アクロとヘリオのお話です。
主にアクロの心情小説的な…
彼はいつも孤独なたちなので、こういうことを考えもするかな、と…←
でもヘリオは大事な友人なので、こういうラストになりました(笑)
コラボだったらまぁ、お相手もいますけどねアクロ…←
ともあれ追記からお話です!
光の射し込まない、静かな部屋。
そのベッドの上に眠っているのは、プラチナブロンドの少年。
「ん……」
昨夜……否、寧ろ日付が変わり、太陽が昇った頃にこの部屋に戻ってきた彼……
アクロは、まだ眠たそうにベッドのなかで丸くなっていた。
しかし、外はすでに活動開始の時間帯。
賑やかな騎士たちの声が聞こえてきて、必然目が覚める。
彼はぼうとしたように体を起こした。
そしてごしごしと目を擦る。
それからふぅっと息を吐き出して、彼はいった。
「うー……微妙に日に当たったからかなー……肌が痛いや」
帰りが若干遅くなって、日が昇ってしまった。
朝日とはいえ、夏の強い日差しは日の光に弱いアクロにとっては辛いもの。
慌てて魔術を使ったものの、少し影響を受けてしまったらしい。
「後でジェイド様のところにいってお薬もらってこようかな」
もう少ししたら、とアクロは呟く。
そしてベッドから降りた。
一人きりの、静かな部屋。
明かりも点らず、カーテンも開かない。
誰も訪ねてこない、静かな部屋……――
「もう、慣れたけどね」
小さく呟いた声は、誰もいない部屋に消える。
アクロは苦笑を漏らして、ぐっと伸びをした。
アルビノである彼。
日の光は勿論、室内灯もあまり強い光のものだと目が痛くなる。
そんな彼が普通の騎士たちと生活することはできず、
必然一人でこうして部屋にこもって過ごす形となる。
そのために、珍しく外に出ていると、姿を見た他の騎士たちに"幽霊だ"と言われる。
それにさえも、そろそろ慣れてきてしまった。
それでも……――
「一人で家にいた時よりは、ましかな」
アクロはそう呟いた。
そしてゆっくりと目を閉じる。
彼は、いたって普通の家の生まれだ。
ジェイドのように医者の家系に生まれたわけでも、
クオンのように特殊魔術使いの名家に生まれたわけでもない。
いたって普通の家。
そこで生まれたアクロは生まれつき色素が薄く、光に対する耐性が弱く。
家でも、一人日の光から遮断された部屋で過ごしていた。
一人っ子であったからだろう。
両親はそうして特殊な体質の彼を、大切に育ててくれた。
けれど……
友人も作れない。
外に出られるのは夜だけ。
そんな生活に、飽き飽きした。
それに何よりです……
親に守られるだけの自分に辟易した。
守られる存在でなく、守る存在になりたいと思った。
だから……
だから、こうして騎士になる決意をしたのだった。
無論、特殊な扱いをしてもらわなければならないことも多々あった。
昼間の訓練には出られない。
外での訓練は原則夜。
ただ、彼は魔術の扱いも剣術も、人並み以上だった。
だからこそ、どうにか試験に通ってこうして此処に残っている。
家を出ることを家族には反対された。
けれどそれを押しきって、こうして騎士になった。
守られ、安全で、快適な自分の家。
でもそこは少しだけ、窮屈だった。
騎士になれば仲間が出来るかもしれない。
友人が、出来るかもしれない。
……大切な存在を、見つけられるかもしれない。
そう、思った。
「まぁ……俺の体質はそれでも変わらないから、なんとも言えなかったわけだけど」
そう呟くと、アクロは溜め息をひとつ。
そして、一度部屋を出た。
医療棟にいって薬をもらうためだ。
そうして廊下を歩いていく間にも、やはり向けられる視線。
見覚えない少年が自分達と同じ制服を身に付けている。
しかもその少年の肌も柔らかな髪も色素がかなり薄いのだ。
傍から見ると、幽霊に見えるらしい。
もうアクロも周囲の反応にはリアクションを示さない。
だからなおさら、幽霊だと言う噂が立つに至ったのだろう。
そうしていつも通りに廊下を通り抜け、医療棟に行く。
ジェイドの部屋の前にたち、軽くドアをノックすると、
中から"どうぞ"という声が返ってきた。
それを聞いて、アクロはドアを開ける。
そして部屋に入って、目を丸くした。
「え、ヘリオ!?」
なかにはもうすでに一人の患者がいた。
それは、アクロにとって数少ない友人である、ヘリオで。
彼もアクロの顔を見ると、驚いた顔をした。
「アクロ!ビックリしたですよ……怪我したんですか?」
ヘリオが黄緑の瞳を大きく見開いてそう問いかける。
アクロは何度かまばたきをした後、いった。
「いや、ちょっと日に当たったみたいだから薬をもらおうと……
って言うか、逆にヘリオはどうしたんだい?
任務で怪我でもした?」
少し心配そうに問いかけるアクロに、ヘリオは笑う。
そして軽くジェイドに処置されている手をあげた。
「ちょびっと切っただけですよ。
心配することはありませんよ」
ありがとうございます、といってヘリオは笑う。
それを見てアクロもほっとしたような顔をした。
ジェイドはそんな二人を見てくすくすと微笑むと、
"友人二人で集結しちゃった訳ですね"と言う。
そしてアクロの方を見て、いった。
「貴方は薬ですね。
ヘリオの処置が終わったら渡しますから少し待ってくださいな」
ジェイドはそういうとヘリオの処置を再開する。
どうやら軽い切り傷らしく、素早く処置を終えていた。
ヘリオはアクロの方へ来ると、にこにこと笑って、言う。
「アクロ、久しぶりにお部屋行っても良いですか?
僕、この手になっちゃったので今日は一日お仕事おやすみですよ」
ひらひらと手を振りながらそういうヘリオを見て、アクロは嬉しそうに微笑む。
「ありがとう。構わないよ」
相変わらず薄暗い部屋で悪いけど、とアクロは言う。
それを聞いてヘリオはくすくすと笑っていた。
そんな友人を見つめ、アクロは赤い瞳を細めて笑ったのだった。
―― 変わった環境 ――
(なにも変わらないかと思っていた
薄暗い部屋も、ひとりぼっちなのも)
(でももしかしたらそれは違うのかもしれない
そう思うようになったんだ……)