大佐殿とフォルメインのIFパロ話です。
完全大佐闇堕ちネタ?で…
ちょっとシリーズ化しそうなノリです←おい
*attention*
大佐殿とフォルのお話です
ヘフテンさん、クヴィルンハイムさん、ベルトルトお兄様も出てきます
シリアスなお話です
IFパロ
大佐殿闇堕ちネタちっく
主にフォルの言葉攻め
大佐殿の仲間も傷つけにかかります
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
静かな、打ち捨てられた教会。
そのなかに佇む、二つの影……
月明かりが、彼らを照らす。
時が止まっているかのような、静かで神聖な空間。
黒い大きな翼を持つ青年に抱かれる、隻眼の少年。
その虚ろな様子を見つめながら、堕天使は目を細めた。
「本当にいいんだね?」
そういって微笑む彼……フォル。
ゆっくりと動いた翼から、漆黒の羽が散った。
その言葉にシュタウフェンベルクは小さく頷いた。
「もう、いい……この世界は」
―― 壊れてしまえば、いい。
そう呟いて、シュタウフェンベルクは目を閉じた。
守ろうとした世界。
自分の命を賭して、孤独のなかで守り抜こうとした未来……
悪を滅ぼし、守ったその世界。
それを"最後"にもう一度、見る。
フォルは彼の様子を見て、目を細める。
そして彼をあやすようにいった。
「安心しなよ、大佐殿。
僕が壊して君が創る新しい世界はきっと君にも優しい世界になるからさ」
"君の力で作る世界だもの"
フォルはそういいながらサファイアブルーの瞳を細めた。
シュタウフェンベルクは静かな世界を見つめる。
自分が守ろうとしたその世界を。
自分を憎んだもの。
自分を疎んだもの。
自分を恐れたもの。
……自分が、愛したもの。
頭のなかをよぎる、そんな姿。
蔑みの視線。
悪を殺めた自分の血に染まる手。
自分を心配してくれた愛しい人たちの視線。
それを振りほどいた、自分の冷たい手……
「フォル」
小さな声で、彼は堕天使の名を呼んだ。
フォルはそれを聞いて微笑みながら小さく首をかしげる。
「どうしたの、祓魔師様?」
「……世界を創り変えるということは、人の記憶はどうなるんだ」
知っておきたいことだった。
今生きている人たちの記憶は、どうなるのか。
それを聞いてフォルは目を細める。
そして、いった。
「消えるね。そうしないと、新秩序のなかで混乱する」
当たり前だろう?
フォルはそういって微笑んだ。
彼の言葉にシュタウフェンベルクは俯く。
そして、小さく息を吐き出しながら、いった。
「……だとしたら」
ひとつ頼みがある。
シュタウフェンベルクはそういった。
フォルはそれを聞いて少し悩んだ顔をした後、小さく頷いた。
「いいよ、聞いてあげる」
君の力でやるんだしね。
フォルはそういいながら、軽くシュタウフェンベルクの頭を撫でる。
「私の、我が儘だけれど……――」
彼はその"我が儘"を口にする。
フォルはそれに頷いてやった。
彼の表情を聞いて、シュタウフェンベルクはほっとしたように力を抜いた。
「そろそろいくよ?」
フォルはそういう。
そろそろ時間だ、と。
"新しい世界を創ろう"と。
それを聞いてシュタウフェンベルクは小さく頷いた。
そしてふっと息を吐き出す。
「……――」
彼は、最期の言葉を呟く。
そして目を閉じた……――
***
少しずつ、崩壊していく世界。
それに騎士たちは戸惑っていた。
歪な、不気味な雲に覆われた空。
吹き抜ける不穏な風。
魔獣たちは吠え、絶えず地震が起こる。
「いったいなにが起きているんですか……」
そう呟く、クヴィルンハイム。
彼は、姿が見えなくなった友人の姿を探していた。
この現象が、明らかに異常で、その異常をただせるだけの力があるのが彼……シュタウフェンベルクだとわかっていたから。
金髪の少年、ヘフテンも彼の姿を探す。
それはただ、心配だったからだった。
「大佐……」
怖い。
不安だ。
何より、彼の姿が見えないことが。
きっと彼が傍にいてくれたらこんなに恐ろしくはない。
いつだってそうだったから。
どんな任務も、どんなさだめも、彼がいれば怖くなかった。
彼が、いてくれたら……――
と、その時。
不意に、彼らの頭上になにか……否、誰かが現れた。
「っ、フォル……!」
ヘフテンは憎しみのこもった声でそれ……堕天使の名前を呼んだ。
そしてすぐにはっとする。
空を飛ぶ堕天使に抱かれる、愛しい人。
「大佐!」
悲痛な声で呼ぶ。
それに気付いて、傍にいたクヴィルンハイムとシュタウフェンベルク……クラウスの兄、ベルトルトも顔をあげた。
「やぁやぁ皆さんこんにちは、いかがお過ごしかな?」
―― この世界の終焉の時を。
「世界の、終焉……?」
クヴィルンハイムはそう問い返す。
フォルはゆっくりと三人の前まで降りてきた。
彼に抱かれているクラウスはぴくりとも動かない。
ヘフテンは彼に手を伸ばそうとしたが、魔力で阻まれた。
ばちりとした痛みに、ヘフテンは顔を歪める。
それが、クラウスからの拒絶に感じて悲しかった。
「新しい世界を創る神様の眷属に人間風情が触れられると思うの?」
そういってにっこりと微笑むフォル。
彼はそこにいる三人を順番に見て笑いながら、いった。
「この世界はもうすぐ崩壊する。
そして新しい秩序のもとに、創り直されるんだ。
"正しい"世界にね」
そういって、フォルは笑う。
そして、楽しそうに笑いながら、いった。
「神は穢れた地を赦さない、罪に汚れた世界は破滅をもってその罪を贖うのさ」
千切れる空。
割れ行く大地。
あぁ、これを神の怒りと言わずしてなんというのだろう?
歌うようにそういって堕天使はサファイアの瞳を細めたのだった。
「穢れた地?何を……」
何を言い出すんだ。
ヘフテンがそういうとフォルは楽しそうに笑った。
そして、小さく首をかしげながら、いう。
「わからないの?彼も報われないなぁ」
ねえ大佐殿?
フォルはそういいながら抱いたシュタウフェンベルクの頭を撫でる。
相変わらず反応を示さない彼。
それを見て、ベルトルトは悲痛な顔をする。
「クラウス……!」
「そんな風に呼ぶならもっと早く彼に寄り添ってあげればよかったじゃないか」
フォルは冷たい声でいった。
その言葉に三人ははっと息を飲む。
その様子を見てフォルは目を細めて、いった。
「彼が一人ですべてを抱え込んで壊れる前に……彼が罪に潰される前に」
その言葉の意味は、理解出来た。
悪を殺し、一人罪を重ねていった彼の孤独な姿を、思い出して……
フォルは彼らの様子を見て笑った。
そして"どうやら思い当たることはあるみたいだね"と笑った。
「君たちなら知ってる話だよね?君たちは心正しき者たちになれなかったんだよ」
この世界を守り、救うことは出来ない。
君たちは"心正しき者"ではなかった。
そう、嘲るようにフォルはいった。
彼の言葉に悔しげな顔をする、三人。
クヴィルンハイムが何か言い返そうとしたが、フォルはそれを遮って、いった。
「彼の最後の言葉を教えてあげようか?
『私は彼らに見捨てられた』だったよ……
君たちの我が儘で一人で過酷な運命に従ったのにこんな仕打ちは酷いよね」
彼は君たちを守り、一人破滅した。
君たちが望むように悪を滅ぼして、その先に待つ孤独に一人立ち向かったのに。
フォルはそういう。
「な……」
その言葉に思わず絶句する。
彼の最後の言葉に。
「あぁ、別に彼は死んだ訳じゃあないけどね。でももう、目を覚ましはしないと思うよ?」
彼はもう壊れちゃったから。
フォルはそういいながらにっこりと微笑んで、ヘフテンやベルトルトの方を見ながら、いった。
「君たちは大佐殿の性格を人一倍知ってただろう?
何でも一人で抱え込む性格を利用して責任逃れしたかったんだ?」
「違……っ」
そんなはずがない。
自分だって、背負いたかった。
彼が持つ苦しみを。
彼が背負ってしまった罪を。
そういうヘフテンだったが、"それはどうだかねぇ"とフォルは笑った。
「それならどうして彼はあんなことをいったの?どうして彼は壊れてしまったの?」
彼の言葉に、紡ぐ言葉を失った。
事実、なのだ。
彼は、壊れてしまったという。
罪の意識で。
黙り込んだ彼らを見て、フォルは嗤う。
そして、もう一度空へと羽ばたきながら、いった。
「堕天使の僕が世界を壊して、神の眷属たる祓魔師の彼が新秩序を元に世界を再構築するんだ……
まあ最も、絶望に沈んだ彼が作る秩序かどういったものか僕にはわからないけどね」
そういいながらフォルは肩を竦めた。
そして指を鳴らす。
バキバキっと鋭い音が響いて、地面が割れた。
その場に座り込む騎士たちを見ながらフォルは羽ばたいて、空へ舞い上がる。
愛しげに、動かない祓魔師を抱いて。
そして悔しそうに、悲しそうに、自分を見上げる彼らを見下ろして、恭しく一礼した。
「じゃあ、新しい世界で会おう。
君たちも見届けるといいよ、彼が命をかけて守ろうとした世界の終焉を」
―― 新しい世界への、秒読み(カウントダウン)だ。
フォルはそういって、姿を消した。
吹き抜ける、不気味な風。
それに、漆黒の羽が舞った……
―― 壊れゆく世界 ――
(伝えた言葉は嘘じゃない。
彼は、確かにこの世界に絶望していたのだから)
(さぁ、創り直そう?
…君のその力さえあれば、どんな世界もつくれるさ)