たとえ一方が選ばれたとしても、私たちは友達よ
そんな欺瞞
短編・一人称一人語り
それは、考えなしの約束だった。
きっと大丈夫。あたしなら大丈夫。
なんの根拠もない根拠で、約束をした。
「私たち、どちらが選ばれても恨みっこなし」
「正々堂々と恋をしましょ」
「たとえ一方が選ばれたって、私たちは友達よ」
自信があった。
たとえ私が選ばれたとしても、彼女とは友達でいられるって。
恋の一つや二つで断たれるような、柔な関係じゃない。
大好きな人まで一緒だなんて、あたしたち気があうとすら思ってた。
選ばれる自信はあった。
彼とは隣の席で、よく話していたし、彼への想いは、誰にも負けていないと思っていたから。
同じ委員会なだけの彼女には、負けないと思っていた。
それでも、選ばれなかった。
彼が選んだのは、あたしの大切な友達だった。
不安な夜もあった。
選ばれないかもしれない、と恐れた日もあった。
その繰り返し打ち消してきた不安が、現実になってしまった。
あたしは約束通り、彼女を祝った。
やっぱり適わないな、なんて笑ってみせた。
だけど、だけどなんであたしじゃないの?
どうしてあの子なの。どうして。
せめて、全く知らない子なら。せめて二人とも振られていたなら、よかったのに。
あたしと彼女の何が違うの。
あの子が撰ばれて、あたしが選ばれない理由はなに?
これから本当に友達でいられる?
彼と、彼女と、友達でいられる?
もしも彼に、あの子のこと相談されたら?
あの子の好きな色を教えて、だなんて訊いてきたら?
もしも彼女に、彼の話を聞かされたら?
彼とのデートの話をされてしまったら?
それをあたしに笑顔で対応しろというの!?
できない。無理。無理よ。
嫉妬する。恨んでしまう。
平静でなんて、いられない。
ああ、なんて愚かな約束をしてしまったの。
恋も友情も、どちらも手にいれようとした、あたしがバカだった。
どうか、二人とも。
こんなあたしでも嫌わないで。
2012-9-9 02:00