フィア、ヒトラーさん、ゲッベルスさんでのお話です。
忠実寄りなゲッベルスさんを書いてみたかったのですが…
撃沈した感満載ですみません←
*attention*
フィア、ヒトラーさん、ゲッベルスさんのお話です
ゲッベルスさんが一応メイン、のはず
シリアスちっくなお話です
オリジナル寄りなゲッベルスさんを書いてみたくて…
まぁ、一応ありうる事態かなという…(笑)
フィアたちはそういうことにはとことん疎いので…
言霊というか、そういう力がありそうなゲッベルスさん
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
いつもは賑やかなディアロ城。
食事時には騎士たちで賑わう食堂……
夜も遅いこの時間には、ごく僅かな人間しかいない。
その隅で一人、水の入ったグラスを傾けている亜麻色の髪の少年の姿があった。
風呂上がりなのか少し濡れた髪。
いつもならば部屋にいる時間帯なのに彼……
フィアが此処にいるのは、少し考え事があるからだった。
一人部屋で悶々と悩んでいると、次の日の仕事にも支障を来しそうな気がして……――
と、その時。
ドアが開いて、誰かが入ってきた。
フィアはそちらに視線を向ける。
部屋に入ってきたのは、黒髪の少年と、紫髪の少年……
夜鷲の騎士である、ヒトラーとゲッベルスだった。
「ヒトラー様、ゲッベルス」
「フィア、お前も此処に居たのか」
ヒトラーはフィアを見てそういう。
フィアはこくりと頷きつつ、小さく首をかしげた。
「二人は何故此処に?今まで任務でしたか」
フィアの問いかけに、ゲッベルスがひょいとヒトラーの後ろから顔を出しつつ、
にっこりと笑って、いった。
「俺がちょっと今日遅くまで任務で出てたんですよぅ。
そうしたらちょうど総統が休憩に食堂にいくからって」
報告がてらついてきちゃいました、と彼は言う。
フィアはそれを見て小さく笑った。
ゲッベルスがヒトラーによく懐いているのは傍から見て知っていた。
懐いているというよりは、尊敬、敬愛しているというのか。
まぁ、周囲に対する態度とヒトラーに対する態度が違うというのが、
何より一番大きいけれど……
そんな二人を見て笑うフィアだが、やはりその表情に滲む憂い。
ヒトラーはそれに気がついたようで、空色の瞳をスッと細めた。
「何かあったか、フィア」
「え?」
ヒトラーの問いかけにフィアは少し驚いたような顔をした。
そんな彼の様子にヒトラーは視線を彷徨わせた後、いった。
「否……何だか、悩んでいるようだったから」
気のせいだったらすまない、とヒトラーは言う。
ゲッベルスはそんなヒトラーとフィアとを交互に見た。
フィアは少し目を伏せた後、ふっと息を吐き出した。
そして手に持ったグラスを揺らしつつ、いった。
「いえ……少し、気がかりなことがあるんですよ。
国のなかで、反王政の動きがあるみたいで」
「そうなのか?」
ヒトラーは少し驚いたような顔をした。
至極平和に見える、この国。
他国(そと)の人間であるヒトラーたちが少し心配になるくらい、
この国の人間は呑気で、国は平和に見えている。
しかしそんななかでもやはり、そういった不穏な動きはあるらしい。
ヒトラーの反応を見て、フィアはこくりと頷いた。
そう。
先程までフィアは外での任務にあたっていた。
いつも通りの、社交界の護衛。
そのなかで、気になる噂を耳にしたのだった。
ごくごく一部の、動き。
国主であるディナに対する反乱。
王政に対する反抗……
そんな動きがあるらしい、と。
「……あくまで、まだまだ小さな動きらしいのですが……
大きくなると厄介だなと」
そう思いまして、といってフィアは溜め息を吐き出す。
彼……否、彼女は王女ディナにも多いに世話になっている。
騎士であること以前に、彼女のことをしっかり守りたいと思っていることだろう。
この国の騎士として、その事態は憂うべき事態だ。
「そうか……その所為でそんな顔をしているのか」
ヒトラーは小さく呟くように言う。
ゲッベルスはそんな彼を見つめた後、フィアに視線を移して、問いかけた。
「この国でも、そういう動きってあるんですねぇ?」
「あぁ、俺も意外というか驚きではあったんだが……
やっぱり、周辺国だと男が国を治めてるところが多いだろう?
それもあるみたいでさ」
ディナの政治手腕は確かなものだと思う。
国内もおおよそ平和だし、極端な身分差別も生じてはいないはず。
奴隷制度は禁止されているし……
まぁ、もっとも。
そうして警戒心が薄く、従順で働き者なこの国の子供が、
誘拐された末に外国に売られるなんて言う痛ましい事件が発生したりするが、
その辺りは騎士団および警察の管轄で抑えている。
とはいえ、だ。
「それは、騎士団としても厄介な話ですよね」
ゲッベルスはフィアにそういった。
夜鷲の騎士はフィアたちと違って、王女に忠誠を誓っている訳ではないが、
それでも仲間および国が困ったことになると言うのなら、
放っておく訳にもいくまい。
フィアはゲッベルスの言葉に小さく頷いた。
そして苦笑混じりに"それで頭を悩ませてたんだよ"といった。
それを聞いて、ゲッベルスは少し考え込む表情を見せる。
そして、顔をあげて、フィアの方を見た。
「フィアさん、ちょっと俺に任せてもらえない?その問題」
たぶんなんとか出来るから、とゲッベルスは言う。
フィアはそれを聞いて大きく目を見開いた。
「俺は、勿論構わないと言うか……
このてのことには本当に疎いからよくわからないんだが……」
「大丈夫、俺に任せといてよ」
何とかして見せるからさとゲッベルスは言う。
ヒトラーも、そんな彼を見て"まぁ、ゲッベルスなら……"と頷いている。
フィアはそんな彼らを見つつ、少し目を伏せた。
その後顔をあげて、ゲッベルスに"頼むよ"といったのだった。
***
それから、数日。
ディアロ城の城下で、ある騒ぎが起こった。
概要的に言えば、簡単なもの。
フィアが危惧していた反王政派の集団がちょっとした騒ぎを起こしたのだ。
それの鎮圧に真っ先に赴いたのは、騎士団ではなかった。
他でもない、イリュジア王国民だ。
王政擁護側の人々が武器をとり、反乱組織の鎮圧に当たったのである。
騒ぎは大きくならず収まり、反王政派の人間は捕らえられた。
そうして呆気なく片はついたのだが……
そういう展開になったことに、騎士団の人間は少なからず驚いていた。
ゲッベルスと、事情を知る一部の人間を除いては。
***
「今まで国を守ってきたのは誰だ?
それに逆らおうとしてる者こそ悪じゃないのか?」
ゲッベルスは城下町の中心で、そう演説を行った。
周囲の人間は最初こそいったい何事かと訝しげな顔をするばかりだったが、
次第にその声に、話に、引き込まれていった。
国を揺るがしかねない、反乱分子。
それがある限り、この国の安寧は破られかねない。
「騎士団ばかり頼るのではない、自らも武器を取り、立ち上がるべきじゃないのか。
平和を脅かす存在は排除するべきではないのか!」
その声に、言葉に同調した国民が、全くその通りに動いた、というのが事の結末だ。
反乱分子もゲッベルスの演説に焦り動いて、自滅したというのが正解だが。
そうして、片はついた。
しかし……――
多少、騎士団内でもあの解決の形は問題だったんじゃないかと言う声があがった。
殊更、偶然ゲッベルスの演説を聞いていた一部の騎士からは。
そうした騒ぎのなかで、やはり負傷者は出た。
一部に重傷者、あるいは死者も出たという。
武器など持ちなれていない人間同士が戦ったのだから、それはありうる事態だった。
想像出来た事態だったのだから、ああするよう仕向けたのは、
流石にまずかったのではないかという声が、あがったのである。
しかしゲッベルスは冷静に、そんな声に返した。
「俺は国民に何ら強制してないよ。
アイツらが勝手に危機感もって動いてるだけ。
なにも、間違ったこといってないだろ?」
確かに、強制は一切していない。
危機感を持てと、そういっただけなのだ。
「その末にどれだけ犠牲が出ても、それはこっちの知ったことじゃあない。
自業自得ってやつだろ?」
やり方ってものがあるくらいには自力で気づかないと駄目だと思うしね、と、
ゲッベルスは小さく鼻を鳴らしながら言う。
―― そう。
やり方と言うものが、ある。
武力行使で騎士団が収めるのだって無論手法のひとつだが、
それでは、キリがないと言うケースだってありうるし、
何より王女に近い立場である騎士が動けば余計に騒ぎが大きくなりかねなかった。
だから。
あれが最高の方法。
ゲッベルスはそう思いつつ、目を閉じる。
どんな事態が起きようとも、自分は言葉で封じてみせる。
そう、思いながら。
―― Power of… ――
(俺が駆使するのは武力じゃない
俺の言葉が、声が持つ力だ)
(俺がしたのは"指示"ではない
自分達が下した結論で動いたんだろう?)