大佐殿メインのお話です。
前の小説の続きで…
こういうシリアスというか、酷い感じのお話も好きです←
*attention*
大佐殿メインのお話です(一部BL注意です)
シリアスなお話です
「摩耗と拒絶」の続きです
心身ともに疲弊しきってる大佐殿
大佐殿に負担かかることしか言わない堕天使
こういう時はウソつきなフォルです←おい
美人な大佐殿が弱った状態でふらふらしてたらアブナイな、とか(^q^)
もうすべてのことを自分の所為だと思って受け入れちゃう美人さん萌えるなと
そろそろ救済があってもいいんじゃないかと思った結果
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
何日経っただろう。
ぼんやり考えたが、もうその考えをまとめるだけの気力もなかった。
薄暗い、静かな教会。
此処がクラウスにとって唯一の、落ち着ける場所となっていた。
食べ物は、堕天使が運んでくる。
けれど、それを食べることは出来なかった。
食べても、すぐに吐き出してしまう。
飲み込むことが出来なかった。
水は、辛うじて飲めた。
しかし気を付けて飲まないとそれもやはり吐き出してしまう。
そもそも、コップを持ち上げるだけの気力がなくて、ぐったりと横たわったままという事態が多々発生する最近だ。
そんな彼に水を飲ませるのは、それを持ってきた堕天使の仕事だった。
世話が焼けるなぁ、なんていいながら、フォルは彼に水を飲ませた。
彼の体を支える腕も、ゆっくりとコップを傾ける仕草も、何だか無駄に優しくて、おかしい。
自分がこんな風になったそもそもの元凶は彼なのに、と薄れた意識の中でぼんやりと考えもした。
自分は生かされている。
この、堕天使によって。
それは酷くみじめで、けれどそれと同時に、自分がまだ見捨てられていないという証明でもあって、それに安堵する自分が悔しかった。
「あぁそういえば」
いつものように食事と飲み物を運んできたフォルが、ふと思いついたように口を開いた。
彼の手で水を飲まされていたクラウスはぼんやりとした視線をフォルに向けた。
フォルはそんな彼を見つめながら、ふっと微笑む。
そして彼はクラウスの頬をなでながら、言った。
「君が起こした事件、城下町で騒ぎになってるんだ」
「っ、何……」
何を、言うのか。
クラウスはそう呟く。
フォルは動揺するクラウスを見つめ、楽しそうに言った。
「二十四人もの人間を巻き込んだ爆発なんて、そうそう起きるものじゃないからね。
いったい誰がそんな爆発を起こしたのか、王国警察も騎士団もつかみ切れていないみたいだね」
そういいながらフォルはクラウスの様子を窺う。
その口元には笑みが浮かんでいた。
その理由。
それは、この"報告"が嘘だったから。
あの爆発は、クラウスが"人を殺した"と思っているあの爆発は、すべて堕天使が仕組んだこと。
実際クラウスはひとりも殺めていない。
あの爆発で"死んだ"のは、すべてただの人形だから。
しかしフォルはそれを隠した。
明かすことなく、寧ろわざとあれをすべて真実だったとして語った。
城下が騒ぎになっている、と。
案の定、クラウスは動揺した表情を浮かべていた。
すっかり弱り、痩せた体を震わせた。
掠れた声が漏れるが、それは言葉になっていない。
その様を見てフォルは楽しそうに笑った。
―― あぁこの表情だ……
絶望。
恐怖。
悲しみ。
それらの感情を綯い交ぜにしたような表情。
これが見たかったのだと、フォルは恍惚の表情を浮かべる。
「ねぇ、暗殺者様……すごい成功だと思わない?
誰も犯人が分からないんだよ……
君が此処にいることも、ばれてない」
ま、それに関してはある意味騒ぎになってるけど。
フォルは小さく笑いながら、言う。
「君がいないって騒ぎにはなってるからね」
「っ、それ、は……」
どうしようもないことだ。
クラウスは小さく呟いて、目を伏せた。
乱れた呼吸。
飲み込んだ水がせりあがってくる気がした。
「帰れないよねぇ……
まさか、帰って自分があの事件の犯人です、なんて言えないもんねぇ?」
フォルはクラウスを追いつめるように言う。
その言葉にクラウスはぐっと胸のあたりを握りしめた。
細い、骨ばった手が小さく震えていた。
そうだ。
帰りたいと思えど、帰れない。
苦しいと思えど、誰にも頼れない。
だって、これは自分が取った行動が招いた結果。
それは、自分ひとりで受け入れなければならないもの。
誰を巻き込むことも出来ないと、そう思っていた。
そもそも……
自分がしたといってしまったら、自分だけでなく家族も巻き込んでしまう。
大事な兄が、弟が、悪く言われるのは嫌だった。
「ふふ……ペルの気持ちがわかったんじゃない?
暗殺者ってのは、孤独なもんだよ」
誰にも理解なんてされない。
それでも一人で生きるしかない。
仕方ないよね、とフォルは言う。
そして、クラウスをその場に座らせて立ち上がった。
"そろそろ帰るよ"といって姿を消してしまう。
夕暮れに染まる教会の中に、クラウスはひとり取り残された。
「孤独……か」
そう呟くクラウス。
彼はふ、と自嘲気味な表情を浮かべると、目を閉じた。
現実を見たくない。
もう、何も見たくない。
いっそ、死にたい。
そう思いもしたけれど……
うち捨てられたこの教会にもある十字架を見ると、死ぬことは、出来なかった。
彼はかなり信心深い性質だ。
そんな彼が、自ら命を絶つことが出来るはずがなかった。
食事もとらない。
水もとらない。
そんな状態だからそのうち死ねるだろうと思っていたけれど、案外人間の体は丈夫に出来ているものだ、とも思った。
クラウスは小さく息を吐き出すと、ゆっくりと立ち上がった。
そして、ふらふらと教会の外に出ていく。
何となく……本当に何となく、外の景色が見たいと思った。
もしかしたら死期が近いのかもしれない。
そんなことを考えながら、彼は近くにある街に向かっていった……――
***
近くの街にたどり着いた時、既に空はすっかり暗くなっていた。
ディアロ城の城下町より幾分廃れた雰囲気の街並み。
そこをクラウスはゆっくりと一人で歩いていく。
まだ、辛うじて歩くだけの気力はあった。
ふらふら。
くらくら。
虚ろな意識のままに、彼は目的もなく歩く。
夜空に煌めく星。
街並みに輝くネオン。
その光さえ、ぼやけてみえた。
本気で自分は、死んでしまうのかもしれない。
それを恐れると同時、心待ちにしている自分を感じて、クラウスは小さく息を吐き出した。
と、その時。
「なぁ」
不意に、肩を掴まれた。
びくり、と肩を震わせてクラウスはふり向く。
そこには、見たことない少年たちが立っていた。
クラウスより幾分年上、だろうか。
そんな少年たちはクラウスの顔を見ると少し驚いた顔をした。
「うわ、なんだこいつ……スッゲェ美人じゃん」
「このあたりで見たことない顔だな。
なんだ、観光客……って風にも見えないしな」
あの時の爆発で汚れてしまった制服のままのクラウスを見つめ少年の一人が言う。
此処は城からはかなり離れているし、もしかしたらクラウスが一体どういう人間なのかわからないのかもしれない。
クラウスはそんなことを考えながら、じっと少年を見つめた。
その視線に少年は目を丸くする。
それからにやりと、笑みをうかべた。
「ちょっと来いよ……どうせ、家出してきたかなんかだろ?」
―― 付き合えよ。
そういいながらリーダー格の少年は半ば強引にクラウスの腕を引っ張って歩き出す。
クラウスはその腕に逆らうことも出来ないままに、少年たちについていったのだった。
***
連れていかれたのは、街外れにある廃墟。
クラウスがいる教会も大概だが、そこより更にぼろぼろの小屋のような場所だった。
そこに着くと同時、リーダー格の少年は、クラウスの身体をそこにあった硬いベッドに押し倒した。
「今日は良い獲物が拾えてよかったなぁ……
アンタみたいな綺麗な"相手"そうそういねぇや」
舌なめずりでもしそうな表情を浮かべ、彼はクラウスの服を強引に肌蹴させた。
クラウスは必死にもがいたが、その抵抗は抵抗と呼ぶにはあまりに弱弱しい。
寧ろその場にいた少年たちを煽っただけのようだった。
強引に押し倒され、肌を嬲られる。
その手の感触に、クラウスは甘く喘いだ。
「ん……っ、ぁ……ふ」
息が苦しい。
そう思えど、口から洩れる嬌声は抑えられない。
必至に逃れようともがいたが、無意味だった。
「ははっ、可愛い声あげるなぁ?」
「おい代われよー?壊すなよ?」
そんな、からかうような声が飛ぶ。
クラウスがふるふると首を振っても、彼らの行為は止まらない。
無理矢理犯されるのに、時間はかからなかった。
「いっ、ぁあ……ぁっ、あ……」
悲鳴じみた嬌声。
体内を暴かれる感覚に必死に暴れようとするが、それだけで眩暈がした。
意識を、失いそうになる。
そんな彼を見て少年たちは"気持ちよくて意識飛びそうかよ?この淫乱"とからかいまじりの罵声を浴びた。
苦痛。
屈辱。
逃げ出したいとそう思ったけれど……
―― 嗚呼、これも罰なのかもしれない。
甘い悦楽と薄れた意識の中で、そう思った。
自分が犯した罪に対する罰。
ヒトとしての尊厳を奪われる。
それも罰の一つなのかもしれない、と思った。
諦めの表情を浮かべる彼。
それが、悦楽に壊れたようにでも見えたのだろう。
少年たちは、更に調子に乗って彼を犯した。
***
クラウスが解放されたのは、空が白み始めたころ。
流石に暴行したことが明るみになっては困ると思ったのか、半ば強引にシャワーを浴びさせた後、彼らはクラウスを追い出した。
まだ濡れたままの髪。
冷えた体。
まだ、自分がいた教会は遠い。
「っ……」
クラウスは歩く途中で力尽きた。
ぐったりと、その場に座り込む。
眩暈。
吐き気。
息苦しさ。
激しい頭痛。
もう、本当に死ぬのかもしれない。
でも、そうすればこの苦痛から解放される?
"あの光景"も、もう思い出さないで済む?
―― ああ、逃げだな。
情けない。
そう思いながら、クラウスは目を閉じる。
罪人である自分には似合いの最期かもしれないな、と思いながら。
その、時。
「……!」
声が、聞こえた。
夢の中でいつも聞く声かと思って思わず身構える。
しかし。
「……兄さん……っ!」
聞こえた、声。
それは、幻聴だろうか?
「……ペル?」
掠れた声で、自分を呼んだ声の主の名を紡ぐ。
薄く開いた目に映った影は酷くぼやけていて、それが誰であるか認識は、出来なかった。
そっと、体を支えられる感覚。
優しく頬に触れてきた手は、ひんやりと冷たかった。
思わず、体が逃げる。
触れてほしく、なくて。
―― 違う。
それだけでは、ない。
ほっとして、涙が出そうだったから。
よく見えないけれど、もし目の前にいるのが本当に弟(ペル)だったら、情けない姿を見せたくなくて。
しかしそんなことを考えるだけの思考も、もう消えていた。
食事をとることが出来ない彼は既に完全な栄養失調状態。
心身ともに極限まで衰弱した彼は、完全に意識を失ってしまった。
***
「クラウス、兄さん……っ」
ぐったりと自分に寄りかかったまま意識を失ってしまった兄を必死に呼ぶ少年……ペル。
しかしもう、クラウスは返事をしない。
「やっと、見つけた、のに……」
そう呟きながら、ペルはそっとクラウスの頬に触れる。
支えているかれの体は、最後に会ったときよりずっと、細くなってしまった気がした。
彼より三十センチも背が低い自分でも抱きかかえられるのではないかと思うほどに……――
ずっと、行方不明だった兄。
彼を皆が必死に探していた。
勿論、ペルも。
探した。
探し回った。
魔術を、呪術さえも、必死に使って。
そうしてようやく見つけられた兄は国のはずれにいて……
しかもこんなにも、衰弱してしまっていた。
一体何があったの。
どうしてこんなところにいるの。
どうして、なんで……
聞きたいことはたくさんあった。
けれど、今はそれどころではない。
「誰を、呼んだら……迎えに、来てくれる、かな」
ペルはそう思いながら、兄の体をぎゅっと抱きしめる。
彼の頬に涙が一筋伝っていった。
―― 全てを、受け入れて ――
(苦痛も、理不尽な現実も、全て受け入れて
だってそれが、私への"罰"なのだろうから…)
(やっと見つけだした、大好きな兄さん。
ねぇ、一体何があったの?どうして、こんなことになっているの…?)