何故かスイッチが入ってるフィアとルカのお話です。
ついったでの「RTされたら~」系のお題。
ただしRTはされてないけど勝手に書きました←
創作ワンライの小説「弱虫の強がり」に微妙に繋がっているのかも、しれない…(笑)
フィアとルカメインですが、シストも絡んできます。
フィアとルカの関係ってやや微妙な感じですが、多分家族愛的な何か。
恋愛対象、ではないのか、否か…
解釈にお任せします…←
とりあえず珍しく素直で可愛いフィア嬢が書きたかった。
そしてそれを宥めるルカ兄さんが書きたかった。
それだけな感じのお話です(笑)
ともあれ、追記からお話です!
あ、診断のもとは此方です。
「オレ⇒俺」と「私⇒”私”」とちょっとだけ表記変更してます↓
星蘭は「この気持ちだけは、本当の事だから」「あいつが選んだのは、オレの手じゃなかった」「私なんかを愛してくれて、ありがとう」というセリフの入った話をRTされたら書いてください。
静かな月明かりが降り注ぐ、中庭。
そこにある大きな木の根元……
そこに腰かける亜麻色の髪の少年……フィアは小さく息を吐き出した。
吹き抜けていく、涼しい風。
夜になれば昼間の暑さも消える。
そう思いながら彼はふぅっと息を吐き出した。
少し離れた宴会場からは賑やかな声が聞こえてくる。
今日は、広間で宴会が行われているのだった。
フィアはそこから抜け出してきたのである。
別に、宴会は嫌いではない。
寧ろ、仲間たちと一緒に過ごせる良い機会だとは思うのだが……
如何せん、酒の匂いが駄目なのだ。
フィアはかなりアルコールに弱い。
周りで皆が酒を飲んでいたらそれだけで酔ってしまいそうになる。
だから、こうして抜け出してきたのだった。
「おいフィア」
とんっと肩を叩かれて、フィアは顔を上げた。
そこに立っていたのは長い紫の髪の少年……シスト。
それを見てフィアは目を細める。
「シストか……お前も、抜け出してきたのか?」
フィアは小さく首を傾げて、彼に問いかける。
シストは苦笑を漏らして"ちょっと悪酔いしそうだったからな"といった。
「隣、良いか?」
「あぁ、構わない」
シストの言葉にフィアは頷く。
それを見て、シストは彼の隣に腰を下ろした。
そして月を見上げる。
「おー……見事な月ですねぇ」
そう声を上げるシスト。
彼は手に持ったグラスを傾けた。
「なんだ、飲み物は持ってきたのか」
フィアはそんな彼を見て小さく笑う。
シストはそれを聞いて頷いた。
「まぁ、飲みたくないわけではなかったからな。
お前の分も持ってきてやったぜ?」
酔わないもんをな、といいながらシストはグラスの片方をフィアに渡す。
フィアは礼を言いながらそれを受け取った。
「んで?お前は何でこんなところで何黄昏てるんだ?」
そう問いかけるシスト。
その言葉にフィアは瞬きをする。
「黄昏……ていたか、俺は」
そう問いかけるフィア。
シストは苦笑しつつ、言った。
「黄昏てただろ、こんなとこで一人月を見上げてさ」
そういって、シストは笑う。
フィアはそれを聞いて少し唇を尖らせると、小さく溜息を吐き出した。
そして少し迷うように目を伏せた後、呟くような声で言った。
「……俺は、どうにも……素直になり切れないな、と思ってな」
そう呟くように言うフィア。
それを聞いてシストは思わず噴き出した。
そして可笑しそうに笑いながら言う。
「何を今更……ツンデレはお前の十八番だろ?」
「ツンデレいうな。
ったく……人が真面目に悩んでいるというのに」
フィアはそういうと溜め息を吐き出す。
そして月を見上げながら、いった。
「お前にもだけど……ルカに……さ。
素直に振る舞うことが出来ないんだ」
言いたいことはたくさんあるのに。
そういいながらフィアは溜息を吐き出す。
シストが持ってきてくれた飲み物を飲みながら、彼は目を伏せた。
「この前も……傷だらけで帰ってきたのに……
大丈夫かの一言も言えなかったし、来てくれてありがとうとも言えなかった」
そういいながら、フィアは目を伏せる。
シストはそんな彼の様子を見て、アメジストの瞳を細めた。
彼にしては珍しい反応だ。
なぜか、センチメンタルな気分になっているらしい。
そう思いつつ、シストはフィアに訊ねた。
「何でいきなりそんなことを?」
「ん……何で、何でだろう……な」
そう呟くように言うフィアの瞳は微かに濡れている。
これは一体どういうことか、とシストは思う。
さっきから、反応がいつもと違いすぎる……
そう考えた、その時。
シストははたと気が付いた。
「……フィア、お前……酒飲んだだろ」
思い当たる点といえばそれしかない。
極度に酒に弱いフィア。
酔いつぶれると酷く甘えん坊になることを、シストはよく知っていた。
例え酔いつぶれなくても、多少弱気になる。
多分、多少なりとも酒を飲んだのだろう。
シストがそう訊ねるとフィアは少し考える顔をした。
それから、呟くような声で言う。
「そう、だな……少しだけ、飲んだ」
「馬鹿だなぁ……いや、まぁ、良い機会か」
ある意味で、とシストは呟く。
それから気を取り直したようにフィアに行った。
「んで?何を言ってやりたいんだよ、ルカに。
お前が素直じゃないのは今更だが……
ルカだってそれを知ってるだろうよ」
シストはそう言う。
フィアはその言葉に小さく頷きつつ、言った。
「確かに、知ってると思う……
でも俺はいつもいつも彼奴には、馬鹿だの嫌いだのとしか言えないから……」
そんなこと、思っていないのに。
感謝しているし、大切だと思っているのに。
そう思いながらフィアはそっと、自分自身の胸に手を当てる。
「でも、さ……」
ふっと息を吐き出すフィア。
彼は目を伏せながら、呟くような声で言う。
「この気持ちだけは、本当の事だから」
ありがとうも。
いつもごめんねも。
伝えることは出来ないけれど、全部全部本当の気持ちだ。
フィアは呟くようにそういう。
シストはそんな彼を見て、目を細める。
そして、"いきなりどうしてそんなことを思ったんだよ"と呟くように言った。
それを聞いてフィアはふ、と目を伏せる。
そして、呟くような声で言った。
「この前……ルカがいっているのを、訊いたから、だろうな」
そういうフィア。
"彼奴がいっていたこと?"とシストが首を傾げると、フィアは小さく息を吐き出して、少し前のことを話した。
***
―― それは、少し前の話。
フィアが、任務を終えてルカのところに報告に行こうと思っていた時の事だった。
ルカの、部屋の前。
そこでフィアが足を止めた時、中から声が聞こえてきた。
「もう、俺が世話を焼いてやる年でもないんだろうなぁ……」
そんな、ルカの声。
それに応えたのは彼の友人であるクオンの声だった。
「まぁ、そうだろうなぁ……
フィアももう子供じゃないんだからさ」
盗み聞きをするつもりはなかったが、思わず、聴き入った。
最初に聞こえたルカの声が、酷く寂しげだったから……
「前に、雪狼のメンツで任務に行った時に、さ」
ルカはぽつぽつと語っていた。
クオンはそれに聴き入っている様子だった。
「彼奴が怪我をしたんだ、足に。
歩けるような怪我じゃなかったから、肩を貸そうと思って手を出したんだが……」
そこでルカは言葉を切った。
溜息を吐いているのだろう。
フィアはそう思った。
暫しの、沈黙。
そして彼は呟くような声で言った。
「あいつが選んだのは、俺の手じゃなかった」
あの時のことか、とフィアは思い出す。
確かに、雪狼の騎士たちで任務に赴いた時、フィアは怪我をした。
心配そうな顔をしたルカが駆け寄って来たのも覚えている。
……その手を、無視したことも。
あの時、フィアが掴んだのは傍にいたシストの手だった。
"俺は平気だ!"とだけいって、シストにしがみついた。
"お前の手は借りん!"と叫んだのも、覚えている。
……けれど、あれに悪意はなかった。
ルカに、余計な心配をかけたくなかった。
それに何より……
慣れた彼の手を取ってしまったら、あの場で泣き出してしまう気がして……
しかしルカはそれを気にしていたらしい。
それを想うと、何だかひどく胸が痛んで、あの時は暫くルカに報告に行くことが出来なかった。
そのあと報告しに行った時のルカもいつも通りに振舞っていたから、余計に……
あの時のことが、記憶から離れない。
それが、今頃になって、頭に蘇ったのだった……
***
「いってやれなかったんだ……
お前が嫌いなわけでも、お前の傍を離れたいと思ったわけでもないって……」
そういってやれば彼は安心出来ただろうに。
そういったフィアの瞳からぽろり、と涙が落ちた。
それを見て、シストは少し焦った顔をする。
「お、おい、泣くなよフィア……」
どうしてやったらいいか、わかんなくなるだろ。
そういって宥めるが、一度涙腺が崩壊したフィアは泣き止まない。
それでも必死に涙を堪えようとしているようで、彼の手は小さく震えていた。
「おいフィアってば……」
そういいながらシストはフィアの手から先程自分が渡したグラスを奪い取って……気づいた。
「……やらかしたな、これもアルコール入ってるか」
そう呟いて、シストは溜息を吐き出す。
状況を、悪化させた。
そう思いながら。
「ごめんって……言ってやりたかった、のに……」
そう呟くフィアは既に寝落ち寸前だ。
仕方ない。
そう呟いて、シストはフィアを支えて、立ち上がる。
「此奴の保護者に、届けに行くか」
そう、呟きながら。
***
柔らかなぬくもりに、包まれる。
そっと、額を撫でられた。
大きな、慣れた手。
それを感じながら、フィアはゆっくりと目を開けた。
「目が覚めたかよ」
酔っぱらい、といいながらフィアの額を小突いたのは、黒髪に赤い瞳の青年……ルカだった。
フィアはサファイアの瞳を瞬かせて、"ルカ"と彼の名を呼ぶ。
「随分酔ってるみたいだな……大丈夫か?」
頭痛かったり気持ち悪かったりしないか?
そう問いかける、ルカ。
その言葉に答えることなく、フィアはじっと彼を見つめた。
「……何だ、どうした?」
やっぱり気分悪いのか?
ルカがそう訊ねると同時……
フィアはぎゅっと、ルカに抱き付いた。
「うぉっ?!」
どうした?
ルカは驚いた声を上げる。
「……完全に酔ってんな……」
ルカは苦笑を漏らす。
そしてフィアを引きはがそうとした、その時。
「ルカ……ごめん」
掠れた、小さな声で詫びるフィア。
その言葉にルカは不思議そうに首を傾げる。
「ごめんって?」
「あの時……怪我した俺に、手を貸そうとしてくれたのに、あんなこと言って……ごめん」
彼の言葉に、ルカは大きく目を見開いた。
その言葉の意味は、ルカにもよくわかっていたから。
暫し驚きで固まっていたルカだったが、すぐにふっと微笑んだ。
そして"もしかして聞いてたのか、俺の情けないぼやき"と呟いてから、そっとフィアの頭を撫でる。
「気にしてねぇよ、いつものお前の反応だなと思っただけだ」
そういって苦笑するルカ。
フィアはふるふると首を振ってから、ルカを見上げる。
涙に濡れたサファイアの瞳。
それを細めながら、フィアはルカにいう。
「いつも、上手く感謝出来なくて、ごめん……
"私"なんかを愛してくれて、ありがとう」
家族として、仲間として、愛してくれてありがとう。
そういうフィアの頬に、涙が伝った。
ルカは思わぬ彼の言葉にゆっくりと瞬きをした。
そして目を細める。
「……当たり前だろ?お前は俺の大事な従妹で、仲間なんだから」
全部全部わかってる。
お前の気持ちも、全部。
そういいながらルカはフィアをベッドに寝かせた。
優しく頭を撫でてやりながら、彼はいう。
「とにかく寝ろ。明日はお前は休みだ」
ゆっくりしとけ。
そういって微笑むルカ。
フィアはそれを聞いてゆっくりと頷いた。
「おやすみ、ルカ……」
そういうとすぐに目を閉じる、フィア。
その姿を見て、ルカは目を細める。
そして、ふっと息を吐き出しながら、呟くように言った。
「ったく……酔いつぶれてなきゃ、こんなこと言えないなんてなぁ」
難儀な奴だ。
そういいながらルカはそっとフィアの額を撫でる。
その瞳は彼を慈しむような優しい光を灯していた……――
―― 伝えたい言葉は ――
(伝えたい言葉はたくさんあった。
ごめんねも、ありがとうも、…大切だという感情も)
(それを上手く伝えられるほどお前が器用じゃないことはよく知っている。
だから大丈夫だ、心配しなくていいんだぞ…?)