱』からやらないとダメだわな。ボコられて終わりなのに…お前ラリアットにアッパー・踵落としも使ってなかったか?」
「…無意識に使っていたかも」

晴斗はきょとんとしている。御堂は晴斗の天然タフぶりに驚いていた。
こいつ…鼎を助けた最初の戦いでもメギド相手にドロップキックしていたらしいし、一体どこで覚えたんだよ…。


晴斗は御堂にあることを聞いた。
「御堂さん、その…『長官』ってどういう人なんですか?」
「お前長官…知らねぇよなぁ…。ゼルフェノアのトップだ、蔦沼長官は。ちょっと変わってる人だけど、隊員思いだし時には自ら戦う人だから慕われてる。…が、世間の長官のイメージとは全っ然違うぞ。この組織、どういうわけか曲者ばかりが集まる傾向にあるらしい。上層部もな」
「その曲者に俺も入りますか!?」

御堂、しばしの間。
「晴斗、お前自覚ないんだなー。お前の身体能力、並みの人間以上だぞ。あとタフすぎるから曲者認定だわ。お前…運動部に引っ張りだこだったと聞いてんぞ」
「御堂さんだっておかしくないですか!?対怪人用装備使わないの、御堂さんだけだって聞いてる…」

御堂はめんどくさそう。
「…ったく。俺は対怪人用装備が合わないから通常装備を使ってんの。その分トレーニングは欠かせないけどな」
「通常装備でよく戦えてますよね」

「慣れだよ、慣れ」


御堂は口こそ悪いが、晴斗を認め始めていた。こいつのパンチ、威力あるよなー。喧嘩してるわけじゃないのに。

ヒーローに対する憧れが強くしているのだろうか…。



ゼルフェノア寮・鼎の部屋。彩音は右手を負傷して利き手が使えない鼎を保護者のように接してる。

「食事用マスク、調べてみたら似たようなものがあるみたいだね。この工房、オーダーメイドしてくれるみたいだよ。都内にあるって。問い合わせしてみようか?」
「いいのか、そこまでして貰って…」

鼎、かなり戸惑いを見せている。

鼎が着けている白くてまっさらなベネチアンマスクは市販品ではない。鼎が組織に入ってから御堂の提案で戦闘にも耐えうる、軽くて丈夫なオーダーメイドの仮面に改良された。

この改良型は宇崎本人が製作している。
研究室の一角には鼎用の小部屋まであるのはそのためだ。小部屋には仮面の予備やライフマスクなどが置いてある。


滅多に割れない鼎の仮面だが、弱点がある。

目の保護用レンズがあるせいで、仮面の呼吸穴が1つしかない。
なので戦闘中、状況次第では酸欠になるリスクがある。一部、鼎と関わりが深い隊員が鼎用に携帯用酸素吸入器を持ち歩いてるのは、そのためだ。



本部・トレーニングルーム。


晴斗と御堂は偽物怪人相手に戦っていた。今度は2体出現させ、1vs1でそれぞれ戦ってる。
いきなり強さ設定「中」でやったせいか、「弱」だと張り合いがない。2人は「強」に戦々恐々している。

「中」でこの強さってことは…「強」だと一体どうなってしまうんだ!?



都内某所。鐡の部下の3人目の幹部は人間態で悠々と歩いている。
見た目は長髪の飄々とした青年。青年は元老院の命で動いている。
彼こそが蒼い炎を使う上級メギド。青年にはこだわりがあった。

炎を使う時は怪人態になる。そして炎は美しいものだという、独特の美学を持っていた。
だが、邪魔者には容赦しない冷酷さもある。


青年はある場所へと向かっている。

12年前の連続放火事件の再現をしようと…模倣とも違うが…彼は規模を拡大して目論んでいた。
全てを燃やし尽くしてやろうか?この蒼い炎で。

地獄絵図を再び…やりましょうかねぇ。


青年は怪人態に変貌し、手から蒼い炎を発した。そして火を建物に放つ。燃えるがいい…!



都内で蒼い炎が目撃された。本部に衝撃が走る。一体何者が!?幹部なのか!?

宇崎は晴斗達に通信。
「『蒼い炎』を使う怪人が都内某所に出現したらしい。消防隊とともに向かってくれ!12年前の悲劇の再現だけは『絶対』に起こしたくないからな!!意地でも食い止めるぞ!!」

「室長、あたりめーだろうが!なにがなんでも被害は食い止める!」
「和希、お前がいてくれて頼もしいよ」



蒼い炎を使う怪人とは一体何者なのか?