件のIFパロシリーズなお話です。
こういうシリアスなやり取り書きたくて…←
少しずつ自分以外の中から大切な人の記憶が消えるのって切ないですよね←
*attention*
件のIFパロシリーズのお話です
ワルキューレメンバーメイン?
シリアスなお話デス
IFパロ設定なお話です
フォルは相変わらずやることが狂ってる←おい
反応を返さない大佐殿と、それを良いことに好き勝手するフォル
唯一大佐殿の記憶があるヘフテンさんと、少しずつ忘れていくほかの人たち
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
揺れる、揺れる、視界。
揺れる揺れる、世界。
空気が揺らぎ、世界が歪み、新しい世界が作られていく。
新しい秩序。
新しい世界。
創りかえられていくそれを見つめる堕天使は、愉快そうに嗤った。
「ふふふ……あははははっ!
スゴい、すごいよ、大佐殿!」
自分が腕に抱く、人形のように微動だにしない少年。
彼の体を揺らしながら、フォルはいった。
「本当に創れちゃった、この世界」
くすくすと笑うフォルはまるで子供のようにはしゃいでいる。
その目の前で、創り上げられていく世界……――
まるで砂の城でも作られているのを見ているかのように無邪気に笑う堕天使。
彼は自分の腕に抱かれたまま眠る少年……クラウスを見つめ、目を細めた。
そして、歌うような声で言う。
「見えてる?ねぇ、見えてる?」
新しい世界だよ。
"君の魔力"で創りあげた、新しい世界だ。
フォルはそういいながら笑う。
―― そう。
眼前で起きている現象……
それは、新たな世界の構築だった。
大地が、海が、山が、川が、作られていく。
新しい秩序が、生まれていく。
人々は、その秩序の下に生活を始めて……――
それは、堕天使が望む世界。
堕天使が生きやすい世界だった。
悪が尊ばれ、正義が疎まれる世界。
本来ならば存在しえない世界だった。
フォルがクラウスに持ちかけた提案。
それは、堕天使であるフォルが世界を破壊し、祓魔師であるクラウスが新しい世界を創るというもの。
しかし、フォルはその"契約"を少し違えた。
フォルは絶望に沈むクラウスの魔力……破魔の魔力を奪い、自分のものとした。
そして、自身で壊した世界に、新たな秩序を、世界を塗り重ねていったのだ。
クラウスは、眠ったまま目を覚まさない。
魔力は、完全にフォルのものとなっていた。
フォルは眠る彼の黒髪を指先でなぞる。
そして、目を細めながら言った。
「君なら何て言うかなぁ、怒る?」
この世界を見て、君は何を思うだろう。
そういいながら、フォルは優しくクラウスの髪を、頬を撫でた。
それでも反応を返さないクラウス。
その様子を見つめて、フォルは楽しそうに笑ったのだった。
***
静かな、月明かりが降り注ぐ夜……――
鮮やかな金髪の少年……ヘフテンは、一人空を見上げていた。
瞬く星。
美しい月。
それを見上げ、彼は緑の瞳を細める。
「大佐……」
小さく、呟く。
そしてふっと息を吐き出した。
頭をよぎる、隻眼の少年の姿。
最後に見たのはいつだっただろう。
ぐったりした様子だった……
彼は、まだ生きているのだろうか。
それとも、あの堕天使に?
そもそも、"この世界"の中で、彼の居場所は……?
そう、考えながら彼は小さく息を吐き出した。
この、世界。
それにヘフテンは違和感しかおぼえなかった。
まず、騎士団という存在はなくなった。
"悪である"として排除された。
よって、今ヘフテンがいるのはかつてはクラウスとその家族が暮らしていた屋敷だった。
一緒に居るのは、クラウスの友人であったクヴィルンハイムと、クラウスの兄であるベルトルト、アレクサンダー……
彼らは、微かに覚えていた。
"前の世界"のことも、クラウスの事も。
だから、この世界の違和に気づいた仲間として、あの憎い堕天使を倒す手段を考えて一緒に居たのだった。
この世界は、あの堕天使が創り上げたものだと、ヘフテンたちにだけはわかった。
しかしそれ以外の人間には、何もわかってなどいなくて、"この世界"が当たりまえの世界だった。
善悪が反転した世界。
悪が善で、善が悪である世界。
悪魔を崇拝し、天使を憎む世界……――
おかしい。
こんな世界、おかしい。
「こんな世界を、大佐が創るはずがない……」
ヘフテンはそう呟いた。
思い出すのは、あの別れ際の堕天使の言葉。
"絶望に沈む彼がどんな世界を創るかはわからないけど"という言葉。
この世界は、彼が創ったの?
一瞬そう思いはしたが……
すぐに、思い直した。
そんなはずがない。
こんな世界は、可笑しい。
きっとあの堕天使が、彼の神聖な魔力を使ってこの狂った世界を作り上げたのだろう。
そう思いながらヘフテンは、あの堕天使を憎んだ。
自分の愛しい人を連れ去った、あの堕天使。
善の存在である騎士たちを罪人として排除したあの堕天使を……
と、その時。
不意に傍に影が立った。
「ヘフテン君、そろそろ夕飯だよ」
そう声をかけてきた、ベルトルト。
ありがとうございます、と返事をしながらヘフテンは彼についていく。
こうして一緒に夕食をとるのは、当たり前になりつつあった。
……しかし。
今日は、一つ状況が違っていた。
「あれ?」
リビングにはいった時に抱いた違和感。
それは、そのテーブルにあったはずの椅子が一つなくなっていたことだった。
「ベルトルトさん、大佐の椅子は……片付けてしまったのですか」
そう問いかけるヘフテン。
いつもあったはずの椅子。
それが一つ、なくなっていた。
それは、クラウスの椅子で。
もしかしたら、置きっぱなしにしても悲しいだけだからと片付けたのかもしれない。
そう思って、ヘフテンは彼にその問いかけをしたことを悔やんだのだけれど……
ベルトルトは彼の質問に怪訝そうな顔をした。
そして小さく首を傾げながら、いう。
「……大佐?何のこと?」
「え」
思わぬ反応に、ヘフテンは目を見開く。
ベルトルトは何のことはないように夕食を並べながら、いった。
「いや、なんか椅子が多いなぁと思ってさ。
この前も一つ片付けたのに……」
そう。
この前も、一つ椅子を片付けた。
それは、この家で一緒に暮らしていた、クラウスが誰より可愛がっていた弟のものだった。
……そうだ。
あの時も、そうだった。
ヘフテンは、思う。
―― 忘れていく。
消えていくのだ。
記憶が。
……当然といえば、当然なのかもしれない。
そもそも、この世界で意識を取り戻した時に、自分やベルトルト、クヴィルンハイムに過去の記憶があったこと自体が不思議なのだ。
その所為で苦労もした。
新秩序に従えない、変わり者として蔑まれかけたこともあって……――
……もしかしたら。
彼らは、その秩序に従おうとしているのかもしれない。
無意識的に、毒されているというのが正解か。
どうやら、明確に"昔"の記憶があるのは自分だけらしい。
ヘフテンはそう思いながら、眉を下げた。
ちょうどそこにやってきた、クヴィルンハイムの方を見る。
そしてヘフテンは彼に問いかけた。
「あの……大佐のこと、覚えてますか」
そんな問いかけ。
それに、クヴィルンハイムはゆっくりと瞬きをする。
そして、首をかしげた。
「大佐……とは?
それは、階級のことでしょう」
一体何を言い出すのですか。
誰のことを言っているのですか。
そう問いかける声にヘフテンは"あぁ、やっぱり"と思う。
彼も、忘れていくのだ。
かけがえのない友人であった彼のことを。
どうしたんです?と首を傾げる彼と心配そうなベルトルトに首をふり、ヘフテンは俯く。
そんな彼の頬に、涙が伝い落ちていった。
―― 創られる世界と、消えゆく記憶 ――
(違う、違う、こんなのおかしい。
愛しい、愛しい彼がこんな狂った世界を創るはずがないんだ)
(消える、消える、消えていく。
貴方がいた証が、貴方の記憶が、消えていってしまうんだ…)