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蠅の王

ルールというのは、必要に応じて作られる。

中には面倒臭いルールもある。

ウザい校則とかね。

髪の色と頭の中身は関係ねえだろ……とか、僕も反発を覚えてた人間のひとりだ。



夏休みも終わる。

新学期に備え、慌てて髪を染め直す時期だよな。

一時的に校則を解かれたのでスーパーサイア人になってみました←程度のルール違反なら問題ないだろ。


でも、明日から法律が変わり、未成年でも飲酒喫煙が許可されたら?

自分の責任内で楽しみます…って人もいるかな?


じゃあ、他人の物を盗んでも罪に問われないとしたら?


人を殺しても、何の罰則も受けないとしたら?




有り得ない話だし、仮にあったと想定しても

「私には人としてのモラルがあるので、他人を傷つけたりはしません」

そう答えるだろう。



しかし、モラルなんて、自分が信じるほど強固なものじゃないかもしれない。







ルールとは何か?

未熟な人間性がルールという規制を失くすとき、人間は、果たして人間でいられるのか?



ダークな15少年漂流記……
いや…これは一種のシミュレーション小説として読むべきだ。



不幸にも南海の孤島に閉じ込められた少年たちは、社会から切り離され、自分たちの力で生き抜くことを余儀なくされる。

しかし、過酷な条件下で諍いが起こり、徐々に利己的な言動に傾きだす。

そこで、彼らは独自のルールを作り、そのルールのもとで行動しようとする。

至って単純なルール、ホラ貝を手にしている者に発言権が与えられるという、王様ゲームみたいなものだ。

当初、ルールは効力を発揮し稚拙ながらも社会を形成するが、ひとたび、ルールというものが権力に結びついたとき……

ルールは、平和を維持するものから醜いファシズムへと形を変え始める。

ホラ貝を持つ者は独裁者だ。

蠅の王は、あらゆる人間の中に眠っている。

自分の中の蠅の王を目覚めさせてしまった者は、こう叫ぶ。



俺がルールだ、と。



人間性の崩壊した個人が絶対権力を手に入れたとき、社会はどうなるか?

歴史を見れば分かる。

小説では、集団リンチ、そして陰惨な死があり、少年たちの作った小さな社会も崩壊してしまう。






これは、フィクションだろうか?




2010年上半期

児童虐待、検挙者数199人

過去最多……




この数字だけでは、実態は見えない。

数字はあくまでも表面化した事件の数で、見えない場所で、今この瞬間も怯え苦しんでいる子どもの数は分からない。



見えない場所…南海の孤島では、人間性を失った蠅の王たちが叫んでる。


私がルールだと。




今の法律では救えない。

僕らは、蠅の王たちからホラ貝を取り上げるための新しいルールを得なくちゃいけない。

1秒でも早く。

愛 憎

「オレさ、ズゲズゲ言い過ぎちゃってんのかね?
なんでこうも人に嫌われんのかね?」

職場の上司がそう尋ねてきた。





他のヤツは知らないけど、オレが嫌ってる理由なら教えてあげれますよ。

まず、その質問自体、デリカシーないにも程ありますよね…

とは言わず、

「そうすか? 考え過ぎじゃないっすか」

と軽く流した。





「そう思う?」





まさか……思わねえよ。





「まあ…いいんだけどさ、ガミガミ言って嫌われんのがオレの仕事みたいなもんだしさ」





いや…アンタの仕事は営業で、ガミガミ言われんのが仕事だろ。

得意先にイビられた腹いせに、横でグダグダ言われんのは邪魔なんすけど……





「キミなんか外面いいからなあ」





おい……外面いいは誉めてねえだろ。

オレどんだけ腹黒いヤツって思われてんだよ。





「ほんとはさ、キミみたいに口にも顔にも出さないタイプのほうが、叩かれ強いんだよなあ。オレなんか、こう見えて結構小さいこと気にすんのよ」





………なんだ?

その決めつけ。

言いたいことバンバン吐き出しちまったほうが、ストレス溜まらねえに決まってるだろ。

それよかうるさい。

マジ邪魔。

お願いだから、どっか行って。





「キミさ、あんま気にするほうじゃないでしょ?
最近の人は皆そうだけど、周りとか気にせず我が道を行くタイプだよね?」





もお〜…仕方ねえな。


「そんなことないっすよ。でも、人に嫌われてもそんな気にならないかもです。
オレ、嫌いな人間はとことんダメなんで、だから相手に嫌われても仕方ないですよ」





「キミが?!」

上司はわざとらしく驚いて言った。

「やっぱり嫌いな人間とかいるの?

そりゃいるよなあ。

でもさ、若いうちはいいよ。

オレみたいにさ、後数年もすりゃ退職って時になって、周りは敵だらけ、鬱陶しいから早くどっかに消えてくれって思われてんのはツラいぜ」





コイツ……怖ぇなってゾクッと感じた途端、

ちょっぴりだが……この狸オヤジ、それほど嫌いじゃないかもって思った。

思ったけど……早くどっか消えてくれ←

Thank you

14.Aug 



ダルは快調。

気晴らしに、ドライブに連れて行く。



公園の木陰で涼んでいたときだ、突然、ゆっくりとだが、ダルが自分の足で立ち上がる。











先行き不安だったが、希望が見えてくる。

以前のように、一緒に走ったり、じゃれたりは出来ないだろうけど、散歩くらいは出来るようになるかもしれない。



1時間ほど蝉の声を聞き、公園のカップルを眺め、草を噛み、僕らはのんびり過ごす。

目に映る何もかもが、素晴らしく美しかった。





15.Aug 



今日はとても面倒な約束が待っていた。

朝から、甥と姪を連れ映画に出掛ける。

途中、祖父から電話が入る。


「今日も暑いからな、気をつけて行ってこいよ」


それだけ。

なんだかおかしいとは感じたが、映画館に入るなり、お目当てのポケモングッズを手にした途端に帰るとグズりだした甥にキレかけ、そんなことはスッカリ忘れてしまう。

散財し、疲れきり、帰りの車で眠りこけてからやっと可愛く思えだした極悪幼児たちを連れ、なんとか任務を終える。





この朝、ダルは静かな眠りについていた。

8月15日、6時30分、祖父母が見守るなか、とても安らかに息を終えたそうだ。





16.Aug 



悲しみとショックと、よく分からない恐怖と……いろんな感情はあったけど、これは当然の痛みで、ダルが僕にくれたものだから大切にしたい痛みと喪失感でもあります。



ブログのみでの付き合いとはいえ、こういった出来事が友人に起きたとき、とても繊細な気持ちになってしまうことは僕も経験してます。

ここ数日、記事を上げてないにも関わらず幾度も訪問してくださった皆さん、そして、何らかの思いや言葉を胸に溜め置いてくださった皆さん、その優しさと思いやりに心から感謝します。

そして、その思いは充分に感じてます。

できれば、その思いはそっと胸にしまっておいてください。



言葉足らずで申し訳ないのですが、ダルを感じ、ダルの最期を優しく見守ってくださり、本当にありがとうございました。



老 犬…4

12.Aug 


退院の日、自分の認識の甘さをつくづく思い知る。


車に運び、車から降ろし、汚したペットシートの交換のたびに、たかだか20キロと余裕こいてたダルの重さは増していく。

こりゃ大変だと…僕が感じてるんだ。

たまたま盆休に入ってたから良かったが、これから先、祖父母だけでダルを介護してくのは無理だろう。

排泄の際も、体を動かせないダルは横たわったままだ。

量販店で購入してきた柔らかいスノコを敷くなどして工夫するが、広がった尿で毛が黄色く汚れる。

週に数回の入浴は、僕の仕事になりそうだ。





13.Aug 




前もって言うが、これは愛のなせる奇跡などではない。

そんなふうには、感じて欲しくない。


退院から2日目、不意にダルが自力で体を起こす。



「仮病だったんじゃないの」

母が笑いながら言う。

「ホームにもいるのよ。家族が甘やかすもんだから、自分じゃいっさい何もしないのね。でも、ホームじゃ出来ることは自分でやってもらうから、面会に来た家族が、ウチの爺さんは自分であんなことまで出来るのか…なんて驚くのよ。ダルは逆ね。病院で甘やかされてたんでしょ」




まさか……

ダルは首さえ動かない状態だったんだから、仮病なんてことはないだろうが……

母の言うことも、一部はうなずける。



犬はとても社会的な動物で、本来は群れで行動する。

今は駆除狩りなどで滅多に聞かないが、人の介入を受けない野犬も群れをなし、それぞれが自分の役割を認識して団体の規律を守る。

飼い犬の場合も同じだ。

彼らのリーダーは飼い主で、その指示を受け行動することで群れの一員としての役割を果たそうとする。

ダルは御覧の通り、ディズニーの101に登場する犬種だが、もともとが鴨猟犬なので気質的に服従心が強い。

群れから外れ、病院に入ったとき、人間的に言えばダルは生きがいをなくしてしまったんだと思う。

そうではないんだが……リーダーに見捨てられたような恐怖を体験したんだろう。


酷な話だと思われるかもしれないが、ダルが帰ってきたとき、僕らは無意識のうちに指示……というか、無理な願いを口にしてた。


ダル、立て

ダル、待て


ダルは、この群れの一員としての意識を取り戻した。

僕らの指示に応えようと、精いっぱい頑張った。



いろいろ湧いてくるんだが、やめておく。

犬と人間じゃ違うし。

でも、ダルは見ていた。



ダルが自分で起きたよ

ダルはすごい食欲だな

ダルったら、こんなにたくさんウンチして


そんなことを喜び笑う僕らの顔を見ていたし、自分が立派に指示を果たせたという犬なりの誇りを感じてくれたはずだ。

老 犬…3

「安楽死って? 男先生が言ったの!?」

母から報告を受けるなり、祖母は声を尖らせる。




「ええ、私だってもう1度聞き返すとこだったわよ。こっちは全然そんなつもりないのに」

医師の前ではプロの介護士って顔してたが、祖母の前では、母もただの娘になる。

「大学病院は無理ね。検査入院だけで10万円以上かかるって。で、こっからも遠いし。それで手術できないんじゃ、検査する意味ないじゃない」




「安楽死なんて……ダルはちゃんとウチで世話するわよ。最期まで、ちゃんと面倒みてあげるわよ」




意気盛んな女2人に対し、祖父はションボリ肩を落としてる。

ダルはもうダメなのか…

ポツンと呟いたきり、好きなビールもはかどらない。





僕は会話に加わる気にもなれず、ただいろいろ考える。

ダルのこと、祖父母のこと、他にも僕の知らない人たちのことを。



僕の祖父母は60代半で、仕事は引退してるが、それほど老いてるわけじゃない。

祖父の退職金や年金のおかげで、比較的安定した生活も送れてる。

それに、何よりも、3人の子どもの全てが近くに住んでいて、もし何かあれば、こうして実家に駆けつける。




医師が提示した安楽死という選択は、ある人たちにとっては……唯一残された悲しい現実なのかもしれない。

子どもや孫が離れ、仕事も終え人付き合いが疎遠になると、老後の寂しさから新しい家族を迎える。

大半のペットたちは、優しい飼い主に愛され幸せな生涯を送るだろう。

でも、ダルのように、障害を抱えてしまったペットはどうなる。

老犬とはいっても、ダルの体重は20キロ近い。

食事を与え、床ずれしないよう寝返りをうたせ、排泄物で汚れた体を洗ってあげることは、高齢者にとってどれだけの負担になるだろうか。



実は、祖父母の家では先月も猫が急性腎不全で治療を受けていて、それに5万ほど支払っている。

僕は、平均的な年金受取額というのを知らないが、こういったペットにかかる高額治療費を全ての老人が抱えられるとは思えない。

むしろ、そんな余裕があるのは極一部の恵まれた人たちで、今の日本の現状を見る限り、多くのお年寄りは自分の病気にかかる費用の工面すら苦心しておられるように思う。





もし、祖父母があと10才年老いてたら…

今ほど生活に余裕がなかったら…

そして、僕、母、叔父や叔母みんなが、遠く離れた地に暮らしているとしたら……


医師の言った安楽死という言葉は、情け深い響きを持って聞こえたんじゃないかな。

どんなに愛していても、どうしようもない現実と向き合わされる人たちは必ずいる。

それでも、飼い主たちが自分から愛するペットの死を口にすることはない。

そんなことは、自分たちに障害を抱えたペットを飼うことは不可能だと分かりきってたとしても、決して口には出来ないもんだ。

だから、医師は選択のひとつとして安楽死を提示するんだろう。

僕だって、安楽死という言葉を耳にした瞬間は、医師の冷徹さにショックを覚えた。

でも、あの先生は立派な人だ。

責任を持って治療してきた患者とその家族だからこそ、獣医師として、自から最も嫌な役を引き受けてくれたんだ。






「いつ退院させる?」

母は超楽天家だし……

「早いほうがいいわよ。明日にしましょ」




祖母は……

「そうね。じゃあ……家の中で診なくちゃいけないわねえ……

お父さん!!!

お父さんの部屋、ダルと半分コして使いなさいよ」

それを上回る楽天家だ。



母も祖母も、これから重度の障害を抱えたダルを迎えるというのに、異常に張り切ってる。


「大丈夫よ。家に帰ったらダルは良くなるわ。もともと気の小さい犬だから、病院じゃショゲちゃってんのよ」



「そうよねえ……ウチに帰ったら、元気になって、歩けるようになるかもしれないわね」



僕の家系は、代々この楽天家女たちによって支えられてきたものと思われる。
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