晴斗が敵幹部の飛焔と交戦したことにより、飛焔が炎から変化させた剣を使うことが判明。
飛焔は鼎「だけ」と戦いたいということも判明する。
長官が本部に泊まって2日目。午前中から蔦沼は研究室に籠り、鼎の日本刀型ブレード「鷹稜」を調整中。
繊細な調整なため、時間がかかってる。
本部・休憩所。
晴斗は飛焔に少しイラついていた。飛焔に「ガキ」と見下されたのもある。
御堂に見下された方が遥かにマシだった。敵にガキ扱いされた屈辱…。
「何イライラしてんだよ、晴斗。少しは落ち着けって。敵に見下されてイラついてんのはわかるが、真に受けんな」
御堂は晴斗をなだめようとする。
「御堂さん、あいつ…鼎さんだけと戦いたいみたいで…」
「あいつって、飛焔の野郎か」
「そう、そいつ!なんかイラつく言い方するんだよなー…」
御堂は晴斗にさらっと優しさを見せる。
「でもその飛焔にダメージ与えられたのは今のところ、お前だけだろ。誇りを持てよ。幹部にダメージって難しいんだわ。晴斗、お前…特殊発動使ったのか?」
「なんか無意識に使ったなぁ…」
こいつ、すげぇ…。無意識に幹部クラスの怪人にダメージを与えることが出来たとは…。なんてやつだよ。
晴斗は思い出したように言う。
「鼎さん、最近すごいトレーニングしてるよね…。相当来てるのかなぁ…。飛焔のこと」
「鼎本人からしたら倒したい相手だからな。あの事件の犯人なわけだし。俺は鼎に復讐すんなと言ってあるがな」
「ふ…復讐?」
晴斗はびくびくした反応を見せた。御堂はしれっと続ける。
「鼎がここに入った動機は『怪人への復讐』だったの、知らねぇだろ。今でこそだいぶ落ち着いたが、鼎が入った初期は復讐に取り憑かれていたやつだった…」
「鼎さんがやけに戦闘で攻撃的なのって…」
「あいつが復讐に取り憑かれていた時の名残だよ。だから戦闘に制限時間を設けたわけよ、室長は。鼎が無茶しやすいのは変わってねぇからこっちは毎回ヒヤヒヤする」
あれ…御堂さん、ちょっと保護者っぽい言い方になってる…。
「ま、鼎の復讐に取り憑かれていた件は忘れてくれ。今はまぁ穏やかだが、犯人の飛焔が出てきたことによって、鼎の中に燻っていたものが出てきたらヤバいし」
「わ、わかったよ…」
晴斗は複雑だった。鼎さんが組織に入った初期は復讐に取り憑かれていた!?
戦闘であんなにも攻撃的なのは、そういうことがあったのか…。
本部・研究室。
蔦沼は鼎のブレードを発動させてみた。本来なら使い手しか発動出来ないが、実は作り手も発動させることも出来る。
そこに宇崎がやってきた。
「長官、進捗状況どうですか?…ってうおっ、発動させてる…」
「ブレードの発動テストだよ。紀柳院の身体に負荷がかかりにくくするのは、この発動ではまだ彼女の負荷になる…」
蔦沼は発動を解いた。
「とにかくまだ時間がかかるから、紀柳院には不便かけるかもしれないな…」
「彼女、トレーニングルームで訓練してましたよ?相当飛焔を倒したいらしい」
蔦沼は作業しながら受け答えた。
「そりゃあ、彼女からしたら犯人の怪人…ましてや幹部クラスだ。倒したいだろう。暁の証言で飛焔は紀柳院だけと戦いたいと聞いたからな…。飛焔は元老院の命で動いてるみたいだが…。元老院ねぇ…」
異空間。元老院本拠地。
鳶旺は飛焔を呼び出す。
「なんでしょうか、鳶旺(えんおう)様」
「飛焔、でしゃばるなと言ったはずだ。昨日…予想外とはいえ、交戦しただろ?あの人間と」
「暁という少年のことですか」
「いいか、飛焔は紀柳院鼎を抹殺せよ。紀柳院鼎と名は変えてるが…都筑悠真が生きてると我々としては都合が悪いのだよ…」
「承知しました」
紀柳院鼎が生きてると元老院からしたら都合が悪いだと?
鳶旺は何か隠してるような気がしてならない…。
紀柳院鼎は人間だが…。
本部・トレーニングルーム。
鼎はバーチャル怪人と対峙していた。バーチャル怪人は武器ならダミーなら使用出来ると聞き、ダミーブレードでバーチャル怪人「中」と戦っている。
だんだん慣れてきたが幹部はこれよりも強い。
鼎はダミーブレードで一刀両断。バーチャル怪人は消えた。
鼎も飛焔に関する情報を聞いていた。炎を変化させた剣を使うこと。
戦いたいのは自分だけだと…。
飛焔はこだわりが強いと聞く。それもあるんだろうか…。
第19話(下)へ続く。