異空間では鐡一派vs絲庵(しあん)の戦いが激化。絲庵は強化戦闘員を複数出現させ、鐡一派を翻弄する。


「どうです?我々の強化戦闘員は」

絲庵は冷たく言い放つ。釵游(さゆう)は十文字槍・杞亜羅(きあら)は鉄扇を出現させて応戦。
2人の幹部は楽しそうに撃破する。鐡一派の方が一枚上手。

鐡は絲庵にはまだ裏があると感じていた。こいつ…強化戦闘員の他に何か隠してやがるな。


絲庵は鐡が動かないことが気になっていた。なぜ動かない!?
鐡は幹部に任せきっている。

「俺の部下達を舐めるなよ?杞亜羅・釵游、絲庵はまだ何か隠してる。用心しろ」

「承知」
「わかっているわよ」


絲庵は隠していた。強化戦闘員よりも強い怪人を実験で生み出していた。
中級メギドよりも強いその怪人はネオメギドと名付けてある。

ネオメギドは上級と中級の間に位置している。絲庵は仮面の下でほくそ笑んでいた。
仮に私が死んでもネオメギドがいる。滅ぶのは貴方達ですよ、鐡。



晴斗達4人は翌日、一旦本部へと戻っていた。宇崎がニコニコしながら伝える。


「お前達に朗報だ。ゼノクから最新鋭の対怪人用銃が届いた。名は『マグナムブラスト 4DX-3400』。マグナムブラストでもマグナムでも呼び名は自由だから好きなように使えだと。
強化戦闘員以上の怪人用に開発したと長官が言ってたぞ」

箱の中には白い銃が入ってる。今まで使っていた対怪人用銃に比べたら少し大きめ。
「マグナムブラストは銃身をこうやると…ライフルモードにもなるんだわ」

宇崎は実演して見せた。御堂は試しにマグナムブラストを持ってみる。
あれ…?使いやすそうだぞこれ。


宇崎は話題を変えた。

「異空間では鐡一派がドンパチしてる。強化戦闘員を生み出した奴と交戦中。
京都近郊に出た強化戦闘員はどうやら首都圏に出た怪人の亜種だとわかった」
「亜種!?」

晴斗はオーバーリアクション。


「ゼノクからの報告で晴斗と鼎、お前ら2人の『人を守る能力(ちから)』の欠点も判明した。
薄々気づいてたとは思うが、使えば使うほど消耗は激しくなる。特に鼎。戦闘時間関係なしに、体力の消耗が異常に激しくなるから使いどころを考えなさいな。鼎からしたら諸刃の剣だよ、この能力は。下手したら…再起不能になる。晴斗は影響さほど受けてないみたいだが、鼎の場合は『敵の攻撃無効化』の代償なんだろう」


やはり諸刃の剣だったのか…。
鼎はずっとうつむいている。

「能力を極力使わないように、長官は新たな装備を開発したって聞いたな。かなり強力だぞ、この銃は」



北川は都筑家の「人を守る能力」をさらに探るべく、都筑家本家を訪れた。前もって連絡はしてある。北川の密命はこれ。


出てきたのは都筑瀬良(せら)という女性。北川の話を聞き、悠真が生存していたと知る。


「この話は都筑家の親戚達は知らないんですね。彼女のためにもそっとしておいて貰えないでしょうか。名前を変えて生きているなんて知ったら…」
「私は薄々、気づいてましたよ。『紀柳院鼎』さんがあの子だということは。仮面の隊員な時点で引っ掛かっていましたから」

「都筑家の能力について何か知らないか?『人を守る』ということしかわかってない」
「私どもの能力(ちから)はなかなか表には出ないものです。悠真だけはその兆候を見せていました。
無効化出来る人間は都筑家でも稀。悠真は相当力が強いと見ていいでしょう。いや…今は鼎さんですね」


瀬良はあるものを出した。


「無効化の能力は代償として、使い手の体力を尋常じゃないくらいに奪います。下手すると再起不能になる代物。諸刃の剣なのです。
これを鼎さんに渡して下さい。彼女を代償から守ることが出来ます。これは代々伝わる守り刀です」


それは箱に入った小さな短刀。


「瀬良さん、ありがとう」
「能力(ちから)が発現した以上、鼎さんはこれからさらにキツい戦闘を強いられることでしょう。
過去にも無効化を発現した一族の人間は敵に狙われていますから。能力を奪われ、亡くなった者もいます。彼女を…お願いします」

「わかった。紀柳院のところに届けるよ」


北川は複雑だった。都筑一族は過去にも無効化能力を狙われていただと!?力奪われて死んだ人間もいると聞いた。
紀柳院がなぜ狙われているのか、わかった。



異空間ではさらに戦いがデッドヒートしてる。鐡がようやく動いた。


「絲庵、手の内を明かせばお前を赦すのに」
「嫌ですね」

鐡vs絲庵の戦いがいきなり始まった。鐡は刀身が紫色の刀を出現させるとニヤニヤしながら絲庵と激しい戦いをしてる。
絲庵は仮面を外した。


外しただと!?


元老院では人前では仮面を外してはいけない掟がある。
絲庵にとっての仮面は封印の意味合いがあるため、戦闘時になると稀に外すこともある。


「鳶旺(えんおう)様のためならば、この仮面…外しましょう」

絲庵は封印が解けたのか、力が増している。
素顔は至って普通の青年なのだが、禍々しい空気が流れてる。


鐡はご満悦。

「いいぜ…副官。お前…力を封印していたとはな」
「元老院の仮面の掟はこの意味合いも少なからずありますからね」


力の封印か。面白くなってきた。





第37話(下)へ続く。