一生懸命って、
辛いけど気持ちいい。
「明日試合なんだ。」
「へー。」
「へーじゃなくてさ、来てくれるんだろ?応援!」
「十代目が行かれるってならお供する。」
「……。」
瞬間、
ツナ絶対来いって思った。
同時に、
なんだこのもやもや?
来るなとも、思った。
あれ、おかしいな俺。
「お前っていつもツナばっかだな。」
「当たり前だ。」
わかってるんだ、
いつものことだし。
わかってるんだ、
なれてるから。
「…俺明日頑張れるかな。」
「頑張るんだろうが。」
全身全霊かけた獄寺の声援と熱い抱擁があれば絶対に勝てるんだけど、
なんてぼやいたら
頭をいい音で殴られた。
「いつもの力出しゃ大丈夫だろ。」
「いつもの力の源は君です獄寺さん。」
「甘ったれんな。」
獄寺はツナより俺を、
俺は野球より獄寺を、
そんな風になれたらきっと最強のカップルだな俺達。
(きっと俺はもうすでに野球より、お前を。)
「とりあえず見には行ってやる。」
「おう!手とか振ってくれたら振り返すぜ。」
「誰が振るか、お前の三振見て笑ってやるよ。」
「獄寺が来るならきっとそれは無いな。」
張り切って逆に空回り?そんな事ない。
だって俺、大事なもん目の前にするとやる気が出て運まで出ちゃうタイプだし。
「折角見に行ってやるんだから勝たねぇと果たす。」
「任せとけって!」
打つよ、
(君のために。)
走るよ、
(いい所見せたいから。)
勝つよ、
(だから笑顔を見せて。)
**********
相変わらずオチない。
青春過ぎる山獄がすき!野球と山さん獄ちゃんのスリーセットがすき!
お前、どんだけ自分が好かれてるかわかってんのか。
「なぁ、俺の事すき?」
「ぁ?何だいきなり、うぜぇ。」
「いや…獄寺はちゃんと俺の事好きなのかなーって。」
突拍子もなく、こいつは恥ずかしいことを言う。
「嫌いならこうして二人でいねぇだろうが。」
「んー…そうじゃなくってさ、好き?って聞いてんのな。」
作戦かどうなのか、(いや、このバカには作戦とか思い浮かばねーだろうから前者が有力だが)俺にはわかんねぇけど、
不覚にも可愛い、
とか思っちまう。
「…言ってどうすんだよ。」
「うれしくなる!」
「バーカ、絶対言わねぇ。」
こんな一言で胸が高鳴る俺の方がバカだ。
「バカって…獄寺のひねくれものー。」
「悪いかよ?これが俺だ、文句あんなら帰れ。」
「え、やだ!文句ない!」
俺はつくづく素直になれねぇ、ひねくれもの。
自分でも十分わかってるつもりだ。
でも、絶対言えねぇ。
こんなに好きだ、とか知られたら
もっともっと、好きになっちまうから。
山本がちゃんと受け止めきれるだけの“好き”を、渡してぇ。
溢れちまったらかわいそうだろ。
のこった“好き”は俺の中でためておく。
パンクしそうな俺の好き袋、100個くらいほしい。
頬をふくらますお前。
触れるだけのキスが落とされる。
何かんたんに唇許してんだ俺。
「へへっ、じゃぁ取りあえずこれでいーや。」
…おいおい、顔赤ぇぞ?
俺の方が赤いか。
これでまた、好き袋が満タンになった。
…もっとでかい袋が必要か。
*********
好き袋ってあったら便利だなって、溢れないようにしまっておけるの。
珍しく獄寺が山本溺愛っぽいのがかきたかった。
好きすぎて好き過ぎて、
どうしたら良いんだよ。
「おい山本。」
名前を呼ばれる度に胸が痛い。
「おい?」
声を聞くたびに張り裂けそうだ。
「聞こえてんのか!」
良い音がしたと思ったら頭を殴られた、いてーのな。
「ごめん、どうした?」
「どうしたじゃねぇだろ、さっきからボーっとしやがって!用がねーなら帰んぞもう。」
「ま、待って!悪い悪い、ちょっと頭がどっか吹っ飛んでた…泊まってけよ、な?」
「じゃぁボーっとしてねぇで構え。暇だろうが。」
ああ、また可愛い事を。
自覚してんのかな?それとも策士?…いや、後者は無いだろ。
「ごくでらぁ。」
「あ?」
「チューしよ。」
また殴られた。あれ、今俺変な事言った?
「頭までいかれちまったかバカ。」
「えー…だってしたいし。」
「してぇからする、じゃまるで猿だろうが。」
獄寺とチュー出来るなら猿でも良い、なんて考えてたら
獄寺がそっぽ向いちまった。
そんな嫌だったのかな?とも思ったけどごめん、そんな姿でさえ愛しいって思っちゃう俺がいる。末期だ。
そんな事頭でごちゃごちゃしてたら思わず抱き締めてた。
ごめん、ごくでら。
「ちょっ!なんなんだお前本当に…!」
「獄寺ー、すき。」
「は?うぜぇ!離せバカ。」
「ごくでらぁ。」
離せない、離したくない。
傍でお前を感じたいんだ、わかってくれるか?
ペロリ、獄寺の耳を舐めたらすごい勢いで腹殴られた。
今日俺殴られ過ぎじゃん。
思わず離してしまった情けない俺を置いて獄寺は立ち上がった。
「帰る!」
引きとめ様と俺も立ち上がったら、
「着いてくんな!」
の一言。さすがにへこむけど…なんだろう、
嫌がってるのも分かってる筈なのに一緒に居たい気持ちが強いから。
腕を掴んだ、
あれ?熱い。
「離せっつってんだろ!」
良く顔を見てみると耳まで真っ赤な獄寺。
…反則だろそれ。
何処まで惚れさせれば気が済むんだ、
なぁ獄寺。
俺は黙ったままもう一度ゆっくりと抱き締めた。
今度は腹殴られないようにぴったりと身体を密着させて。
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好き過ぎるって難しい感情だとおもう。
山獄は青春らしく試行錯誤する姿が可愛いな。