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ほろ苦い飴玉

 任務帰りにいきなり、リアの奴が俺の自室にやってきたかと思うと、突然、袋を渡された。

 中を開いてみると、たくさんの子供が喜びそうな菓子がたくさん、入っていた。

 「なんだ、これは」

 「何って、お菓子だろう」

 「そんなことは分かっている。俺が言いたいのはなぜ、いきなり、、菓子の袋なんか、よこしてきたのかということだ」

 「なんでって、友達だからだろう」

 リアの話しによると、任務帰りにロクサスと、駄菓子屋にたち寄り、そこで、袋詰め放題100マニーということだったらしく、ロクサスとシオンと一緒に買ったらしい。

 「100マニーは安いからな。買わなきゃ、損だろう」

 そう言ってリアは袋の中から、チョコを取り出し、口に入れた。

 「うまいな」

 「お前の分はないのか??」

 先ほど、リアが口にしたものは俺がもらった物だった。

 「ねえよ」

 「なぜ??」

 「なんでって、そりゃ、アイザと一緒に食べるからだろう」

 たしかに一人分にしては少し、大きい袋で、量が多いとは思っていたが、まさか、二人分だったとは考えつかなかった。

 「なるほどな、だが、なんで、一緒に食べるんだ??」

 リアなら、ロクサスや、シオンなど、一緒に食べてくれる奴らはたくさんいるだろう。

 「アイザは一番の親友だからな、うまいもんはやっぱり、親友と食べるのが、一番だろう」

 「お前も食えよ」と言って、リアが渡してきたのはピンク色の飴玉だった。

 色からしておそらく、桃味だろうと、口に含んでみると、それは俺の予想と外れて、見た目からは全く想像のつかない味だった。

 「桃味ではないのか」

 「その飴玉、見た目と味が、全く、違うみたいだぜ」

 「お前も食べたのか??」

 「ああ、ロクサスにもらってな」

 「ロクサスだと」

 どうやら、俺の部屋に来る前にロクサスから、飴玉を貰ったらしい。
 
 「見た目は緑色だから、てっきり、メロン味かと思ったら、まさか、さくらんぼ味だもんな」

 「まんまと騙されたぜ」と両腕を後ろで組みながら、笑うリア。

 「ほんとに仲が良いんだな」
 
 「ん、なんか、言ったか??」

 ロクサスは奴に似ている気がする。   
 まだ、俺達に心があり、人間だった頃にリアが、興味を引かれた少年に。

 だからだろうか。リアがロクサスに惹かれるのは‥‥

 「妬けるな」

 あのときまで、リアには俺だけだった。

 「目的達成のために、二人で、頑張ろうな」

 目的のために二人で、頑張ってきた。

 それはこれからも、変わらないだろう。

 いや、変わらないでほしいというのが俺の願いだろう。

 だが、もし、二人の間で何かあり、対立することになったら、俺はきっと、リアに刃を向けるだろう。

 (きっと、リアも)

 「仕方ないことか」

 「あ、何が、仕方ないって」

 「なんでもない。それよりも、そんなにバクバク、食うな。俺の分も取っておけ」

 いつの間にか、袋の中身はほとんど、無くなっていた。

 どうやら、リアがほとんど、食べてしまったらしい。

 「だって、ずっと、机に置いとくってことは「いらないから、食べてくれ」ってことだろう」

 「勝手に解釈するな。それに机の上に置いておくのは後で、食べようと思ったからだ」

 「後でなんかじゃ、全部、俺に食われちまうぜ」

 貰ったり、買ったりしたものはすぐに食べるリアに対して、俺はどちらかというと、すぐには食べずに後で食べようと取っておくほうであった。

 そのたびにリアに食べられたものだ。

 「すぐに食べないってことは「いらないから、食べてください」ってことだろう」

 昔から、変わらないリア。

 だけど、俺は変わってしまったようだ。

 俺は欲望的な意味も含めて、リアのことを見ている。

 いつからだろうか。

 自分ではわからないうちから、リアを親友以上の存在として見るようになっていた。

 誰にも、笑いかけてほしくない。

 欲望に任せて、リアを抱きたい。

 どこかに、閉じ込めてしまいたい。

 そう思ったのはもう、何度目になるだろうか。

 (いっそのこと、そうしてしまおうか)

 だが、出来なかった。

 俺の心を留めさせたのはリアの俺に対する信頼だった。

 もし、俺が思っていることを行動に移してしまったら、リアは俺を親友とは思わなくなり、憎むだろう。

 そんなことにはなりたくないから、これからも、自分の思いは隠し通し、親友として付き合っていくつもりだ。

 「失いたくないからな」

 「誰をだよ。もしかして、お前、好きな奴、出来たのか」

 「とうとう、アイザも、童貞卒業かぁ、いやぁ、お兄さんは嬉しい限りだ」などと言っているリアの頭を叩きつけ、俺は袋の中から、さっきとは違う飴玉を取り、口に含んだのであった。

 それはオレンジ色の見た目とは全く、違うほろ苦い味だった。
 
 
           エンド

 
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