倒れそうになりながら仕事して帰りながら強風に吹かれていると、自分がものすごくちっちゃな存在に感じる。何のために頑張っているのか分からなくなるほど休息を求めているけれど、一方で仕事を心底探し求めている。収入の目処がついたら心も安らかに眠れるだろうか。
あの人は私が泣いていても決して気付くことはない。遠い昔に母が夜中起きだして抱きしめてくれたことを思い出す。寂しさと怒りは一回転して愛情に変わる。隣に居てくれることを喜ぶ気持ちと、隣に居てくれるのに気付いてもらえない悲しさと。愛というものは本当に厄介だ。

しばらく駅から歩いたあとで栄養剤を買い忘れたことに気付く。二歩、どうしようか迷ったあとにやっぱり買いに戻る。正念場だ。昔はどうにか出来たことだが、今の体力と年齢ではどうだろう。本末転倒にならないことだけを祈った。胃は昨夜からキリキリと悲鳴をあげて限界を謳うけれど、今度ばかりは聞いてやれない。とりあえず、実習中の店員にイラつくほどに限界だ。ありがとうも言わずに店を出た。

風が強い。寒くて寒くてたまらなかった。春なのに。春だから?寒さは精神の平穏を奪う。暖かくして寝よう。眠れる保証はどこにもないけれど。

彼以外の男性に触れることに嫌悪を覚えたこと。彼以外の男性に声をかけられることが恐怖でしかないこと。ものすごく寂しかったことも辛かったことも、まだまだ言えないことだらけだ。言いたいことを言えることは奇跡に近いことなんだろう。愛情にせよ心情にせよ一度止まる言葉はごく簡潔な言葉になって現世に現れるしかない。どれだけ好きか、なんて伝えるのは不可能なほどに愛している。

私の助けに応えて、深夜に家を飛び出してきてくれたことは忘れないでいよう。