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愛し、雨(ヘラ菊)

こんなに憂鬱な雨の日でも、
君に会ったらもう幸せ。


      愛し、雨



「―今日の天気は昼・夜共に雨で、風も強く吹くでしょう。ゆっくり家で過ごす事をおすすめします。では次に――」
(雨、止まないんだ…)
部屋の中の小さな窓から外を覗いてみる。
とても、強い。

雨が降る日は嫌い。
俺の髪が湿気のせいでいろいろな方向にうねってしまうし、猫たちは雨宿りのために何処かに消えてしまうから。
そして何しろ、外に出れないから菊に逢いに行けない。
退屈で退屈で、つまらないのだ。
こんな憂鬱すぎる日に菊に逢えたら、きっといつもの眠気まで覚めてしまうかも。

(そうだ、いっそのこともう一眠りしちゃおうかな…)
思い立ったら即行動。そういうところはのんびり屋ではないんですねと、先日菊に笑われた事をちょっと思い出した。「笑った」というより「微笑んだ」って感じだけど。
もどもどと布団に入る。菊から送られてきた敷布団に。最近これがすごく気持ちよくてすぐに眠れる。

「オヤスミ、菊」

夢で逢えたら、いいな。

コンコン、コンコン
玄関の方から控えめにドアを叩く音がした。
こんな雨の中、一体誰だろう…とちょっと眠りかけていた俺はのっそり起き上がって音の方へ行く。
(もしかして菊だったりして…ないか)
淡い期待を込めてドアを開けた。 ら、

「はい、どちら様デスカ…」

「こんにちはヘラクレスさん。」


菊だった。本当に。すごくびしょびしょだった。
あまりにもびっくりして嬉しくて、「こんにちは」とか「どうしたの?」とか言い返したいのに言葉が出なかった。
菊はなんだか楽しそうな笑みを浮かべている。

「……………?」

「えと、こんな日に来るのは迷惑だと思ったのですが…」

迷惑なんかじゃないよと言ったら、また笑った。

「私の家では梅雨明けをしてさっぱり晴れてるので、遊びに来ませんか?」


すごく、嬉しかった。
梅雨明けの報告をわざわざ教えに来てくれた。雨でびしょびしょになりながら。
家に遊びに来ませんかと誘ってくれた。
もちろん行かないわけがない。

ありがとう、ありがとう菊。
好きだよ、大好きだよ菊。

「っ行きマス…!」



雨の日は嫌い。
でも今日はすごく好き。
降ってくれてありがとう。(その前に…菊、風邪引いちゃう。風呂入ってきていいよ…)
(大丈夫ですよこのくらい…ヘクシッ!)
(ほら…)


end
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