約2年前――
晴斗がまだゼルフェノアにいない頃。鼎達はある任務で市街地から離れた場所にいた。

この時のメンバーは御堂・鼎・彩音・桐谷。4人は戦闘員を倒しながら、中級メギドと交戦中。
鼎は組織に入って2年目だが、御堂に鍛えられたせいかメキメキ成長していた頃。鼎は宇崎が組んだ、彼女独自のプログラムで訓練しているのもあるが。


ほんの一瞬の隙を突かれ、鼎は謎の男集団に拉致されてしまう。手足を縛られトラックに乗せられ、着いた場所は資材置場だった広い倉庫。
鼎は気づいたら椅子に座らされ、縛られていた。身動きが取れない。

そこにあの男がやってきた。鼎はその男とは面識がないが、狂気を感じた。
その男が主導となり、鼎を拉致したのである。拉致した男集団も全員怪人。


「やっと見つけた…。仮面の女…」

男は嬉しそう。男は狂気に満ちてるが冷たい目をしている。男は何を思ったのか、身動きが取れず反撃出来ない鼎に対してある行動をする。


「その仮面の下、見せろよ」

男は鼎の顎をくいっと触る。鼎は恐怖で声が出ない。

「怖くて声が出ないのか…。いいねぇ。そんなお前に屈辱を与えてやろうか?」

男はニヤニヤしてる。



一方、御堂達は鼎を必死に探していた。

「鼎のやつ、どこに消えた!?」
「御堂さん、変なトラックいたよね。拉致された!?」

御堂はGPSを使い、司令室と連携しながらその倉庫を探し当てる。


その頃、倉庫内。男はじわじわと接近し、鼎の仮面に手をかける。
「やめろ!それだけは…やめろ…」

鼎は必死に懇願した。声が悲痛になる。男は無視し、無理やり彼女の仮面を外しにかかる。
「いいぞ…もっと喚け。いたぶってやるからよ」
「もう、やめてくれ…」

鼎は泣きそうになっていた。明らかにこの男は人間じゃない。何者なんだ。
男は何の躊躇もなく、鼎の仮面を無理やり外す。素顔が露になった。角度の関係で顔はほとんど見えないが、無理やり外されたせいで髪が乱れてる。

男は鼎の顔をまじまじと見た。
「ひでぇ火傷の跡だな…。仮面の理由はこういうことか」
「何が言いたい!?」
「お前は反撃出来ない分際で喚くんじゃない」

男は鼎に蹴りを加える。蹴りはみぞおちにヒットし、鼎は痛みに呻く。
「この大事な仮面、割られたくなければ大人しくするんだな」

男はこれみよがしに無理やり外した仮面を見せつける。あれを割られたら…。鼎は男により、屈辱を受けていた。
反撃したいのに反撃出来ない。だんだん涙が出てきた。何も出来ないなんて。


男はさらに鼎に暴力を加える。人間離れした力で椅子ごと壁に突き飛ばした。男は狂気に満ちていた。痛めつけることで快楽を得ている。
鼎はなんとか声を出す。

「返せ…」
「嫌だと言ったら?」
「それは身体の一部だ、返せ!!」


御堂達は例の倉庫へ到着、突入した。そこには体を縛られ暴力を受ける鼎の姿と、狂気に満ちた男の姿が。

「邪魔者が入ったか」
男はつまらなそうに呟く。

御堂は男に銃撃。こいつ、怪人…!御堂と桐谷で男を攻撃、彩音は鼎の救出に向かう。
「彩音は鼎を救出しろ!!」
「わかった!」

彩音は銃撃戦の中、鼎の救出に向かう。男はニヤニヤしていた。
「お前の大事な仮面、割っちゃおうかな。もっと泣き喚け」
「やめろーっ!!」


鼎の制止もむなしく、男は片手で仮面を容赦なく割る。鼎は絶望に包まれる。

「あ…あぁ…。ああ…」
鼎は声にならない声を出した。彩音は鼎を救出したが、鼎は屈辱感と絶望で放心状態になっていた。
鼎は縄を解かれ彩音に抱きつく。ぼろぼろ泣いている。
彩音は鼎を落ち着かせながらもその男を睨みつけた。


男はこう言い放つ。

「ゼルフェノアの皆様、これで終わりじゃないぞ…。またいたぶってやるからな…そこの女。素顔を見れたのは大収穫だったが」


男は姿を消した。御堂は「てめぇ待ちやがれ!」と叫びながら虚空に銃撃する。

鼎はショックを受けていた。無理やり仮面を外された上に、その仮面を割られたのだから。



そして現在。その男は鼎を探していた。今度はネオメギド5体を従えて。

「最初からわかっていたなら、あの時殺っておけば良かったな。あの仮面の女にそんな能力があったとはねぇ」



支部では急遽、本部隊員が召集される。鼎はまだ完治してないが、退院していた。


「いきなりですまないが、本部へ戻ってくれということだ。ネオメギドも引っ掛かるが、鐡が危惧している怪人が動くかもしれないと言っていた」
「小田原司令、『鐡が危惧している怪人』ってなんなんだ?」


御堂が質問。小田原は答えた。

「紀柳院を襲撃した怪人らしい。紀柳院、何か心当たりないか?」
「…2年前に私の仮面を無理やり外した男のことかもしれない。あれは屈辱的だった…。狂気の男だよ」

「確かそいつには逃げられてる。俺と桐谷さんで攻撃して、ダメージ与えたけど倒す寸前で逃げられた奴だよ」
「御堂さん、その男…鼎を異様に狙っていたよね。鼎の仮面を無理やり外した上に割ってるあたり、かなり悪どいよ。そいつがまた動き出したとなると…」



ゼノクでは鐡が持ってきた異次元の実を分析中。そこに鐡がやってきた。


「俺は本部に行くぞ。奴が動き出した」
「奴って誰なんだ?」
西澤が聞いてる。

「紀柳院鼎の仮面を無理やり外した怪人、『禹螢(うけい)』だよ。あいつは元老院子飼いの中でも破格の扱いを受けてやがる。
あいつ『だけ』、元老院の癖に仮面を着けてねーんだ。元老院からしたら秘密兵器的な奴だよ」


「禹螢はどんな奴なんだい?」
蔦沼が聞いてる。

「狂気に満ちたイカれた奴だ。相手をいたぶり、痛めつけることで快楽を得ている。紀柳院がターゲットとなるとあぶねぇぞ。あのガキ(暁)もターゲットだろうから、危険すぎんぜ」
「だから行こうってわけなのか、本部に」
「あくまでも俺らは『元老院を倒すまで』の同盟関係だろ?それまでは徹底的に協力してやる」


鐡、言い方はあれだが協力的。



本部へ戻る組織専用機の中。ここで4人は思わぬ襲撃を受ける。
コックピットでは激しいやり取りが。

「上空に怪人、出現しました!攻撃しますか!?」
「砲撃しろ」
「了解です」

この異変に晴斗達は気づいた。さっきから機体が揺れてる。窓の外を見た。
そこには空を飛ぶ、ネオメギドの姿が。見たところ3体いる。


「あれ…ネオメギド!?空飛んでる」
「晴斗、感心してる場合じゃねぇだろ!この機体は狙われてるんだよっ!」

「空中戦を仕掛けるとは、執拗だな…」
鼎も落ち着かない様子。組織専用機の操縦士と副操縦士も隊員。本部航空部隊の人達だ。
晴斗達が乗ってる機体にはベテラン隊員が操縦士として乗っていた。組織専用機は戦闘機のような装備もあるため、攻撃可能。
空中戦はだんだん派手になっていた。副操縦士は晴斗達に警告する。

「君たちはシートベルトして!揺れるから!本部まで送り届けるのが俺たちの任務だからね」


組織専用機には操縦士・副操縦士以外にも隊員が2人乗っている。この2人の隊員は攻撃及び、レーダー解析担当。かなりの腕の持ち主らしく、確実に空中を飛び回るネオメギドを砲撃していた。

「飛行タイプもいたなんて…!」
攻撃担当の隊員が苦戦中。


ゼルフェノアには戦闘機もある。対怪人用の装備を搭載したもので、この戦闘機があるゼルフェノア航空基地は1ヶ所だけでなく、合計3ヶ所存在。

本部・支部・ゼノクにはヘリポートがあるが、滑走路がないため仮に組織専用機で向かったとしても目的地近くの飛行場で降りることになる。
戦闘機は垂直離着陸可能。組織専用機は中型機なため、それが不可能。


ちなみにゼルフェノアには海上基地も存在する。敵の性質上、水中戦・海上戦はほとんどないのだが2ヶ所基地は存在。
ゼルフェノア航空基地と海上基地は普段、自衛隊と連携している。


組織専用機内は緊迫していた。

「隊長!ネオメギドの攻撃強まってます!」
「砲撃でも効かないとは…」


空中戦は晴斗達は専門外なため、手出しが出来ない。だが、御堂はいてもたってもいられなかった。

組織専用機の砲撃でもほとんど効かないとかネオメギド、強さがおかしいだろ…。
敵には被弾してはいるのだが、相手はあの蔓を使う。専用機は蔓を交わしながら攻撃している。機内はかなり揺れている。


組織専用機は3体のネオメギドに囲まれ、ピンチに追い込まれていた。

その様子を楽しそうに見ている男がいた。禹螢だ。
「この空中戦、どう切り抜けるのかな?ゼルフェノア。空中だと縛りプレイになるからねぇ」

禹螢はネオメギド2体を従えてある場所にいる。どうやらまだ本部を襲撃する気はないらしい。





第41話(下)へ続く。