何でも無い日。
けれど、不意に求めたくなる。


それでも、アナタは。
此処にはいなくて。




【虚空】




『スマン!
 宿題が終わらんけぇ、電話は無理じゃ(汗)』


深夜2時。
ほんの数分前に、彼からメールが来た。
内容は、何時間か前にワタシから言い出したお願いへの、2度目の返事。


『気にしないで下さい。
 それよりも、明日も朝練がありますから、体調にはくれぐれも気をつけて下さいね。
 おやすみなさい。』


つい今し方、彼に返したメール。
内容は、返事への返事。


『おぉ、スマンのぅ。
 有難しゃん。』


たった今、彼から来たメール。
内容はよく読まずに、小さく音を立てて携帯を閉じた。




自分のベッドの上。
小さく吐いた溜め息だけが、無音の室内に響く。
手から携帯を放して、枕許の定位置へ。
自らもその場に身体を横たえて、見上げるのは無機質な天井。


今日みたいな事は、珍しい事ではない。
それに、電話など基本的にはしない。
だから、このシンとした部屋もいつもの事。




…それでも何処か、心の中にある空虚。




「ワタシは…アナタの事をこんなにも……」


“想っているのに”
言葉に出そうとしていた音が、静かに目の端からこぼれた。


彼に嫌われたのではない、分かっているのに。
彼の声が聞けるのを期待して、待っていたから。
余計に、気持ちが暴走する。




何か、特別な事があった訳ではない。
日が昇れば、また学校で逢える。
それでも、人間故に。
心の調子が悪い日はあって。
唯、なんとなく。
…けれど、確実に。
其の心は、彼を求めていた。


(夢でならば、逢えるだろうか。)


顔に浮かぶ自嘲から、目を逸らして。
その侭、目を閉じた。




END.




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ダメですよ。
1度言った事は、ちゃんと守らないと。