勢い余って書いちまったロキルー(笑)
甘くするつもりが、なんだか切ない感じに…。
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「やぁ、ルーシィ。今夜はとても綺麗な月が出てるね。キラキラ輝いていて、まるで君みたいだ。」
脈絡もなくそんな言葉をはいて、突然現れた猫科大型獣の星霊はへにゃんと微笑んだ。
ルーシィは特に驚きもせず、呆れたようにはぁぁっと溜息を吐いて目の前の星霊を睨みつける。
「ロキ…」
自称フェミニストの自由気ままな星霊は、また勝手に星霊界から出てきたらしい。自分の魔力を使って出てきているし、ルーシィの知らない所で勝手に出てきているわけではない。なにより、妖精の尻尾のロキとして『こっち』で過ごしてきた時間があるわけで、ロキにはロキの交友関係もあるだろう。ルーシィとしても勝手に出てくる事を咎める気は無い。無いけれど、こうもしょっちゅう出てこられるのもどうしたものか。
朝目が覚めると「おはようルーシィ、いい朝だね」、家に帰れば「おかえりルーシィ、今日もお疲れ様」。そんなのは日常茶飯事で。それ以外にも何かと勝手に現れては、甲斐甲斐しくルーシィの世話をやいていく。
おかげで最近プルーを全然呼べてないじゃない。
ふう。
様々な思いを込めた溜息。
ちら、とロキを見れば月を見上げながら、ルーシィと月の美しさについて滔々と語っている。
「月の光で星が霞んで見えるよ。本当に君みたいだ。」
「はいはい。」
わかった、わかった、とでも言うようにひらひらと手を振れば、またへにゃんと笑顔。
「どうしてルーシィはそんなに綺麗なんだろう。サングラスが無かったら、目が潰れちゃうな。」
「潰せば」
何時かに聞いた台詞に、何時かも言った台詞で返せば、サングラスの奥の瞳が懐かしそうに細められた。
瞬間、ルーシィに芽生えた悪戯心。
さっと手を伸ばしてロキのサングラスを奪い取る。
「目潰し!」
ニカッと笑いながらロキを見ると、ロキは眩しそうに片手で目を隠して「うっ!」と呻いた。
何気ない戯れが楽しくて、くすくすと笑いあう。
奪ったサングラスを掛けてみたら、視界が暗転した。
「わ。真っ暗。」
「夜だからね。」
「…じゃあなんでかけてんの?」
「そりゃあ肉眼でルーシィを見たら、眩しすぎて目が潰れちゃうから。」
「………」
いつものふにゃふにゃ笑顔。
その笑顔と軽口で、ロキは本音を隠す。
…ま、別にいいけど。
本当は…信用されてないみたいで嫌だけど。
誰にだって他人に言えない事の一つや二つあるはず。
それに、たいした理由なんて無いのかもしれないし…。
「ルーシィ。」
声をかけられて、ハッとして顔を上げる。
ルーシィの目の前に珍しく真面目なロキの顔。
「好きだよ。」
不意打ちの告白に、真っ赤になってあわあわしてしまう。
「な、なにっ?突然…」
「でも、」
ルーシィが自分のペースに戻そうと、反論しかけたところでロキが言葉を続けた。
「ルーシィは僕を好きになっちゃ、駄目だよ?」
「………は?」
随分勝手な言い分に、思わずムッとして問い返した声が刺々しくなる。
「ルーシィは僕を好きになっちゃ駄目だよ?」
繰り返される言葉。
「……なんで?」
返ってきたのは困ったような曖昧な笑み。
「……ロキは大切な友達よ。」
だから、友達として好きなんだ、と言外に告げれば、ロキは満足したように頷いた。
「うん。ありがとう。それでいいよ。」
そう言ってルーシィの手からサングラスを取る。
嘘つきなロキ。
臆病なロキ。
それでいいなら、なんでそんなに悲しそうなの?
どうしてそんな自虐的に笑うの?
あんたは星霊で。
この先何十年、何百年と経っても変わらず生き続けていて。
私は人間で。
年もとるし、いつかは死ぬ。
別れが怖いの?
だから距離を保とうとするの?
色付きガラスに阻まれたロキの目は、悲しげに揺れるばかりで。
何か言ってやろうとするも、ルーシィはただ黙って拳を握り締める事しか出来なかった。
end