寒い日だった。
雪が降るほどではないが、とても寒かった。
今日も電気ストーブをつけっぱなしで一日を過ごした。
ストーブがあると暖かくてかなり快適だった。
しかしストーブが換気、換気と煩いので、窓を少し開けていた。
しばらく換気をしていると、気温が外と変わらなくなってきたので、窓を閉めようかと思い、窓に手をかけると大きなほこりの塊が居た。
見覚えがあるなあ、と思っているとほこりの塊が久しぶりであるな、と言った。
どうやらこの前、私の部屋を散らかして帰った、忌ま忌ましいほこりの塊だったようだ。
以前より大きくなったように感じる。
大きなほこりの塊は、今や巨大なほこりの塊になっていた。
また散らかしにきたのかほこりの塊よ、と言うと何度言ったら解るのだ、ゴミの精だと言ったろう、と憤慨しているようだった。
この間は悪いことをした、謝罪をしたい、とほこりの塊が言ったので部屋に招き入れた。
ほこりの塊はお茶など要らないようだったので出さなかった。
当然のことだった。
代わりにほこりの塊は、私の部屋のほこりを集めて自分にくっつけていった。
部屋がだいぶ綺麗になった。ような気になった。
そのままほこりの塊は、以前のように窓から跳んで行ってしまった。
何をしに来たのだろう。
すると部屋のドアがいきなり開いて、妹が部屋に遊びに来たので、気にしないことにした。
最近、所有する本が増えてきた。
わたしの部屋はウサギも住めないような狭さで、置く場所などない。
どうしよう。
そこであんまり良くない頭をフル回転させて考える。
………。
さすが私の頭脳、なにも思い浮かばなかった。
しかたがない、ということで本を縦に積み上げているのである。
本を積む最中、痛いだの角が取れるだの重いだの聞こえた気がするが、当然気のせいである。
本は紙の束であるから、言葉を発する事は出来ない。
口もないから声も出せない。
だけれども自分以外の声が聞こえるのも不思議で、いささか不気味だったので、作業を止めて耳を澄ます。
声が言うにはこうだった。
おまえはなにもわかっていない。
本というものはひじょうにデリケートなんだぞ。
たてにつむとはなにごとだ、けしからん。
もし、本がまがってしまったらどうするつもりだ、ばかもの。
かどもとれてしまうではないか。
あと、ふろあがりのどくしょは、ぺーじがふやけるからえんりょしろ。
ひつよういじょうにひろげてよむのも、くせがつくからやめろ。
本はちょしゃがなんどもこうそうをねってかきなおしたりしているおはなしがしるされているんだ、いうなればざいさんだな、もっとだいじにしろ。
いまいったことをりかいしたなら、いますぐそのさぎょうをやめろ、いいな。
なんて自分本位なメッセージだろう。
ところどころに罵倒の言葉が含まれていた上にどこか脅迫じみていた気がするが、これも気のせいだろう。
しかしこの声の主に出来ることなら言ってやりたい、時間が経てばなんでも劣化するんだよ、と。
もちろん、内容ではなく紙としての意味だ。
だけどもこの部屋には私しか居らず、そもそも声が聞こえたというのも気のせいだろうと思う。
ハッ、と根性の悪い笑いを漏らすと、積み途中の本たちが次々落ちて来た。
何者かの意志をかんじとったのだった。
家に帰ると不思議な生き物が私を出迎えてくれた。
その形状からは何の生き物を模しているのかは不明だった。
ソレはどうやら妹が連れて帰って来たらしい。
胸の所に妹の名前が付いていた事からわかった。
そしておそらく機械のようだ。
背中にスイッチらしき物があった。
好奇心でつけてみる。
ソレがいきなり動き始めたのでびっくりして落としてしまった。
その反動でパーツがばらばらになる。
慌ててパーツを拾い集める。
私にはどうすることも出来ない。
途方にくれる私。
妹に正直に謝ると、いつもの寛大な心で許してくれた。
そしてばらばらになったソレをいとも簡単に直してしまった。
妹はネ申だった。
私の部屋の窓は、半分も開かない。
クーラーが邪魔するからだ。
その窓を換気のために半分の半分ぐらい開けていた。
網戸も開けた。
虫が入ってくるかと思ったが、寒いし大丈夫だろうと決め付けた。
換気をしつつ学校の課題をこなしていると窓からおじゃまします、という声が聞こえた。
びっくりしてすかさず振り向くと、埃のでかい塊が窓の所に居た。
さらにびっくりした。
今、声を発したのはおまえか、と聞くとそうだ、と埃が答えた。
埃の塊が何しに来た、と聞くと埃は怒りだした。
私はただの埃の塊ではない!と声をあらげて言うものだから、ついに私の頭もイカれたかと思った。
しかし、まあ埃の言うことを聞いてやっても良いかと耳を傾けてみる事にした。
すると、埃は自身の事をゴミの精だと言い切った。
埃の言い分を聞いてやることにして、何しに来たんだ、と再度聞いてみた。
すると世の中を漂っているうちに疲れたので、ちょうど窓の開いていた私の部屋に休みに来た、らしい。
まあ何をするでもなく、害も無いようなので、休まったら勝手に帰れと言っておいた。
そして私は課題にまた向き合っていた。
しかししばらく後ろで物音がごそごそ煩いと感じたので、振り向くと…凄まじい光景だった。
あの埃が私の部屋をさばいていたのだった。
綺麗にしておいたはずなのに。
埃は沢山舞っているし、本や服も見事にぐちゃぐちゃだった。
さすがの私も頭にきて、何をしている!と怒鳴ってしまった。
埃は、ゆっくりとこちらを振り向いたように見えた。
そして悪びれもせずに言った。
部屋が落ち着かないので、自分の好きなように散らかしているのだ。と。
ここは私の部屋であって、おまえの好きなようにするのはおかしいだろう、と言うと埃は窓から跳んで行った。
慌てて外を見たが、でかい埃の塊なんて見当たらなかった。
というわけで、私の部屋は新年早々散らかっています。
朝起きて、朝食を摂ろうとダイニング兼リビングへと行くと、大勢のソイジョイがこちらを見ていた。
かなりびっくりした。
ので、思わず激写してしまったのだった。
色とりどり、より取り見取り。
きっと、朝ごはんとして食べて欲しかったに違いない。
様々な味があったので、選ぶのに大分迷った。
悩んでいる間中ずっと、ソイジョイ達は拙者を食べろ、と喚いていた。
ソイジョイはなぜか侍のような口調だった。
結局、選ばれたソイジョイはアップルでした。
かたじけない、美味しく食せ。
といわれた。
食べている間中、彼(?)の悲鳴が煩かったけれども、おいしくいただきました。