「いってきます」

 そう言って、元気よく、家から、出て行ったのは渡辺孝之、8歳だった。

 彼が向かった先はなんと、閑静な住宅街には似遣わないすごい豪邸であった。

 「こんにちは」

 ピンポーンと、ベルを鳴らすと、中から、男性とは思えない美しい人が出できた。

 「やあ、孝之君、待ってたよ」

 「椿兄ちゃん、こんにちは」

 元気いっぱいな孝之の挨拶に笑顔で、出迎えてくれたのはこの家のお坊ちゃんの椿壮一であった。

 彼は孝之よりも、2つ上のお兄さんであった。

 「孝之兄ちゃん、今日も勝負しようぜ」  

 勝負というのはラジコンのことだった。

 「もちろんだよ、孝之」

 にっこりと微笑まれ、思わず、ドキッとしてしまった孝之は頬が赤らめてしまっているのを悟られたくなくて、思わず、椿から、目を逸らした。

 そんな孝之を見て、「かわいい」と椿は思った。(もちろん、本人に言えば、怒られるであろうが…)

 「今日こそは絶対に勝つぞ」

 とは言え、今まで、一度も、孝之は椿に勝てたことがなかった。

 なんたって、彼は「ブラックパピヨン」という名でラジコン会で、有名な人物なのだ。

 そんな椿にまだまだ、ラジコンを始めて、1ヶ月も満たない初心者である孝之が勝てるはずがなかった。

 「努力は認めるけどね」

 自分に勝ちたいがために、孝之がかなり、努力していることを椿は知っていた。

 とは言え、椿には負けてやる気など、さらさら、なかったが。

 例え、わざと、自分が負けたとしても、真面目な孝之のこと、喜ぶはずがないだろう。

 「いつか、自分の力で、絶対に勝ってみせる」が、孝之の日々の目標であった。

 が、しかし、現実はそんなに甘いはずがなかった。

 「ちくしょう、今日も、負けた」

 これで、10連敗の孝之はすごく、悔しそうに、その場に座り込んでしまった。

 「惜しかったね、孝之」

 そう言って、孝之の頭を撫で、慰める椿はしかし、どことなく、嬉しそうであった。

 「さて、じゃあ、今日は何をしてもらおうかな」

 その言葉に孝之はビクっとした。

 負けた者は勝った者の言うことを聞く(つまりは奴隷)になるということが、勝負の条件だった。

 普通なら、肩もみや、掃除、買い物に行かせたり(要はパシリ扱い)させるくらいのことなのだが、椿が孝之にさせることは性的なことであった。

 「今日もまた、おちんちん、自分で弄るのかよ」

 いつも、椿が孝之にさせていることは自慰行為のようだ。

 それを思い出したらしい孝之は思わず、顔が赤らんできてしまった。

 「今日は違うかな。とにかく、僕の部屋に行こうか」

 そう言って、孝之は椿に腕を引かれながら、彼の部屋へと、渋々、行くことになったのだった。

 着いたと同時にベッドに座らされ、孝之は戸惑うばかりであった。

 「何をするの」

 恐る恐る椿に訪ねる孝之の声はどこか儚げで、震えていた。

 「まず、服を脱いで貰おうかな」

 「服、脱げばいいの」

 どうしてかと、疑問に思いつつも、負けてしまった以上、逆らえない孝之はしかたなく、服を脱いで、下着姿になった。

 「脱いだよ」

 「いい子だね」

 そう言われても、孝之は嬉しいわけがなかった。

 「次はどうするの」

 「パンツから、孝之のかわいいおちんちんだけ、出してくれるかな」

 「な、なんで、そんなことしなくちゃいけないの」

 「逆らうの、孝之」

 低い声で、名前を呼ばれて、孝之はゾクリとなった。

 逆らえば、光輝が、俺の代わりをさせられるのだから、孝之が逆らえるはずがなかった。

 光輝とは孝之の幼なじみである。

 「わかったよ」

 親友を巻き込みたくないという気持ちを胸に、孝之はしかたなく、椿の命令通りに、下着から、孝之自身を出したのであった。

 孝之自身は小さいにも関わらず、きちんと、己を主張(勃起)していた。

 「かわいいね、孝之のおちんちん」

 そう言いながら、孝之自身に触れる椿は美しく、清廉潔白なイメージとして、周りから、思われている彼とは全く、違っていた。

 エッチ、スケベ、変態という言葉が今の椿にはお似合いであると孝之は心の中で、思った。

 もちろん、面と向かって、椿に言えるはずがないのが、孝之であった。

 「さて、どうしようかな」

 その言葉と同時にいきなり、ベッドに上がってきた椿は孝之の背後に周り込んできたのであった。

 「たまには趣向を変えてみようか、孝之」

 そう言って、にっこりと微笑むと、同時に椿は孝之の両足をガバッと、思い切り、開いたのであった。

 「な…!!!」 
 
 突然のことにパニクるしかない孝之。

 赤ん坊でもないのに、己自身を眼前にされ、孝之は恥ずかしくて、思わず、泣きたくなってしまった。

 「泣くんじゃないよ、孝之」

 ヨシヨシと、椿が頭を撫でながら、慰めても、今の孝之には全く、無意味なことであった。

 「椿…ひっく…兄…ちゃん、やっぱり…ひっく…俺の…こと、嫌い…ひっく…なんだな」

 「違うよ、孝之」

 自分はただ、孝之がかわいいだけなのに、どうして、そうなってしまうのかと、椿はオロオロするほかなかった。

 「だって…ひっく…兄ちゃん…変なこと…ひっく…ば…ひっく…ばっかり、するん…ひっく…だもん」

 変なこととはつまりはエッチなこということだろう。

 「ごめんね、孝之」

 好きなのに、本当は優しくしたいのに、孝之を見ていると、ついつい、加虐心をくすぐられてしまうのだ。

 孝之が泣くまで、気づかないなんて、自分はなんて、馬鹿な人間なのかと、椿は心の底から、思い、孝之を抱きしめた。

 「孝之、好きだよ」

 「…れも、好きだ」

 「孝之」

 掠れ気味ではあるが、孝之の言葉は椿には伝わったらしく、孝之は後ろから、抱きしめられながら、顔だけくいっと、上げられ、椿の口づけを受けたのであった。

 「なんてことになったかもしれないよね」

 うっとりとした顔で、生徒会室の机の上に肩肘を付いているのは副会長様の椿壮一であった。

 「ハア、やっぱり、8年前に出会ったときに、口説いていればよかった」

 「椿は本当に孝之君が好きだね」

 彼が、どんな想像をして、そう思ったのかなど、親友の秋津島にはお見通しのようであった。

 そして、自分以上の変態であるということも…

 「好きだよ、かわいいし、本当は誰の目にも、晒したくないくらいにね」

 恐ろしい状態をと思うが、椿なら、やりかねないと、秋津島は思った。

 「子供の孝之もかわいいけど、やっぱり、今の孝之が一番だね」
 
 そう言って、窓の景色を見つつ、椿は紅茶を一口飲んだのであった。

 一方、孝之はその頃、教室で大きなくしゃみをしていたのであった。

 もちろん、そのくしゃみの元凶は椿壮一であったのは言うまでもなかった。

        おわり