新旧医療部隊長コンビのお話です。
この二人の話楽しいから好きです…
ちょっとスランプちっくで短めの話になってますが…
これ以上書くとBLちっくになりそうだったのでやめときました(笑)
優しい先生であるカルセと彼にはまだまだ子供扱いされるジェイドの関係が好きです♪
では、追記からどうぞ!
夏にしては肌寒い、夜のこと……
医療棟の一室。
静かな研究室のなか……――
「ふぅ……」
小さく溜め息を吐き出したのは長い緑髪の男性……ジェイド。
彼は書類作業をしていたところ。
しかし今日は一日忙しくて、少々疲れていた。
朝から幼い騎士たちに教鞭を振るい、怪我をした騎士の手当てをし、
その合間合間にこうした書類仕事をこなしていた。
休憩する時間なんてろくになくて、ずっと働いている状態。
見た目のわりにタフな方だと自負していた彼ではあったが、
流石に丸一日働きづめでは疲れもする。
でも仕事も少しキリが悪い。
もう少しやってから休めば良い。
そう思いながら再びペンを拾い上げた、その時……――
「今日はこれくらいにしておいたら如何ですか?」
聞こえた声と同時、ペンを取り上げられた。
ジェイドが驚いたように顔をあげると、そこには、
にっこりと微笑んでいる淡水色の髪の男性の姿。
「あ……先生」
「また貴方はそうやって無茶をしようとする」
そういいながら溜め息を吐き出したかと思うと、
彼……カルセはジェイドに歩みより……
「!?な……っ」
ジェイドは思わず大きな声をあげた。
その原因はカルセがジェイドを抱き上げたから。
唐突な彼の行動。
挙げ句、24にもなって男性に姫抱きされるとは思っていなかったために、
ジェイドは翡翠の瞳を大きく見開いて固まっている。
「せ、先生……っ」
「おとなしく寝なさい。仕事は明日でも出来るでしょう」
カルセはそういいながらジェイドの体をベッドに下ろす。
そのまま布団を被せた。
暫し放心していたジェイドは体を起こす。
しかしカルセがそれを押し止めた。
「寝なさい」
「しかし、まだ……――」
仕事が、といいかけるジェイドの唇を、カルセは指先で塞ぐ。
ジェイドは驚いて翡翠の瞳を大きく見開く。
彼の表情は真剣そのものだ。
無理を許さないという表情の彼……
ジェイドは何も言えずに、彼を見つめ返した。
「先生……?」
「休みなさい。
無理をすることは、私が許しませんよ」
カルセは毅然とした声でそう言う。
ジェイドは彼の声と言葉に何度か瞬きをすると、小さく頷いた。
「……わかりました」
彼が答えると、カルセはふっと表情を緩める。
そして大きな手で優しく彼の額を撫でた。
その手の感触も、もっと言うならば先程抱き上げられた時の感触も、
何処か懐かしい、幼い頃の記憶にある彼のそれと同じだった。
幼い頃にも無理をして倒れたことがあった。
その時にもこうして抱き上げられて運ばれて、
そのあとで部屋で説教を食らったっけ。
そんなことを思い出しておかしくなって、ジェイドはくすくすと笑う。
彼を見て、カルセは不思議そうに首をかしげた。
どうしたんですかと問いかける彼にゆっくりと首を振って、
ジェイドは微笑みながら、言う。
「いえ……先生も、変わりないなと思いまして」
「おや、それはどういう意味です?」
成長がないと?とおどけたように言う彼を見て、ジェイドは笑う。
そして、翡翠の瞳を細めつつ、いった。
「かわりなく優しいな、と」
「ふふ、口うるさいところもでしょう?」
「それもありますね」
ジェイドが笑いながら認めると、カルセも微笑んで、そっと彼の頭を撫でた。
ディアロ城騎士団では最年長の彼でも、カルセにとっては"教え子"だ。
「私たちの関係はずっと変わることがありませんからねぇ……
貴方は私の可愛い可愛い教え子ですよ。
例え貴方が周囲に先生と呼び慕われる立場の人間になったとしても、ね?」
その事実だけは変わりませんから、といって、
カルセは軽くジェイドの額にキスを落とす。
彼のこういう行動も、昔から変わりはしない。
ジェイドはそう思いつつ微笑んで、目を閉じた。
中途半端なままの書類が気になるのは事実なのだけれど、
これで体を起こして作業をしようとしたら、まず間違いなく怒られる。
「お休みなさい、ジェイド」
ゆっくり休みなさいね、と言うカルセの声が聞こえる。
ジェイドは優しく頭を撫でてくれる彼の手を感じつつ、意識を微睡ませる。
こうしてゆっくり休むのは久しぶりな気がした。
セラになってからは、なおのこと……
柔らかなカルセの手の感触を感じながら、ジェイドは静かに眠りについた。
―― 変わらない関係 ――
(大切な私の教え子
例え幾年過ぎようとも、その関係は変わらない)
(僕のことを大切にしてくれる先生
その少し過保護なところも昔と変わってなどいなくて)